書痴まんが(文庫版) の商品レビュー
ちくま文庫のオリジナルアンソロジー。 編者の山本英生はちくま文庫でこの手のアンソロジーをいろいろ手がけている編集者。ちくま文庫のオリジナルアンソロジーで本がテーマになるのは「ビブリオ漫画文庫」に続いて2冊目。 収録作は70年代から2000年代まで幅広い。タイトルは書痴となっている...
ちくま文庫のオリジナルアンソロジー。 編者の山本英生はちくま文庫でこの手のアンソロジーをいろいろ手がけている編集者。ちくま文庫のオリジナルアンソロジーで本がテーマになるのは「ビブリオ漫画文庫」に続いて2冊目。 収録作は70年代から2000年代まで幅広い。タイトルは書痴となっているがそれに沿っているのも第1章「愛書狂」に納められた3作くらいで、後はあまりタイトルに拘らず本に絡んだ作品から広く選ばれている。 収録作のレベルは高いが、個人的に気に入ったのは森泉岳士の「ほんのささやかな」と大橋裕之の「シティライツ」の一篇「八百屋」だろうか。
Posted by
まんがファンというレベルでは到底ないので、初めて読む作家さんも半分くらい。 辰巳ヨシヒロ「愛書狂」は、フローベールの同名作を日本を舞台にしてマンガ化したものだが、好きが高じて常軌を逸するに至る恐ろしさを描いた、『書痴まんが』の冒頭を飾るにふさわしい一編。 時間に追われる...
まんがファンというレベルでは到底ないので、初めて読む作家さんも半分くらい。 辰巳ヨシヒロ「愛書狂」は、フローベールの同名作を日本を舞台にしてマンガ化したものだが、好きが高じて常軌を逸するに至る恐ろしさを描いた、『書痴まんが』の冒頭を飾るにふさわしい一編。 時間に追われる日常と読書への没入との差異を細いタッチで描いた西村ツチカ「きょうのひと」、本とのふれあいの楽しさをメルヘンチックに描いたコマツシンヤ「屋上読書 魅惑の書店街 船の図書館」、SF的な急な展開について行くのが大変だった黒田硫黄「男と女」には、"本"が単なる舞台道具以上の存在として描かれていて、印象深かった。 貸本屋時代から漫画の成長期に向かう時代を背景とした松本正彦「劇画バカたち‼︎」や永島慎二「ぼくの手塚治虫先生」、貸本屋の客である子どもの心情に焦点を当てて描いた山本おさむ「雨とポプラレターペン」などは、当時の時代状況を知る上でも興味深い。 最後を締めるのは、つげ義春「蒸発」。若い時分に本作を読んだ時にはあまり感心しなかったのだが、今回改めて読んで、幕末の俳人井月の人生を題材に取りながら、無為な生活を敢えて送る古書店主山井の生き方を描くその描き方に、しみじみとしてしまった。
Posted by
- 1
- 2