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竜血の山 の商品レビュー

4.1

21件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

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2022/09/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

久しぶりに寝る間を惜しんで読み切った程、引き込まれた。ただ、もう読み返すことはない。 話の内容はぐいぐい引き込まれる凄ぶる良質な作品ではあるのだけれど、内容が暗くて再読したくない。 主人公の性格が嫌だ。なんだよ妾って。絶対許すまじだわ。 誰も幸せになっていないし…困ったもんだ…

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2022/06/11

西村健の地の底の山をなんとなく思い出した。他にも同じ感想を書いていらした方がいるので、印象としては間違っていないようだ。 水銀に耐性のある、特異な体質をもつ集落‐。始まりはまるで、アマゾンの奥地で新しい民族を発見したかのような書きぶり。 もちろん町の人間と言語は通じるが、水銀を飲...

西村健の地の底の山をなんとなく思い出した。他にも同じ感想を書いていらした方がいるので、印象としては間違っていないようだ。 水銀に耐性のある、特異な体質をもつ集落‐。始まりはまるで、アマゾンの奥地で新しい民族を発見したかのような書きぶり。 もちろん町の人間と言語は通じるが、水銀を飲むことすらできる《水飲み》は、果たして人間といえるのか…本人たちですら、時折揺れる中、その象徴として名前(アシヤ‐芦弥)がカタカナと漢字で入り乱れる。 (水飲み以外の人物の表記は一貫して漢字。) 最後は完全にカタカナのアシヤになり−

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2022/06/09

昭和13年、北海道東部の山奥で、自然水銀の湧く巨大鉱山が発見された。 那須野寿一は、鉱山技師として調査に入った山奥で、ひとりの少年・榊アシヤと出会う。 その集落には、〈水飲み〉と呼ばれる水銀への耐性という特殊な体質を持つ者たちが住んでいた。 フレシラ鉱山に住む〈水飲み〉の一族と...

昭和13年、北海道東部の山奥で、自然水銀の湧く巨大鉱山が発見された。 那須野寿一は、鉱山技師として調査に入った山奥で、ひとりの少年・榊アシヤと出会う。 その集落には、〈水飲み〉と呼ばれる水銀への耐性という特殊な体質を持つ者たちが住んでいた。 フレシラ鉱山に住む〈水飲み〉の一族と鉱業所で働く者たちの物語だが、かなり壮大でありとても重みのある内容だった。 水銀と共に生きる一族の繋がりの深さだけではなく、失踪や殺人、水俣の公害問題、動物実験、その中で戦争の混乱もあり、これが時代を感じるということなんだと思った。 読み応えのある一冊だった。

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2022/05/24

ガツンと重い作品でした。 面白かったです。 時は1959年から。 北海道のフレシラ鉱山で働く鉱夫たちの中に<水飲み>と呼ばれる、水銀に耐性を持つ血筋の者たちがいました。 その者たちは<水飲み>故に、水銀中毒を起こす心配がなく、フレシア鉱山で優遇されて働いていました。 その中の...

ガツンと重い作品でした。 面白かったです。 時は1959年から。 北海道のフレシラ鉱山で働く鉱夫たちの中に<水飲み>と呼ばれる、水銀に耐性を持つ血筋の者たちがいました。 その者たちは<水飲み>故に、水銀中毒を起こす心配がなく、フレシア鉱山で優遇されて働いていました。 その中の一人榊芦弥(さかきあしや)が主人公です。 アシヤは<水飲み>故に妬まれ、二番堀の底に落とされますが6日後に水銀を飲みながら生還し、不死身の鉱夫と呼ばれるようになります。 フレシア鉱山の内部抗争や家族間の諍い、人知れず殺人事件も起こります。 戦争がなくなり、平和になり、水銀の需要もなくなり、熊本で水俣病が発症します。 そんな斜陽産業に携わる男たちとそれを取り巻く女たち、家族、一族の物語です。 <水飲み>は竜血の山に愛された一族。 <水飲み>の不死身の鉱夫アシヤの生涯を描いた物語。

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2022/05/06

北海道の石北峠にあったイトムカ鉱山をモチーフにした物語。 水呑みと呼ばれる現地民を主人公にしたフィクションだけど、水銀鉱山の歴史を知ることが出来て、とても読み応えがあった。

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2022/05/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

