世界史の分岐点 の商品レビュー
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橋爪さんはアカデミックながら柔軟に思考を展開できる人。佐藤さんは時々ぎょっとすることを言うので、話は割り引くようにしているが、タブーのない思考実験をする人だと思う。そんな二人の対談集。橋爪さんがテーマをまとめ、佐藤さんが捕捉していく感じで、経済・科学技術・軍事・文明という4つの切り口から大きく変わろうとしている時代の局面をとらえている。 経済ではアメリカ一強時代が終わり、中国が激しく追い上げている。脱炭素・量子コンピュータ・核融合といったテクノロジーの世界では激しいつばぜり合いや合従連衡が起こっているが、それはこれらの新技術を押さえることが次世代の覇権を握るのに大きく利するからだ。米中対立はイデオロギーの違いで対立しているのではないから冷戦というよりは帝国主義的な覇権争い。 アメリカ人は物事を見通す力が弱いという指摘は言いえて妙。見通せなくとも自らに覇権があるうちは力で相手を従わせることはできるが、中国・ロシア・中東など違う価値観を持った国々の動きは、現在とどめることができないところに来ている。 橋爪さんや佐藤さんの凄いところは視点を相手の側に移したときに、その相手に世界はどう見えるかをヴィヴィットに想像できる点だ。これは広範な知識や経験や歴史に対する洞察がなければできないが、多極化の時代にはこの感性がとても重要になると思う。 ウクライナ侵攻の前に出た本だが、この本を前提にすると、その後の2年間に起こったことが整理されて見えてくる。
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非常に面白かった。二人の対談形式で、経済、科学技術、軍事、文明について、過去の歴史を振り返りつつ、現状が語られている。今まで自分はなんと無知であったかを思い知らされる。危機感を持ちつつ、学び続けずにはいられない気持ちになる。巻末の文献リストも嬉しい。ぜひ読みたい。
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橋爪大三郎氏が、佐藤優の脱線しがちな対話の流れを何度も引き戻す。解説もそれぞれに得意分野があり、佐藤優を上回る知識や見解を披露できる橋爪大三郎は流石だ。分かりやすいし、面白い。技術論も踏まえた世界情勢について。 今の中国は大東亜共栄圏とよく似ている。グローバル経済は主権国家がた...
橋爪大三郎氏が、佐藤優の脱線しがちな対話の流れを何度も引き戻す。解説もそれぞれに得意分野があり、佐藤優を上回る知識や見解を披露できる橋爪大三郎は流石だ。分かりやすいし、面白い。技術論も踏まえた世界情勢について。 今の中国は大東亜共栄圏とよく似ている。グローバル経済は主権国家がたくさんあって、しかし経済は各国の法律のもとで活動するのがルール。法律は国ごとに違う。各国の法律を国際フォーマットに合わせなければならない。会計法、訴訟法、特許権とか知的財産権とか。現状これにそぐわない国はイスラム圏と中国。国際秩序のゲームチェンジャーになろうとしている中国を牽制すべく、こぞってウィグル問題で中国を非難し制裁をかけるが、日本は与さず、視点は台湾海峡へ。 日本でもアメリカでも起こっている問題は中流階層の解体。製造業中心の大企業が経済を牽引していたが、生産拠点を海外に移し始めることで打撃を受ける。リカルドの比較優位説。これを洗練させたのがサミュエルソン。国際貿易の基本定理としてのモデル。自由貿易を進めていくと最終的にどうなるか。モデルの前提は各国間で資本や技術の移転はなくて生産物を輸出入するだけというもの。それを続けていくと各国の要素価格が均等する。要素価格とは生産要素の価格のことで土地、資本、労働の価格。賃金が世界中で均等化すること、これが国際貿易の最終到達地点。付加価値の大部分は先端技術に集中するのだと。 日本もアメリカもここ数10年賃金が上がらず、アメリカの先端企業における一人勝ちの構図が格差を拡大し、富の集中とともにアメリカ経済を引き上げているから、日本のみが停滞してるように見える。国境の枠内に社会保障が必要な人間をどれだけ抱えているか。それによって税金が異なる。つまり要素価格は国際比較によって均等化する傾向にあるとしても、自国の枠内に抱えるリソースの形によってそれぞれにハンデが異なるから、最終的に賃金が世界中で均等化する事はありえないのでは。 核融合が10年後に実用化すれば地球温暖化の問題は解決する。今の原子力発電所は核分裂。放射性のウラニウムを使うがこの資源は埋蔵量が少なくまもなく枯渇する。廃棄物も多く出る。廃炉の解体も厄介。核融合なら海中に無制限に材料があって枯渇の心配がない。水素は炭酸ガスを出さないが、そもそもエネルギー資源ではなく、他のエネルギーを使って生産されるものである。太陽光エネルギーより太陽熱発電の方が本命。 受験や就職のために科目を選択して、早い段階から決めつけてしまう人生は空虚だ、と最後に二人。全くその通りだと思う。上手く生きる事は生命にとって重要で、社会のルールを把握したら、それに合わせて最大限自分の得意分野を当てはめる。それ自体は空虚だとは思わぬが、社会のルールは正しいか、それで社会は変わるのか。その時点での自己評価は正しいか、別の環境や異次元での成長を目指さないのか。内外から規定する人生の単位の枠を超えねば。国境枠内のリソース差異により均等化があり得ぬ原理と同義にも感じる。
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タイトルと対談者の組み合わせから大いに期待をしたが、やや期待を下回る内容だった。前半はほぼ橋爪先生の独壇場で日頃の主張と大きく変わらない。最近は橋爪先生の書物の出版があまりに連続して出版されるのでやや満腹感が出てきた。後半で佐藤氏による外交の裏側の解説は著者ならではの経験、知識が...
