炎上社会を考える の商品レビュー
とても良かった。2020年の雑誌に掲載された論考がもとになっているが、今でもまったく古びていない。SNSにいる多くの人に読まれてほしい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
著者自身が後書きで触れているように、現代社会、特にSNSを媒介としたコミュニケーションにおける様々な不寛容さを問題提起した書なので、これを元に、自分の考え方を整理するための書として非常に良書と思う。 ざっと感じた点をメモ。 1章 自粛警察の原動力が、新自由主義に基づく自己責任感にあり、結果の責任を事後的に自分で引き受けないとならない状況では他者のルール破りが許せないから、という視座が興味深い。こと日本人は、他人が得をするのが許せない、という足の引っ張り合いから来ると思っていたので。誰が弱者を問うのが大事、という考えは重要と思う。 2章 他者を批判するのは自分が「正しい」が和にいることをアピールするため、ひいてはそういう「正しい」自分を呈示してあわよくば売り込むため。だからこそ、ガバナンスやコンプライアンスを過剰なまでに気にする。 3章 『ウォーク』としての自己呈示がしたいが為にハッシュタグアクトに参加し、さらには「進んだ」人と見せる為により発言を先鋭化させる。更に、複雑化した問題を記号化して消化できるよう、インフルエンサーの単純化した主張に乗っかり、いつの間にか群衆としての行動に自分の主張が乗っ取られてしまう。 4章 反・反差別は、反差別側の進歩派の仮面を被った(と思わせる)ある種独善的な意見の押し付けに対する反作用かもしれない。人間には完全な善も悪もない、という事を忘れたら、反差別がただの鼻持ちならないお説教になってしまう。 5章 「共感」は本来、相手の立場と同化して想像力を働かせるところから生まれる。「同情」は情意を同じくすることであり、本来はそれが必要。なのに、「共感」が「好感」にすり替わり、消費対象にされている、という指摘はハッとさせられる。 6章 キャンセルカルチャーは、どうしても反省(謝罪ではなく、自らを省みる本来の意味での)が出来ない相手への最後の手段であるべき。人は変化するもので、相手の変化や成長、人間の矛盾に思いを致さずに1点のみを取り上げて追い詰めるのは、ひいては虐げられた人が他者を弾劾する手段すらも奪いかねない。 著者の意見を聞いてスパッと納得して終わりたい、というのもあろうが、そのような安易な結論をつけたがる事こそが問題の根かと。大事なのは、誰が非難されるべきかを自分の目で見て考え抜き、ときに誤りがあれば訂正する勇気を表明する事であろう。リベラルな態度が高慢さに繋がることが無いよう、著者の言うリベラルな寛容さ、のための不断の知的努力が必要なのだろう、と改めて自戒した。 個人的には、「われこそが弱者」とする弱者の定義と、指定された敵の徹底的な排除に関しては、既存秩序を守る事を至善としつつ、秩序に従うのは本当は損で、誰かが得しているのが許せない、という日本人に多い性向が強く影響していると思う。弱者論については朝日新聞にも何回か掲載されているようなので、いつか日本人の考える「弱者」と他文化圏のそれとの違いに関連する、別の論考が刊行されると良いなと思う。
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独身未婚中年男性の自分が読んでみました。 なかなかおもしろかったです。 ネット空間は、人間の本性も可視化されたってことなんだろうなと思いました。 リア充はたぶん、ネットなんて使っている暇ない・・・。 (使うとすれば、自分の儲けになるPRのために使う) 著者の伊藤先生がネットで「...
