童夢 の商品レビュー
小説以外で初のSF大賞受賞
最近、岡田斗司夫氏が「聲の形」を芥川賞に推していたが、その40年ほど前にSF大賞を史上初漫画が受賞しました。
圧力で壁が円形に凹む表現を初めて見たのはこの作品でした。
個人的に「アキラ」より衝撃的でしたね。
水饅頭こわい
チョウさんがエッちゃんに再会した時の絶望感とその表情が脳裏にこべりついて離れない。根本は能力バトル物だが、超能力を手から光線が出るような派手さで演出するのではなく、鉄棒が捻じ曲がったり、窓ガラスが割れたりといった地味さで演出することで殺伐とした雰囲気を作り出していた。また、マンモ...
チョウさんがエッちゃんに再会した時の絶望感とその表情が脳裏にこべりついて離れない。根本は能力バトル物だが、超能力を手から光線が出るような派手さで演出するのではなく、鉄棒が捻じ曲がったり、窓ガラスが割れたりといった地味さで演出することで殺伐とした雰囲気を作り出していた。また、マンモス団地を舞台にしたことで、圧迫感があった。終始、息苦しそうな空気感が漂っていた。エッちゃんがチョウさんを壁に追い詰めて、能力を使い、壁がチョウさんと一緒にグッと円状に押し込まれたシーンは、一度見たら忘れない伝説的な演出だ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
サイコアクションとしての本作を無二たらしめているのは、団地という閉鎖空間における無垢な人間のホラー味をそのまま描き出す事に成功している点だろう。 この点について、村上龍の公園にてという短編を思い出した。 主婦が集まる昼時の公園を舞台に、夫の社会的地位や容姿を下地に作り出されるママ友同士のヒエラルキーを描いた小説である。 ある主婦が不倫交際クラブに登録していると噂が立ち、主人公がそのWEBサイトを覗くシーンでは、登録された女性の商品情報が淡々と羅列される。 人間模様を虚飾を削ぎ落として描くとそれだけでホラーになるというのは、童夢にも通ずる。 本作では子どもの持つ無垢さを老人に適用することで、虚飾無しにその気色悪さを浮きだたせている。 少年犯罪が社会問題となった時代に描かれたのか訝って発行年数を見れば、83年の作ということで、不良ではない"普通の子"による少年犯罪が問題となった90年代後半から遡ること10年以上前のことである。村上龍の公園にても2005年刊行であるので、リアリズムを通して人間性のホラーに接近した本作の先見性はすげえって事になる。
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様々なコンテンツで素晴らしいSF作品が溢れる、現代に読んでもまったく色褪せていない衝撃。ジャンルはサイキックスリラーSFなのだが、画力と構図が圧巻。漫画でこれほどの迫力を出せる、大友克洋の画力の高さと設定力にビビる。日本の団地を舞台にすることで、不穏さに妙な現実味が出て、より鳥肌...
様々なコンテンツで素晴らしいSF作品が溢れる、現代に読んでもまったく色褪せていない衝撃。ジャンルはサイキックスリラーSFなのだが、画力と構図が圧巻。漫画でこれほどの迫力を出せる、大友克洋の画力の高さと設定力にビビる。日本の団地を舞台にすることで、不穏さに妙な現実味が出て、より鳥肌がたってしまう。一本の映画を観ているような、臨場感と重厚感に興奮した。 しがない1人のファンとしても、これを経てAKIRAが創られたのかと、想像するとゾクゾクする。
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自分が持っているのは1983年の第1刷。久々の再読。大友克洋というとAKIRAの方が知名度は高いけれど、漫画界?に与えた影響と衝撃は、童夢も同じくらい大きかったと思う。Wikipediaによると「1980年から1981年にかけて4回に分けて雑誌連載された後、1983年に単行本とし...
