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スモモの木の啓示 の商品レビュー

3.9

10件のお客様レビュー

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2024/03/05

マジックリアリズムということ。 あまり難しく考えてはいけないのかも……。 まじない師が登場し、幽鬼や死者が生者の回りにたむろす。 旅人が要所に出てきては、幻想と現実、生者と死者のさかい目を諭す。 イラン・イスラーム革命から現代と思われる時代まで、シャー時代の文化を残す一家を...

マジックリアリズムということ。 あまり難しく考えてはいけないのかも……。 まじない師が登場し、幽鬼や死者が生者の回りにたむろす。 旅人が要所に出てきては、幻想と現実、生者と死者のさかい目を諭す。 イラン・イスラーム革命から現代と思われる時代まで、シャー時代の文化を残す一家を襲う出来事が、ゾロアスター教の痕跡の残るラーザーンの村と森、古くから居る人々の不思議な生活と共に、虚ろい彷徨い読者を幻惑する。 イランでは禁書で作者はオーストラリアへ政治難民として移住した。この本の英訳者は「身の安全」の為の為が明かされていない。(訳者あとがき) 歴史的背景を知った上で、もう一度読むべきかも……。

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2024/01/17

読み始める前から、「魔術的リアリズム」ということで、ちょっと苦手な感じで読み終えられるのかと危惧した。 きちんと読めたとは全く思わないが、物語に身を委ねたという感じがする。 その物語は、このような描かれ方をしなければ過酷すぎて、逆に読み続けられない、そういう現実の話だったと思う。

Posted byブクログ

2023/08/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者はイラン人ジャーナリスト、オーストラリアに政治的亡命を果たした人である。年の頃はイスラム革命時点で7歳だから、主人公の少女バハールと同じだろう。 イスラム革命の暴力、イラン・イラク戦争下の理不尽、政治犯として捕まった兄の不幸……やはりこういう状況が題材になるのだなと思って読んでいた。 この作品の特色はマジックリアリズムの手法であるとされるが、印象的なのはイランの人々のいやらしさをこれでもかと書いているところだ。 無知無教養な人々の狼藉はブルジョワは敵とされる一家には耐え難いものである。人々は政府の過激な教えに感化されやすく、扇動されやすく、集団となると容赦ない。 そして、過去の話にとどまらず、物語は現代へと続き、動画やSNSと幽霊が同居する世界となる。ここでも人々の無法ぶりと体制の理不尽な暴力が思う様書かれる。 終盤、様々な苦難を味わい尽くした父親はただ民主主義を望むと述べて、長期服役の身となる。ここでネクタイを身に着けたこの人はやはりブルジョワでシャーの体制復活を望む人ということになる。 イランの人々は本当のところ、どう思っているのだろうか。シャーの時代は良かったという年寄り、体験敵には知らないけど憧れる若者も多いだろう。民主主義を望んで運動する人もいる。 しかし、イスラム主義の体制で良いのだけど、もっと政治が良くなって欲しいという考えの人々ももちろん多くいると思う。 私達が読めるのは、イランを去った人の書いたものに限られる。イランに暮らす人々の本当のところはもっと多様であると思う。 また、一党独裁体制が隆盛を極めつつある世界を見れば、民主主義になればすべて解決とも言えなくなっている。 イランに暮らす心優しい友人たちに思いを馳せつつ、複雑な思いがした。

Posted byブクログ

2023/07/09

「スモモの木の啓示」https://www.hakusuisha.co.jp/book/b597070.html めくるめくマジックリアリズム。ホメイニ下の暴政と残虐な殺戮を背景に、美しくて瑞々しいエピソードや文学的なディティールが愛とユーモアを纏って展開される。凄惨な時代の記録...

「スモモの木の啓示」https://www.hakusuisha.co.jp/book/b597070.html めくるめくマジックリアリズム。ホメイニ下の暴政と残虐な殺戮を背景に、美しくて瑞々しいエピソードや文学的なディティールが愛とユーモアを纏って展開される。凄惨な時代の記録はおとぎ話として伝えるしか手段がない。著者の命が今後も護られますように

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2023/04/18

イラン革命で弾圧を受けた、元インテリ・ブルジョワ階級のある一家族の物語が、当地の言い伝えやおとぎ話と絡まりあって幻想的に描かれる。後半、その幻想譚が悲劇のメタファーだったことが分かると、幻想的に描かれていた分余計に痛ましく、そのまま受け止めるにはあまりに重い現実に打ちのめされる。...