タイトルと対談者の組み合わせから大いに期待をしたが、やや期待を下回る内容だった。前半はほぼ橋爪先生の独壇場で日頃の主張と大きく変わらない。最近は橋爪先生の書物の出版があまりに連続して出版されるのでやや満腹感が出てきた。後半で佐藤氏による外交の裏側の解説は著者ならではの経験、知識が披露されて興味深い。
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地政学のあたりは全くついていけなかったので、もっと勉強が必要だなぁと改めて思う一冊でした。 また、日本の教育についても(著者ほど深くは考えられていないですが)共感する部分は多かったです。
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現代の国家観について非常に冷静に読み解いているように感じた。 現代においてあらゆる分野は互いに影響を及ぼしあうので分野横断ができることが望ましいと思っているが、ここまで多様な分野について議論できる人がいるのかと驚いた。
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「”不倖せの再生産”は避けようと、心の奥底で誰もが感じている」と説く。言い得て妙な表現です。 今、感じる。やっぱり息苦しい、ちょっと違う、なんかずれている、どうして責められるの、どうすればよかったの、ちょっとした不満が重なって積もって沈んで…。自分の中に潜む”こうではない”社会。 「働き方改革は正しくない」と説く。8時間以上働きません、勉強しません。そんなことをしていると、使い物にならない人材ばかりになる、と。たぶん、その通りかな。量が質を凌駕するではないけど、制限してはいけなかったと、この歳になって感じる。 「カタカナ語、絵文字は知的堕落だ」と説く。二言もありません。反省です。 「ノブレス・オブリージュが欠けている」と説く。ひっとしたら、誰もノブレスでないかもしれない。あるいは、ノブレスに含まれているかもしれない。もしノブレスならばすべきことがあるのでは、と、感じる。
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漢字を使うのは中国と日本くらい。 そのメリットを活かすという考え方は今までなかった。 発想の転換が自分たちを救う。
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経済、科学技術、軍事、文明をトピックに対談。 失われた30年。まだ取り戻せる。でも今のままじゃダメだ。 先端技術、宇宙法、核融合発電…
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俺の中での賢人2人の対談。今後の読書へのヒントが沢山あった。しかし2人は博識で、なんでも知っている。良くまあこんなに知ってるなと思うし、橋爪さんなんかはまたそれをどう分かりやすく伝えるかという点に注力しているようで、流石と思った。核融合発電や中国の宇宙での優位性、宇宙法の話、色々...
俺の中での賢人2人の対談。今後の読書へのヒントが沢山あった。しかし2人は博識で、なんでも知っている。良くまあこんなに知ってるなと思うし、橋爪さんなんかはまたそれをどう分かりやすく伝えるかという点に注力しているようで、流石と思った。核融合発電や中国の宇宙での優位性、宇宙法の話、色々な分野で幅広く勉強していかないと将来を予測する事なんて出来ないよな。外務省が極右勢力というのは面白かったし、なるほどなと思った。しかし世界で活躍する外交官は本当にスーパー能力者なんだろうし、海外の外交官ともやり合わないといけないし、磨かれるんだろうな。2人が教育に力を入れて、主張しているところが印象的だった。今の教育は詰め込み式で勉強嫌いの人を増やし続けてしまう構造的問題があるとの事。日本の教育システムが今求められている形に早くなるといいなと思った。
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