岩井圭也の小説を初体験。なるほど評判のとおり読ませる小説を書く作家さんだというのが第一の感想。 体質的に水銀中毒にならない耐性をもつ「水のみ」という人々を主人公格においているので、もっと土着ファンタジーかと思ったが、意外にも公害問題と産業基盤の変遷に踊らされる鉱山労働者の労働問題に主眼を置いた大河小説だった。 プロレタリアート文学というのは、思想臭がまとわりつきやすく、主義主張に賛同するかどうかはともかくも、俺のように娯楽としての読書をしている立場には、どうも説教臭くてなじめないことが多い。この作品にも一部そういう風味があって多少辟易とした。 そういう意味では、ファンタジー要素は臭みを和らげる効果もあって良かったのかも。逆に純然たるプロレタリアート文学を求めて読む人には、ブラック愛好家におけるコーヒーフレッシュや砂糖のような余計な味付けなのかもな。

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2022/03/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アイデアだけで成り立つ小説かなという気はするが、何か西村健の炭鉱物のような荒々しさがある。  それにしても、この作家さんの抽斗の独創的なところには感心する。

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2022/03/15

北海道の巨大な水銀鉱床。水銀に耐性をもつ「水のみ」と呼ばれる山中集落の人々。戦争、特需、水俣病、差別。昭和の動乱のなか、炭鉱の町で水銀と共に生きる人々の壮大な物語。 水のみ、というファンタジー要素がありながらも、史実になぞらえた設定とリアルな描写でのめり込まずにはいられなかった。...

北海道の巨大な水銀鉱床。水銀に耐性をもつ「水のみ」と呼ばれる山中集落の人々。戦争、特需、水俣病、差別。昭和の動乱のなか、炭鉱の町で水銀と共に生きる人々の壮大な物語。 水のみ、というファンタジー要素がありながらも、史実になぞらえた設定とリアルな描写でのめり込まずにはいられなかった。アシヤが人として出来上がっていないところが逆に生々しさを与え、感情をむき出しにする人々の心の動乱もよく見てとれた。 簡単に死人が(殺人含め)出すぎな感じも否めないけれど、あるいはそういった時代だったのかもしれない。 水銀というものの色や質感や冷たさが挿絵のように作品を景色づけていた。 終わり方はは少し物足りない気もしたけれど、それすら時代の成せるわざかと思えた。 読み応えばつぐん。

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2022/02/08

太平洋戦争、朝鮮戦争、水俣病……昭和の動乱に呑まれた北海道東部の巨大水銀鉱山を舞台に、二人の青年の数奇で壮絶な生き様を描く!

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2022/01/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

水銀と聞くと、子どもの頃使っていた体温計を思い出す。うっかり落とすとガラスが割れて中の水銀がこぼれてしまう。普段見慣れている「水分」とは全く違うその銀色の塊。床の上で丸くなる銀色の塊がころころと転がるさまはとても面白く思わず手を伸ばして親に「触っちゃダメ!」と叱られた。 それは「毒だから」と。 地図にも載っていない集落、地元の人たちとも交わらず山の中で暮らす人々。彼らの特異な体質によって山は「東洋一の水銀鉱山」として栄える。 戦争特需。ひっそりと自分たちの山と「やまかね」を守って生きてきた〈水飲み〉の人生を大きく変えていったそのチカラ。遅かれ早かれ彼らの暮らしは変わっていったのだろう。いつまでも世間と隔絶して生きていけるわけもなく。それでも「その時」が「今」だったのかどうか。 敗戦と水俣病。逆風の中で新しい道を求めて多くの〈水飲み〉たちは山をおりていく。そこで生き続けようとするアシヤたち、そして水銀に魅せられ外からやってきた源一。だれの人生も何が正しかったのか、わからない。 彼らが水銀に狂わされたのか、あるいは、彼らが水銀を狂わせたのか。 どんよりとした血のにおいが文字の間から漂う。いや、これは血ではなく地のにおいか。あるいはみずかねのにおいか。 読みながら少しずつ背中が丸まっていく。翻弄され続ける彼らの人生に同情さえする。けれど、このラスト。 なんだろうこの解放感は。身体の内側にたまっていた重く鈍いものが一気に解き放たれるラスト。 人間の内側にあるくらい闇を見つめ続ける岩井圭也の、最後に見せるカタルシス。 言葉を無くした。読み終わって茫然とした。この一瞬のための重みに感謝した。

Posted byブクログ