「やりがい搾取」の農業論 の商品レビュー
戦後日本と業界の歴史、それらを把握した上でいかに自社商品に価値と価格をつけブランド化させていくかは他の業界にも通じるかと思いました。
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ニュースで時々耳にする「豊作で摂れすぎたので キャベツを廃棄する」という記事。 この時、豊作により価格が下がっているので、そ れを調整する意味でも廃棄しているとか。 一方で当然ですが不作の時は価格は上がります。 しかしいずれも場合でも品質は一定度の水準が求 められていること...
ニュースで時々耳にする「豊作で摂れすぎたので キャベツを廃棄する」という記事。 この時、豊作により価格が下がっているので、そ れを調整する意味でも廃棄しているとか。 一方で当然ですが不作の時は価格は上がります。 しかしいずれも場合でも品質は一定度の水準が求 められていることは理解できると思います。 「安いなら多少は粗雑なものでもいい」とはなら ないのです。 つまり農業は安かろう悪かろうが許されないので す。 このような身近な事例から、なぜ「やりがい搾取」 であるのかを説明します。 特に農業組合(農協)の歴史と現在抱える問題点 の解説は非常にわかりやすいです。 社会学としても勉強になる一冊です。
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p168に書かれている 「安価な価格設定の農産物マーケットに加え、中間的な価格設定、高額な価格設定の農産物マーケットを構築していくことが重要である.農産物の価格帯をピラミッド構造化することです.」が、「やりがい搾取」の体制を打破するカギだと感じた.農家に育って表も裏も知り尽くした...
p168に書かれている 「安価な価格設定の農産物マーケットに加え、中間的な価格設定、高額な価格設定の農産物マーケットを構築していくことが重要である.農産物の価格帯をピラミッド構造化することです.」が、「やりがい搾取」の体制を打破するカギだと感じた.農家に育って表も裏も知り尽くした人だから書ける論考だと思う.博士(社会学)の学位を持っているだけあって、論理的な論文になっており、参考文献も充実している.
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『「やりがい搾取」の農業論』 野口 憲一(著) 著者はレンコンを1本50000円として、農産物ラグジュアリーブランドとして販売する。 それは「価値があるから高いのでなくて、高いから価値がある」その行間にある「農業の価値」というものを問いかけている。 農家の子供として生まれ、両親か...
『「やりがい搾取」の農業論』 野口 憲一(著) 著者はレンコンを1本50000円として、農産物ラグジュアリーブランドとして販売する。 それは「価値があるから高いのでなくて、高いから価値がある」その行間にある「農業の価値」というものを問いかけている。 農家の子供として生まれ、両親から「農業は惨めな仕事だ」「農業だけは継ぐな」「大学に行け」と言われた。それは、農家の貧しさに原因があると思っていたが、農業という職業に社会的な価値が認められていないと気づいた。 そこで、農業のイメージ戦略として、表面的な見た目を改善する必要があるというおしゃれな農作業着のイメージ方法論。ポルシェを乗り回す農家。農作業のつらさの軽減するトラクターやコンバインの導入。スマート農業や植物工場へ展開する方法論。効率性や経済合理性にあった農業。 この方法が、農業の本質的価値向上になるのか?むしろ、農業の価値を毀損するのではないかということを、本書では伝えようとしている。ある意味では、消臭剤を撒くことで本質を覆い隠すようなことが多いのではないかということだ。農水省の提唱している「スマート農業」という言葉は、かっこいいみたいで、それ以外の農業は、「野暮ったくて馬鹿で愚鈍でカッコ悪い」と思われる。 日本の農家は、高品質な農作物を作ってきたにも関わらず、ほとんど社会からの価値を認められていない。プロの農家として、自分の仕事に対して自信を持ち、自己実現を果たし、仕事それ自体が社会から尊敬され、かつ高い収入を得るためにはどうするのか。そして、持続的に身近な自然環境を守り、自然の大切さを伝えるという社会的な使命を帯びている。 というような、レンコン1本50000円の話題を作って、その土俵にひきづりこむ意味がある。農業の価値(価値とはお金だけでなく、生産物である農産物の価値、農業という職業や産業に宿る尊厳・威信、そして自分自身の自信や職業イメージ、農業の営みの背景にある分化的な価値)という大きな農業の連綿たる続いてきた価値の物語をかたることで、農業としての矜持を持とうとする。 ある意味では農水省が「農業の価値」に気がつくべきだと言っているのだ。 この主張は、私も同意する。ただ、著者はかなり古典的なバイアスがかかっていて、JAは、共産主義的思考だという。日本の有機農業もある意味では政治的な意味を持って始まったことは、確かだ。しかし、有機農業がそれだけで論じるべきではなく、なぜ有機農業の野菜は美味しくないか?という洞察は、農業者としての知見も弱い。著者は、農業の基礎知識が希薄でもある。 ミカンは「剪定」が重要である。シャインマスカットは、中国での生産量が多いという指摘も面白い。農研機構によって種苗登録されたものであり、農水省の種苗法管理の無策が問題だ。 著者は、労働と仕事は違い、日本人は仕事を重んじる。仕事はオペラだという佐々木雅幸の「創造都市論」とは、違った意味で使っている。仕事は目的性を持っている。農家が仕事をすることで、「やりがい搾取」されているという。久しぶりにみる「搾取」であるが、搾取という言葉を間違えて使っているのではないだろうか?搾取する側が不明瞭だ。 そして、ココシャネル物語と貧しいレンコン農家とメタファーさせて、レンコンを1本5000円から売り始め、2021年から1本50000円で売るのだ。レンコンは辛子レンコンという名品があり、レンコンの漢方的な機能性「調中開胃、益血補髄、安神健脳」とされる。レンコンのピラミッド構造を作ることが、農家の「やりがい搾取」から、解放されるのだろうか? 果たしてレンコン1本50000円で、農業の価値を認めさせることが出来るのか? ドンキホーテのようでもあり、農業のトリックスターとならないことを願う。 それにしても、農業の価値を認めさせるという主張には賛成する。
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