わたしはラップをやることに決めた の商品レビュー
ヒップホップの批評は数あれど、フィメールラッパー、日本のというと思い浮かばない。ヘッズとは言えない程度の興味しか持たない私が、最近のトラックはこうだとか、誰と誰がくんでどうだとか、、無意識に男性視点に偏るこのシーンの中で、チャクチャクと育つBガールイズム。コシタンで狙う暗黙の行き...
ヒップホップの批評は数あれど、フィメールラッパー、日本のというと思い浮かばない。ヘッズとは言えない程度の興味しか持たない私が、最近のトラックはこうだとか、誰と誰がくんでどうだとか、、無意識に男性視点に偏るこのシーンの中で、チャクチャクと育つBガールイズム。コシタンで狙う暗黙の行き着く先はフィメールとかガールでなく、区別なくヒップホップを楽しむ世界とまで言い切るこれはフェミニズムの最終形態なのかもね、。
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ヘッズ歴はまだ10年くらいですが、ヒップホップ好きとしては、MCバトルが普及しすぎて、おもしろおかしく悪口を言い合う音楽と思われたり、実際にバトルの話ばかりされて、苦い顔になってしまう。 勝ちたいわけでもなく、誰かをディスりたいわけでもなく、うまいことを言いたいわけでもなく、女...
ヘッズ歴はまだ10年くらいですが、ヒップホップ好きとしては、MCバトルが普及しすぎて、おもしろおかしく悪口を言い合う音楽と思われたり、実際にバトルの話ばかりされて、苦い顔になってしまう。 勝ちたいわけでもなく、誰かをディスりたいわけでもなく、うまいことを言いたいわけでもなく、女を装いたいわけでもなく、自分らしい言葉を模索したいだけ、と思いながら読んだら、これまでの渋みがすっとなくなった。 落ち葉のように消えていく女性ラッパー達を美術館に飾りたい気持ちで書いてる、と言う著者の愛にあふれた考察。足りない部分なんてひとつもないくらい密な文章。構成も素晴らしく、コラムも面白い。 女性ラッパーとして区切る理由も明確。ラッパーではない、宇多田ヒカルなどの女性シンガーをラッパーに入れる大きな愛。ヒップホップライターの先輩方もお招きして、熱量もすごい。つやちゃん何者? 本作とはズレるけど、私の考え方として。 ラッパーといえばマッチョイズムとは切り離せなくて、それらの強さに惹かれる自分もいる。 だけど、男にしか分からない、男ならこうだ、みたいなリリックにうんざりしているのも事実。 逆もしかりで、女ならこうあるべき、なんてこともない。性別にこだわらず、フラットな視線でつづったヒップホップが聞きたい。 リブロやガグルやオムスビーツ、コサやエビスビーツ、男性ラッパーは挙げればキリがない。女性も、もっともっとたくさんのラッパーが現れてほしい。 読み終わる前にあまりの内容にクラクラして感想を書いたけど、少年少女時代 変わってないstreet dream掲げたいね。 わたしもラップをやることに決めた(ぴちさんならもっと行けるとワイザーに言われたい)
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Awichの新作「Queendom」があまりに素晴らしくて感動して泣いてたら、この本を友だちが教えてくれた。 「日本のラップ史において(実は)多く現れてきたフィメールラッパー、その音楽とそれらが生まれた時代/文化を回想しながら、彼女たちが確かに存在した事実を記」している、ありそ...