独身未婚中年男性の自分が読んでみました。 なかなかおもしろかったです。 ネット空間は、人間の本性も可視化されたってことなんだろうなと思いました。 リア充はたぶん、ネットなんて使っている暇ない・・・。 (使うとすれば、自分の儲けになるPRのために使う) 著者の伊藤先生がネットで「弱者男性」に関するインタビューを受けている記事を読んだのですが、そこで言われる「弱者男性」って、ヘテロ男性のことなんだなと、ヘテロではない自分は思ったのでした。 本当の弱者はきっと、声も出さずに静かに溺れていくように思われるので、顕在化されることはないのかもしれません。
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■ハッシュタグとはSNSでの投稿をカテゴライズするためのラベルとして使われるものだが、それが今日では社会運動のスローガンとして用いられることが多くなっている。 人々が特定のハッシュタグとともに自らの思いを投稿していくことで、それが多くの人々の思いと結びつき、全体として一つの運動...
■ハッシュタグとはSNSでの投稿をカテゴライズするためのラベルとして使われるものだが、それが今日では社会運動のスローガンとして用いられることが多くなっている。 人々が特定のハッシュタグとともに自らの思いを投稿していくことで、それが多くの人々の思いと結びつき、全体として一つの運動体が構成され「ハッシュタグアクティヴィズム」と呼ばれるこうした動きはネットの中ばかりでなくリアルな場にもさまざまに広がり、今や社会全体と揺るがすほどの大きな影響力を持つに至っている。 ■ハッシュタグはオーディエンスを確保するための手立てとなる。そこでは「集団極化」と呼ばれる現象が起きやすくなっている。「集団極化」とは集団で考えた場合の方が個人で考えた場合よりも意見が極端なものになりやすく、行動が過激なものになりやすい現象を指す。 ■著名人の過去の言動を告発し、その点を批判するだけではなく、その人物の活動をボイコットし、果てはその地位を剥奪してしまおうとするような風潮を「キャンセルカルチャー」と呼ぶ。 ■キャンセルカルチャーの特質、とりわけその思考様式にみられる3つの特徴。 ①リベラリズムの規範、それも文化的な意味でのそれとの結びつき。つまり多様性を重んじ社会的弱者としてのマイノリティーを擁護する立場から特権的な地位にあぐらをかいているマジョリティを糾弾することで古い価値観や旧来の権力構造を否定し社会を変革していこうとする志向がある。そのため、ジェンダー、エスニシティ、障害などに関連し弱い立場にあzる人々の人権を侵害するような言動を行ったもの、とりわけ権力者がそのターゲットとなることが多い。 ②不寛容性。リベラリズムの規範に抵触するような行為がなされると、ほんとちょっとしたことであれ、しかも事情のいかんを問わず、厳しい処罰が求められる。そこには情状酌量という考え方が存在しないばかりか量刑、つまり対の重さに照らして罰の厳しさを決めるという考え方が意識されることもあまりなく、一律にキャンセルが求められる。 ③過去の行為の問題化。どんなに遠い過去になされた行為であっても、昔のことだからと言って不問に付されることはなく、しかも当時の事情のいかんを問わず、厳しい処罰が求められる。そこには事項という考え方が存在しないばかりか過去の行為をあえて掘り返してきて今更糾弾するという姿勢がしばしばみられる。
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インターネットやSNSを中心に沸き起こる、分断・衝突・ぶつかり合いの背景には、何があるのか――。社会学の見地から考察する。
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軽い気持ちでやったことや、意図していないことにフォーカスが当たることで、起こりうる「炎上」は今や聞き慣れた言葉だが、丁寧に考察してみるとその構造や原因は単純なものではなく、捉え方も難しい。 本書では単に「不祥事」としての「炎上」と片付けるのではなく、時代の変化やネオリベラリズム...
軽い気持ちでやったことや、意図していないことにフォーカスが当たることで、起こりうる「炎上」は今や聞き慣れた言葉だが、丁寧に考察してみるとその構造や原因は単純なものではなく、捉え方も難しい。 本書では単に「不祥事」としての「炎上」と片付けるのではなく、時代の変化やネオリベラリズムをはじめとした思想の影響と関連づけて、社会における炎上を考える機会を与えてくれる。
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