シリアからきたバレリーナ の商品レビュー
新型コロナウィルスのニュースが日々の中心である日本は。やはり平和な国なのだろう。 世界の至る所では、紛争が続いており、コロナのワクチンどころか、もっと恐ろしい感染症と隣り合わせで生活している人々がいる。 アラブの春の余波がシリアにも及び、アサド政権と反政府勢力との武力衝突が始ま...
新型コロナウィルスのニュースが日々の中心である日本は。やはり平和な国なのだろう。 世界の至る所では、紛争が続いており、コロナのワクチンどころか、もっと恐ろしい感染症と隣り合わせで生活している人々がいる。 アラブの春の余波がシリアにも及び、アサド政権と反政府勢力との武力衝突が始まるまで、アーヤは、アレッポで家族4人と幸せな日々を送っていた。 他の国のように、政権が倒れて、すぐに人々にとっての日常が戻ると思っていたが、衝突は内戦になり、多くの人が命を落とす惨状となっていく。 アーヤの父は医者で、戦火で怪我を負った人々の手当に奔走していたが、いよいよ国を出て、かつて暮らしたことのあるイギリスを目指すことを決断をする。 物語は11歳のシリア人の少女アーヤが、シリアからイギリスにたどり着くまでの物語と、イギリスのマンチェスターで難民申請をするために過ごす日々が並行して描かれている。 難民という括りではなく、1人の普通の生活をしていた少女として、自分を見てほしいという人としての尊厳。 イギリスに来るまでの過酷な道のりのトラウマ。 イギリスで出会った信頼できる大人と友人。 父の教えと心の支えであるバレエ。 いくつものキーワードが重なり合い、読む者の心に迫る。 今も内戦が続くシリア。 タリバン政権のアフガニスタン、パレスチナ問題。 この世界には、ごく一部の権力者によって普通に暮らしていた人々の人生が失われた物語が無数にあることを忘れてはならない。 またその戦争の根本には、かつての植民地支配による問題があることも知るべきだろう。 できるならば、旧宗主国の作家ではなく、当事者である国の作家が描いた物語が世に出てほしい。 2022.2.16
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