Awichの新作「Queendom」があまりに素晴らしくて感動して泣いてたら、この本を友だちが教えてくれた。 「日本のラップ史において(実は)多く現れてきたフィメールラッパー、その音楽とそれらが生まれた時代/文化を回想しながら、彼女たちが確かに存在した事実を記」している、ありそうでなかった日本のフィメールラッパー論。RUMI、COMA-TI、MARIA、NENE、ちゃんみな、DAOKO、Awichらの功績を明らかにして、その音楽の魅力を言及する。 どうしても男性中心主義的な価値観が横行するヒップホップ・シーンの中で、フィメールラッパーはマイノリティ。だけど、多彩な才能に溢れた自由でとんでもなくおもしろい音楽だ。 先に述べたラッパーや宇多田ヒカル、安室奈美恵だけでなく、キャンデーズや中島みゆき、野村沙知代(!)までも、フィメールラッパーとして捉える200タイトル超の愛がこもった作品レビューも収録。
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※このレビューにはネタバレを含みます
最近よくネットの記事で見る著者のフィメールラッパーに関する原論とのことで読んだ。とても刺激的な内容でオモシロかった。 冒頭で著者による宣言がなされており、フィメールラップを論じる上で起こりそうなハレーションや反論に対して意識的だった。本著はあくまで音楽を論じることに特化、昨今話題になっているヒップホップにおけるミソジニーなどは迂回、とにかく女性によるかっこいいヒップホップがここにあると強く主張している姿勢がかっこいい。またフィメールで区切る必要性について逡巡している点をしっかり言及していく姿勢もまたかっこいい。 日本のヒップホップに関する書籍は一次資料つまりはラッパー自身の著書もしくはインタビューがほとんどを占めている。その中で本著は一次資料にあたりながら様々な女性ラッパーに関する著者の見解を示す批評になっている。とにかく見立てのオモシロさが際立っていて洋服やコスメと絡めて語っていくのは著者ならではの切り口で興味深かった。合間に挟まれるコラムが個人的にはかなり勉強になって、特に「新世代ラップミュージックから香る死の気配」は「ぴえん」という病で読んだ内容と合わさってアップカミングなスタイルに関する背景の理解が深まった。 サウンド面ではなく基本リリック重視での批評も日本のヒップホップでは今まであまり進められていない作業だと思う。(これはフィメールに限った話ではない)またラップという歌唱法、ヒップホップという文化はUS由来なのでどうしても語り口としてUSとの比較が多い中で、別のカルチャーを数珠つなぎしていくスタイルがオモシロかったし知らないことも多くあった。最近のファクト至上主義の中、いわゆる印象由来の批評、アナロジーからの読み解きなどはほとんどないので、こういう書き手の人が増えると批評が圧倒的に不足している日本のヒップホップカルチャーも豊かになるはず。 COMA-CHIに当時に関するインタビューを掲載し「ミチバタ」「RED NAKED」をここまでフィーチャーする書籍はあとにも先にも出ないと思うと、やはり「フィメールラッパー」というくくりで歴史にくさびを打つという意味で日本のヒップホップの歴史上重要な作業だと思う。一方でAwich、NENE、ちゃんみなといった著者がキーパーソンと考えているフィメールラッパーについて、各アルバムのレビューが他と比べてボリューミーにはなっているものの肝心のインタビューがないのが少し残念…(もしかするとDr.ハインリッヒのThe Wに対するマインドセットのようなもので「フィメール」というくくりに抵抗があるのかも知れないが)web媒体で良いので彼女たちへの著者によるインタビューは読んでみたい。 巻末のディスクレビューは「女性がラップしている」という観点で歴史を総浚いしていて圧巻。特に2010年以降くらいのアルバムで「こんなんあるんすか!」というものが多く、ストリーミング時代の今、ディスクレビューは最高の水先案内人なのでゆっくり聴いていきたいと思う。 本著のアフタートークとして著者と帯コメントも寄せている渡辺志保氏との対談がWebにアップロードされていて、それがかなりスリリングだったので必読。特に氏がここまで築き上げてきたヒップホップに対する思いを清濁合わせて率直に話されている点に驚いた。カルチャーに対するコミットの手法の違いはあれど共闘できる。分断は何も生まないけどユニティは前進できることを痛感した。色んな書き手が色んな切り口で日本のヒップホップ、ラップについて論じることで加速度的に広まりメインカルチャーになってほしい。
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