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「人それぞれ」がさみしい の商品レビュー

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19件のお客様レビュー

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2024/08/19

『「人それぞれ」がさみしい』 2024年7月25日読了 わたしたちが日常よく使ってしまう「人それぞれ」という言葉について、その社会的背景や内包する意味と問題、人間関係の変化などを多角的に扱った一冊。わたしが特に面白いと思った3点を列記していきたい。 1.「人それぞれ」を可能とす...

『「人それぞれ」がさみしい』 2024年7月25日読了 わたしたちが日常よく使ってしまう「人それぞれ」という言葉について、その社会的背景や内包する意味と問題、人間関係の変化などを多角的に扱った一冊。わたしが特に面白いと思った3点を列記していきたい。 1.「人それぞれ」を可能とする社会 わたしたち人類は狩猟採集や農業などで生計をたてており、集団で生活せざるを得なかったと言えよう。「人それぞれ」が可能になったのはつい最近のことなのだ。お金を支払うことでモノが買え、サービスが受けられるようになった。そして個人が尊重される社会になった。 たしかに「個人」が誕生し、人生の選択ができるようになったのは、人類の歴史の中でもつい最近のこといえよう。わたしたちの社会が「人それぞれ」となり、個人の自由が尊重される一方で、新しい問題が表出してきているのだ。 2.人間関係の変化 かつて地縁や会社での縁で結びついていたわたしたちの人間関係は、より個人が尊重されるようになり、自分の好きなように選択できるようになった。これは地縁という面倒な結びつきから解放される一方で、友達関係がより不安定になったともいえる。しがらみが少ない分、関係性を解消することも簡単になったということだろう。 しかし、人々は人間とのつながりから逃れられない。求めてしまわざるを得ないのだ。だからこそ、この不安定な人間関係に恐れを抱いており、関係性が修復不可能になってしまうような衝突を避けるために「人それぞれ」が多用される。 3.「人それぞれ」がもたらす問題 筆者は本書のなかで「萎縮」とそれによる抑え込みが表出した「過剰さ」を問題に挙げている。 「萎縮」の例としては、パワハラやセクハラを恐れるがために、部下に注意できない上司や、コロナ禍の「自粛警察」のように過剰に迷惑を抑制しようとする監視の目を挙げている。このほか、最も厄介だと思われる例が生活保護受給者に対する批判の目である。生活保護というものが税金で成り立っているがために、その受給者を努力不足であり「迷惑」とみなす考え方だ。このように、「人それぞれ」という考え方が広まる一方で、「迷惑センサー」によって人々の行動を律している側面もある。つまり、現代においても集団的体質というのは「迷惑を過剰に排除しようとする目」として残っており、その中で「生きづらさ」を抱えるのも必然と筆者は述べる。 このようにある意味、自分の意見を強く発信しにくくなった世界の中で、人々は不満を抱え込むとともに、自分と同じ意見の他者と強くつながるようになる。これによって、対立と分断が深まるとされる。また、「それぞれの不満に蓋をすることで秩序を維持してきた「人それぞれ」の社会」において、「迷惑センサー」をより過敏にしており、秩序から外れた人々にぶつけられる過剰なまでの反応(=炎上)を引き起こしやすくなっているといえよう。 「人それぞれ」の社会とは一見自由なように見えるが、萎縮の中で不満が募り、分断や過激な反応を生み出してしまっている。その問題を少しでも和らげる解決策として、本書では「異質な他者を取り入れる」ことを提唱している。たしかにしがらみが少ないわたしたちは、自分と合わない他者と付き合わないという選択がとれるようになった。自分に好ましいと思われる他者の中で生き、「異質な他者」の存在がより薄くなっていると言えるだろう。しかし、自分に好ましい意見ばかり聞いていても、世の中の分断と対立はより一層深くなるばかりである。 筆者がより居心地がよいと説く「おたがいに迷惑をかけつつも、それを笑って受け入れられるつながり」には、全く同感するところである。互いに迷惑をかけないよう、息をひそめて本音も言えない関係性はしんどい。居心地がよい関係性を築くためにも、「目の前の人と腰を据えて付き合うことを意識し、お互いがもつ異質さを受け入れる」ようになっていきたい

Posted byブクログ

2024/08/05

大学入試小論文の出典として名前を見て、この手のテーマが昨年の流行であったとのことで手に取った本。 プリマー新書ということで学生向けなので、文体も優しく、すぐ読めてしまうが、なかなか現代の「息苦しさ」を絶妙に言語化してくれているように思った。それゆえにプリマー新書であることが悔や...

