激動日本左翼史 の商品レビュー
左翼、ってなんだ? マルクス、スターリン、日本赤軍、ブント…聞いたことはあるけれど、「なんかやべー奴ら」としか思っていなかった。 左翼といえば革命。 革命を担うは労働者、労働者の権利といえば労働組合。 誤解なきようはじめに言うと、労働組合そのものは労働者の権利であって全く悪いも...
左翼、ってなんだ? マルクス、スターリン、日本赤軍、ブント…聞いたことはあるけれど、「なんかやべー奴ら」としか思っていなかった。 左翼といえば革命。 革命を担うは労働者、労働者の権利といえば労働組合。 誤解なきようはじめに言うと、労働組合そのものは労働者の権利であって全く悪いものではない。 だが、「九条、沖縄、団結せよ!」しか言わない(しかも組合費の使途は不透明でやたら高い上に私の給料も待遇も上がらないし)会社の労働組合はとっくに抜けた。 せいせいした〜 だが、その程度の認識でいいのか?よく知らないままでいいのか? 「なんかやべー奴ら」の歴史を知りたい。 学校や資格試験の勉強、普段の仕事では出てこないことをちゃんと知りたい。 本書は佐藤優氏と池上彰氏の対談形式。 どちらもまだ学生運動華やかなりし頃に学生時代を過ごしている。 左翼の思想から学ぶことは多い、と彼らは言う。少し構えた。 しかし彼らは何も暴力革命を煽っているわけではない。 本書は可能な限りフラットに語ろうとしているように思えた。 分裂していく思想、政党の変遷…こうしたものを見ると、人間の善き面だけではない多様性を感じた。 確かにどこからでも学ぶべきものはある。 まだ、私は左翼を知らない。
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日本左翼史第二弾「激動」 第一弾である「真説」はなかなか理解が難しい部分が多かったが、今回の「激動」は学生運動やよど号、あさま山荘等実際に起きた出来事、事件を題材にしていることもあり、非常に面白かった。 読んでいて思ったが、正直共産党や社会党の成り立ち、歴史等はあまり興味が持てな...
日本左翼史第二弾「激動」 第一弾である「真説」はなかなか理解が難しい部分が多かったが、今回の「激動」は学生運動やよど号、あさま山荘等実際に起きた出来事、事件を題材にしていることもあり、非常に面白かった。 読んでいて思ったが、正直共産党や社会党の成り立ち、歴史等はあまり興味が持てなかったし、分裂や合流が複雑すぎて理解が追いつかなかった。 ただ、左翼という思想を発端にして、いかに学生運動等のできごとが起こったか、そこに至るまでの経緯や思想、考え方についてはある程度理解できたのではないかと思う。また左翼という団体がなぜ過激な暴力という道に進んだのかもなんとなく理解はできた。 左翼という思想が起こした歴史は決して肯定されるものではないが、元は純粋に国の行末を案じての行動だったに違いない。果たしてそれだけの想いをいる大人現在がどれほどいるだろうか。当時の人達が今の選挙率を見たら失望の念を抱かずにはいられないはずだ。この国のことを少しでも真面目に考える一つのきっかけになったと思う。
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前著「真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945~1960」に続く第二弾。学生運動が盛り上がり、セクト同士の内ゲバが激化し、過激派によるテロ事件が多発した時代、「新左翼」による失敗の本質は!
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なるほど、共産党や社会党に加え、第3の左翼勢力である「新左翼」は1960年の安保闘争から急激に存在感を現し、全共闘に進展してから1968年の安田講堂事件や日大闘争などでピークを迎えたという。その後の運動は内ゲバやテロなどの活動は過激さを増し、世間とは遠い存在となってしまったと。1970年代になると労働運動も「ごろつき化」してしまったとのこと。 同志社大学元理事長野本真也氏の「大人の政治」と「子供の政治」という視点は大変興味深く、体制側と新左翼の姿を端的に言い表していると思う。
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知らないことが多い。こう言う流れでこう言う事が起きたのかと改めて整理出来た。あさま山荘事件とか。テルアビブ空港乱射事件なんて知らなかったし、よど号事件も知らなかった。もっとちゃんと知らないとダメだな。しかしこのエネルギーはどこから来るのか。そう言う時代だったという事なのだろうが、...