自分が持っているのは1983年の第1刷。久々の再読。大友克洋というとAKIRAの方が知名度は高いけれど、漫画界?に与えた影響と衝撃は、童夢も同じくらい大きかったと思う。Wikipediaによると「1980年から1981年にかけて4回に分けて雑誌連載された後、1983年に単行本として発行された。」とある。AKIRAは1982年からヤングマガジンで連載が開始されている。時代背景や舞台には違いがあるが、サイキックバトルもの、という地続きの作品でもある。記憶ではAKIRAはもっと後の作品という印象があったが、当てにならないものだ。この作品は、漫画、アニメ好きだったら、死ぬまでに必ず読むべき。しかしチョウさんって何なんだろう?いまの時代だったらチョウさんのスピンオフ作品とか出そう。
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超能力ものは忍者マンガの系譜であるとは諸賢の宣ふ所だが、まさか本作のえっちゃんもさうだったとは(厳密にはアレなのだが) 身も蓋も衒ひもない老刑事と、彼の人生が揶揄されるのと、1980年代のよい子が憧れかつ幻滅するポケベルが、部品組み立てたら出来さうレヴェルで書かれるのは凄い 単行...
超能力ものは忍者マンガの系譜であるとは諸賢の宣ふ所だが、まさか本作のえっちゃんもさうだったとは(厳密にはアレなのだが) 身も蓋も衒ひもない老刑事と、彼の人生が揶揄されるのと、1980年代のよい子が憧れかつ幻滅するポケベルが、部品組み立てたら出来さうレヴェルで書かれるのは凄い 単行本で読んでるので、「雑誌掲載」の時はこれの「半分」てふ情報しかなかったが、これは具体的になんページからかが、うわぁ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
映画『イノセンツ』を観たので、久々に読んだ。 テレパシーとかサイコキネシスなどのバタ臭い超能力合戦を、土着的な団地内で済ませているのが秀逸。 けっこうグロいけど、老人が幼児退行しているため、「子供の喧嘩」に見える。 エッちゃん強すぎ。
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まず、絵がうますぎる。 背景や人物の書き込みがわけわからないくらい細かい。アクションも迫力がある。見開きやベタを利用した画面やストーリー進行のメリハリが完璧。それゆえにサイコホラーとしての恐怖も煽られるし、じっとりと緊迫した雰囲気が嫌というほど伝わる。 ストーリーも今読んで全く...
まず、絵がうますぎる。 背景や人物の書き込みがわけわからないくらい細かい。アクションも迫力がある。見開きやベタを利用した画面やストーリー進行のメリハリが完璧。それゆえにサイコホラーとしての恐怖も煽られるし、じっとりと緊迫した雰囲気が嫌というほど伝わる。 ストーリーも今読んで全く色褪せない。絵やコマで語られるため、ページをめくったときの驚き、言葉にできない焦りや緊張が余計に響いてくる。絵やコマ割りの説得力ゆえに、そのスタイルでもページを捲る手が止まらないのがすごい。 最初から最後まで子どもだけが元気に遊んでいるのが、この作品で1番恐ろしい部分なのかもしれない。大人とは子どもを守れるものなのか、子どもとは無力な生き物なのか。肯定する人にはとても恐ろしい話だと思う。
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芸術だなぁ イノセンツを見てから、童夢がモチーフになってることを知って読んだ。 これアニメ映画化してほしい。 チョウさんの表情が非常に良いね、女の子にに心底ビビる感じ、そしてその顔が見開きで出たあのシーンをマスターワークスの表紙にする。良いね。
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30年ぶりくらいの再読。 2歳下の弟が買ってきた単行本以来(パソコンがない家が多い時代、バイトして高校ですでにPCをゲット、ゲームをプログラムするなどしていた弟は『気分はもう戦争』『ハイウェイスター』なんかを買っていた。無口なオタク野郎であった) やっぱりスゴイ。 マンモス団地...
30年ぶりくらいの再読。 2歳下の弟が買ってきた単行本以来(パソコンがない家が多い時代、バイトして高校ですでにPCをゲット、ゲームをプログラムするなどしていた弟は『気分はもう戦争』『ハイウェイスター』なんかを買っていた。無口なオタク野郎であった) やっぱりスゴイ。 マンモス団地、部屋、人物の細部!書き込み書き込み申す~ 記憶にあるおおまかなストーリーやシーンとほぼ同じ、ということは初見でのインパクトが自分で思っているよりも相当大きかったのだろう。 ストーリー、作画、な~んにもいうことなし。 ……あ、もっと大きな判型で刊行してほしい(A3とか)。
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