イラン革命で弾圧を受けた、元インテリ・ブルジョワ階級のある一家族の物語が、当地の言い伝えやおとぎ話と絡まりあって幻想的に描かれる。後半、その幻想譚が悲劇のメタファーだったことが分かると、幻想的に描かれていた分余計に痛ましく、そのまま受け止めるにはあまりに重い現実に打ちのめされる。 狂信的で暴力的で、自分たちとは異なる考えを排除しようとする動き・抑圧は、今や日本人にとっても遠い対岸の火事とは考えられないような気がして、心に刺さった。

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2023/03/21

1979年のイラン・イスラム革命により天地がさかさまになった如き価値転換に見舞われたテヘランを舞台にして、革命政府に睨まれる運命に見舞われた一家の悲劇を描く。 悲劇ではありつつも、13歳の語り部は無残に殺されながらも自身が殺される様子を実況中継的に伝え、以後、霊体のとぼけた味の...

1979年のイラン・イスラム革命により天地がさかさまになった如き価値転換に見舞われたテヘランを舞台にして、革命政府に睨まれる運命に見舞われた一家の悲劇を描く。 悲劇ではありつつも、13歳の語り部は無残に殺されながらも自身が殺される様子を実況中継的に伝え、以後、霊体のとぼけた味の”語り部”として物語を彩る。 両親も兄弟も、それぞれにイラン現代史の暗部にからめとられながら追い込まれていく。この小説が一筋縄ではいかないのは、いわゆるマジックリアリズム”増し増し”の手法。イラン革命防衛隊の圧政が、地霊や死人の登場によって混ぜ返され、悲劇が悲劇として伝わらない。どこかしら無意味化され、苦笑いさせられる「異化作用」が見事だ。 しかし物語の終盤に、主人公の父によって、そこだけマジックリアリズムの手法をやめた記述が為されるのだが、ここで描かれる家族の悲劇は冷酷きわまりない運命。それまで散々マジカルに異化されていたストーリーと、急に現実に引き戻す無残な現代史との対照が、言葉を失わさせるには十分。 次作が発表されたらぜひ日本語訳も出版してほしい。

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2023/01/04

文学ラジオ空飛び猫たち第97回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/uMD7aLV3hwb 表紙のポップさとは違う、なかなか痛烈な小説だが、読了したときにたどり着ける境地はあると思う。 本国イランでは発表ができなかった小説を日本で自由に...

文学ラジオ空飛び猫たち第97回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/uMD7aLV3hwb 表紙のポップさとは違う、なかなか痛烈な小説だが、読了したときにたどり着ける境地はあると思う。 本国イランでは発表ができなかった小説を日本で自由に読めることを噛み締めたい。 表現の自由とは簡単に言ってしまえるけど、実際にそれが抑圧されていて獲得した人の書くものというのはなんと切実で、力強いのかと思った。

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2022/08/02

西加奈子さんの生活していた場所ということで勝手に涙もろいがあったかいみたいなイメージのテヘラン出身の作者。ところがどっこいしょ。かなーりぶっとんだキレキレな作品。基本的に家族五人にそれぞれ起こった出来事の羅列ではある。時に政治的でリアル、時にアニマニズムで幻想的。ポストモダンしか...

西加奈子さんの生活していた場所ということで勝手に涙もろいがあったかいみたいなイメージのテヘラン出身の作者。ところがどっこいしょ。かなーりぶっとんだキレキレな作品。基本的に家族五人にそれぞれ起こった出来事の羅列ではある。時に政治的でリアル、時にアニマニズムで幻想的。ポストモダンしかりマジックリアリズムしかり、もう理解しなくともそういうもんとハナから諦めているが、この作品は結構ハードル低いというよりも、バリアフリーで安心してどんびきしないで楽しめた

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2022/06/02

途中でやめてしまった。 翻訳の質はとても高く、また決死の覚悟で書かれた内容であることはよく理解した。ただ、あまりに幻想的過ぎるストーリと、ときおり(しょっちゅう?)繰り出される下ネタの品位が私には合わず、半分ぐらいで読むのを止めてしまった。

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2022/03/06

イラン・イスラム革命で、テヘランから逃げ延びた一家がたどり着いたのは中東の辺境ラザーン。 そこはまるで「100年の孤独」のマコンドか。 「精霊たちの家」ならぬ「幽鬼たちの家」か。 ゾロアスターの旧跡に、黒い雪が降り続き、幽霊やジンがさまよう世界は、アラビアン・マジックリアリズム...

イラン・イスラム革命で、テヘランから逃げ延びた一家がたどり着いたのは中東の辺境ラザーン。 そこはまるで「100年の孤独」のマコンドか。 「精霊たちの家」ならぬ「幽鬼たちの家」か。 ゾロアスターの旧跡に、黒い雪が降り続き、幽霊やジンがさまよう世界は、アラビアン・マジックリアリズム。 しかしそんな僻地にも革命と時代の波は押し寄せる。 圧政下の中、それでも自由に羽ばたける人間の精神・想像力。 伸び縮みするような物語の果て、15章で父親が書き記した世界に心が締め付けられるとともに、物語の力は私たちを奮い立たせる。

Posted byブクログ