知らないことが多い。こう言う流れでこう言う事が起きたのかと改めて整理出来た。あさま山荘事件とか。テルアビブ空港乱射事件なんて知らなかったし、よど号事件も知らなかった。もっとちゃんと知らないとダメだな。しかしこのエネルギーはどこから来るのか。そう言う時代だったという事なのだろうが、このエネルギーが何処に行ってしまったのかも謎だ。今の若者も政府から過剰なコロナ対策で青春を奪われまくっているが、誰も抵抗しない。革命起こしても良いくらい理不尽に痛めつけられているのに。老人支配国家だし。過度な暴力や内ゲバとか、やっぱり引くよな。支持を失うよ。次の巻も出るようだから読んでみよう。マルクスとか勉強した事ないけど、ちゃんと知っておかなければならないのかな。佐藤氏はそう言う面ではこの頃の新左翼は勉強していたし知的レベルは高かったと評価していた。そんなものなのか。
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p29 生徒会の起源はGHQの民主化施策にある。 戦後の旧制水戸高校の生徒ストも一要因。 p31 外部注入論。 労働者は本来革命の主体となるべきだが、 資本主義から抜け出せないため、 職業的革命家の集団(=ボリシェビキ)を結成し、 ロシア革命を成し遂げた。 p74 フルシチョ...
p29 生徒会の起源はGHQの民主化施策にある。 戦後の旧制水戸高校の生徒ストも一要因。 p31 外部注入論。 労働者は本来革命の主体となるべきだが、 資本主義から抜け出せないため、 職業的革命家の集団(=ボリシェビキ)を結成し、 ロシア革命を成し遂げた。 p74 フルシチョフは基本は平和路線。 帝国主義戦争を内乱化させて革命を起こすことは無理との考えに基づく。 一方で、相手が武力放棄する確証はないため、 核軍備は進めるという、まさに、敵の出方論。 p115 学生が大学の学費値上げに怒ったのは 大学が資本の論理に基づき大学を運営しており、ひいては、学生たちを資本家が期待する労働力として育て供給するための機関に成り下がっていると考えたから。 p147 第一組合は労働者が同僚をオルグして組織する。共産党系か総評系が多い。 一方、第二組合は子飼いの社員に命じて作らせる労使協調路線であることが多い。 第三組合は新左翼系の従業員によって結成されていたこともあった。 p207 60年代末期は高度経済成長により生活水準が上がったが、一方で大型機械の導入や分業、マニュアル化が進み、働くことそれ自体の喜びから切り離される事態も著しく進行した時代。
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1巻目もそうだったが、理論家の登場人物が多すぎて頭こんがらがる。 そして事実の解説部分と佐藤優さんの自説開陳部分の区別をもう少し明瞭にしてもらいたい。 60年安保→その後空白期間→68年東大闘争→ますます過激化し70年よど号ハイジャック事件など という流れは改めて理解できた。 ...
1巻目もそうだったが、理論家の登場人物が多すぎて頭こんがらがる。 そして事実の解説部分と佐藤優さんの自説開陳部分の区別をもう少し明瞭にしてもらいたい。 60年安保→その後空白期間→68年東大闘争→ますます過激化し70年よど号ハイジャック事件など という流れは改めて理解できた。 それからこれは次の巻で語られるのかもしれないが、新左翼が世間から見放されたことはわかるがそれがどう社会党と共産党の凋落に結びつくのかをもう少し詳しく解説してほしい。 だって流石に規制政党は新左翼みたいな内ゲバやらないでしょ、と普通考えると思うので世間が左翼全体を見放すにはもう少しいくつかの要素がいるんじゃないか。と思ったりした。 今を生きる私たちにとって重要なのは、佐藤優が何度か言及している「左翼とリベラルは違う」という点を理解することなのでは? リベラル=左翼と思われてるし当事者もそう思ってると思うので、次の巻ではその点をもっと語ってほしい。
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1.この本を一言で表すと? 学生運動がなぜ起こり、何故終息したのか振り返った本。 2.よかった点を3~5つ ・「敵の出方」論をめぐる志位和夫の嘘(p60) →共産党の民主集中制の異常さがよくわかる内容だと思う。佐藤氏が言う「矛盾や詭弁を平気で口にできてしまう体質」の問題点もよく...