大学入試小論文の出典として名前を見て、この手のテーマが昨年の流行であったとのことで手に取った本。 プリマー新書ということで学生向けなので、文体も優しく、すぐ読めてしまうが、なかなか現代の「息苦しさ」を絶妙に言語化してくれているように思った。それゆえにプリマー新書であることが悔やまれる。あと2、3歩踏み込んだ内容を読みたいと思った。 人それぞれ、という一見個性を尊重する社会通念は、実は形を変えているだけで集団主義的な色を非常に強く残しているというのはその通りだ。 外のコミュニティに対して「迷惑センサー」と「特権センサー」が過敏に反応し、相手を再起不能になるまでボコボコにする想像力のなさや、付き合う相手を選べるようになったが故の「キャンセル思考」「コスパ思考」によって、踏み込んだ深い関係性を築けない寂しさはとても合点がいった。 ここから先は持論だが、全ての問題の根幹にあるのは、他者に対する想像力の欠如だと思う。ただ、その想像力は思いやりから生まれるものだ。これだけ個人主義が進んでいる昨今、他人を思いやる事の美しさを語ることが難しい。何でもかんでもコスパで考えることになった今では、他者への思いやりに必要性こそなければ、関わらない「緩やかな撤退」が戦略的に効果があるからだ。 どんな世界線に進んでいくとしても、目の前の人を大切にする自分でありたいと改めて思った。

Posted byブクログ

2024/07/05

現代は『人それぞれ』の多様性が認められはじめて、ずいぶんと昔よりは生きやすくなっていると思う反面、他人とクイックに繋がれる希薄な人間関係にうっすらとした寂しさを感じてこの本を読みました。 ・異質な他者を取り込むには深い対話が必要 ・最適化願望をいったん脇におき、つながりへの期...

現代は『人それぞれ』の多様性が認められはじめて、ずいぶんと昔よりは生きやすくなっていると思う反面、他人とクイックに繋がれる希薄な人間関係にうっすらとした寂しさを感じてこの本を読みました。 ・異質な他者を取り込むには深い対話が必要 ・最適化願望をいったん脇におき、つながりへの期待値を下げ、人にはプラスの面もマイナスの面もあるというごく当たり前の事実に立ち返る必要がある ・人付き合いの基本と本質は、期待通りにいくこと、期待にそぐわないことも含めて共に過ごしていくこと 人間関係を築く際に自分に足りてないことや、これからの人付き合いに意識していきたいことが明確になった気がします。

Posted byブクログ

2024/02/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

・「個を尊重する社会」というのは、一人ひとりがそれぞれに独立した意見をもち、それを率直にぶつけられる社会という意味合いもありました。誰もが、気を遣いつつも、率直に意見をぶつけ合うことで、よりよい社会を築いていく。そういった対話のある社会が目指されてきたのです。 果たしてそういった社会は実現できたのでしょうか。世の中を見渡してみると、実際に到来したのは、目の前の他者に対して意見や批判することを憚り、それぞれが自分の殻に閉じこもる社会、あるいは、検索をつうじて、互いに意見の合致している人のみが結びつき、意見の合わない人は寄せ付けない分断型の社会ではないかと思うこともあります。そこからは、個を尊重する姿勢を読み取ることはできません。

Posted byブクログ

2024/01/29

「まあ、人それぞれだからね」というのは一見寛容に見えるけれども非常に冷たい対応で、それによって生じる懸念などの解説をした本。新書だし薄くてわかりやすかった。 「人それぞれ」ってのはその人を尊重するように見えて、その人自身が抱える問題をこちらに持ち込まないでくれという一種の拒否反応...

「まあ、人それぞれだからね」というのは一見寛容に見えるけれども非常に冷たい対応で、それによって生じる懸念などの解説をした本。新書だし薄くてわかりやすかった。 「人それぞれ」ってのはその人を尊重するように見えて、その人自身が抱える問題をこちらに持ち込まないでくれという一種の拒否反応でもあり思考をストップさせる言葉でもある的なことが書かれていて、いやーほんとそうですよね…と反省したというか、考えたくないことが出てきたときに使ってしまいがちが頻出フレーズよな…と思った。 「人それぞれ」なのはもう存在するものとして社会に共有されたほうがいいし、大事なのはその「人それぞれ」の中身に対してどうやって行動していくかよね。 このあたりを柔軟にしていけばもっと労働に参画しやすい人たちも出てくるよね

Posted byブクログ

2024/01/22

若者あるいは中学生向けの新書である。したがって、難しくはなく、語りかけるような書き方である。  何か人付き合い、あるいは炎上してしまった人が読むと癒されるであろう。短時間で読めるので大学生にもおすすめである。

Posted byブクログ

2023/04/19

私たちは長い年月をかけてやっとひとりになることができた。私たちが深い対話を取り戻すためには、最適化願望をいったん脇におき、つながりへの期待値を切り下げ、ただつきあうことをもっと意識した方がいい。多様性というワードの本質の誤解と似ていると思った。

Posted byブクログ

2023/02/22

超良かった。ぜひ「昔は良かったなぁ」と思っている人には読んでほしい 個人主義の弊害について書かれているが、 ネットでの過剰な「叩き」、「親ガチャ」にまで言及されており、とても読み応えがあった 気づき ・集団から離れた「人それぞれ」社会は、「つながりは自分で調達する」ことを意味す...

超良かった。ぜひ「昔は良かったなぁ」と思っている人には読んでほしい 個人主義の弊害について書かれているが、 ネットでの過剰な「叩き」、「親ガチャ」にまで言及されており、とても読み応えがあった 気づき ・集団から離れた「人それぞれ」社会は、「つながりは自分で調達する」ことを意味する。それは「相手からも魅力的である」必要があるため、人間関係がコスパ重視になる。 ・人間関係のコスパ主義は、人間関係を狭める。 「人にはプラス、マイナスどちらもある」ということを今一度思い出すべき ・現代の「叩き」に共通するのは「異質な他者の不在」である。異質な他者をも取り込む必要性

Posted byブクログ

2022/09/07

この著者さんの言っていることが、自分に当てはまっていた。一人でいるのが気楽で落ち着くし、人との関係は疲れるし面倒くさい。何より自分と合わない人との関係なんて、もっといやだ。だけどこの本を読んで、少し価値観を変えてもらえた。

Posted byブクログ

2022/05/21

「人それぞれ」という言葉に込められている、一見多様性を重んじているようで実は思っていることを飲み込み、大きな波を起こさないように過ごす考え方、今の社会で多くの人が知らないうちに実践している考え方や行動をわかりやすく解説してくれている。実は私も大いに思い当たるところがある。一つはこ...

「人それぞれ」という言葉に込められている、一見多様性を重んじているようで実は思っていることを飲み込み、大きな波を起こさないように過ごす考え方、今の社会で多くの人が知らないうちに実践している考え方や行動をわかりやすく解説してくれている。実は私も大いに思い当たるところがある。一つはこの20年ほど友人ができないこと、大学生の頃の友人とは離れていても会えばすぐに戻る感覚で今も繋がっているが、働き出してから本当の苦しみを吐露できるような友人と巡り会えない。これは青年期を過ぎた大人では仕方ないのかなと思っていたが、恐らく本書で書かれていることが本当の原因だったと思う。私も相手を尊重するという考え方のもと、自分の意見を声高に言うこともなかったし喧嘩になることもなかった。信を置く付き合いというのは互いに良いところ、悪いところを認め合って成立するものだと思うので、それをしなければ生まれない。また今の世の中、君子危うきに近寄らずでなるべく自分にとってマイナスになることは避ける傾向にある。そうなると、コスパで友人や結婚相手を選ぶと言うと露骨過ぎるが、そういうことなんだと思った。でも、本書を読んだ後、これに気づき周りの人と積極的に話すようになった。被害がない人間関係も良いものだが、やはり寂しかったのだ。

Posted byブクログ