1.この本を一言で表すと? 学生運動がなぜ起こり、何故終息したのか振り返った本。 2.よかった点を3~5つ ・「敵の出方」論をめぐる志位和夫の嘘(p60) →共産党の民主集中制の異常さがよくわかる内容だと思う。佐藤氏が言う「矛盾や詭弁を平気で口にできてしまう体質」の問題点もよく分かった。 ・日本人を「総ノンポリ化」した新左翼運動(p245) →現代に思想の面で何も残せなかったが、それでよかったのかもしれない。 浅間山荘事件の犯人の1人加藤倫教が2/28NHKラジオに電話出演していたが、今事件をどう捉えているかの質問に「事件後、政府に対して反対する市民運動自体が悪いことになってしまった」と語っていた。 ・人間には理屈では割り切れないドロドロした部分が絶対にあるのに、それらをすべて捨象しても社会は構築しうると考えてしまうこと、そしてその不完全さを自覚できないことが左翼の弱さの根本部分だと思うのです。(p209) →この文が左翼の失敗の本質ではないかと思う。 ・2019年の慶應三田祭で卒業生が昔の学生生活について在校生に教えるという企画があり、私のところにもある現役学生が話を聞くために訪ねてきたのですが、この学費値上げ反対ストの話をすると不思議そうな顔をしているんですよ。彼らからすると「だってこれから入ってくる学生の授業料を値上げするんでしょう? 在校生には関係ないのに、何で反対するんですか?」というわけです。 それを聞いて私はつい語気を強めて「おい! 君は自分さえよければいいのか!」と言ってしまいました。(p114) →私はこの学生と同じ考えです。個人主義が広がったということか。 2.参考にならなかった所(つっこみ所) ・左翼思想家はなぜ別名(ペンネーム)をつける人が多いのか? 3.実践してみようとおもうこと ・主義主張には反対の主張の両面からチェックするべきだと思う。 ・今後左翼思想が主流になった時、戦後左翼史の失敗を繰り返さないために何をすれば良いか? 5.全体の感想・その他 ・細かい解釈の違いみたいなもので彼らは殺し合いをしていたのかと唖然としてしまう。 ・思想というのは、革命を成し遂げるためには人を殺してもいい、という考えにさせる非常に怖いものだと思う。
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昔も今もセンスがないという一点において左派は一貫してるなーと思った。 政治的なものの見方で突拍子もないこといったり暴力を肯定して大衆に見放されたり。とにかく大衆意識との乖離を自覚しない点で常に地に足ついてない。 過去の左派では「エライ」の基準は獄中暦とか非転向とかだったそう。本書...
昔も今もセンスがないという一点において左派は一貫してるなーと思った。 政治的なものの見方で突拍子もないこといったり暴力を肯定して大衆に見放されたり。とにかく大衆意識との乖離を自覚しない点で常に地に足ついてない。 過去の左派では「エライ」の基準は獄中暦とか非転向とかだったそう。本書で描かれた時代にはこの基準が先鋭性に移り変わったと見える。現代では「正しさ」。より正しく誤謬のない理論や価値観を提示できた人がエライ。そうなってしまう理由が理論への過信にあるという佐藤の見方には同意する。 現代において見られるのは、理論に惹きつけられるのはエモーションの働きが弱い人、つまり性欲や金銭欲などの俗っぽい欲望が希薄な若者が左派に引き寄せられる傾向。欲望が希薄なので基本的に欲望に従って生きている大衆の気持ちがわからない。理論を学べば学んだ自分達が正しく学んでいない大衆が遅れているという意識になるので、平気で「保守化する若者は想像力が足りない」みたいなことを言い出す。誰がより正しいかという競争は大衆からどれだけ乖離できるかという競争でもあるのだけど、それと同じ構図の競争の到達点が浅間山荘だったことは他人事としか思ってないのかな? 現代の左派の人たちこそ読まなければならない本。
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日本共産党の考え方。福祉国家とは国民の選択を社会主義に向かわせないため、社会保障や所得配分を部分的に改善し、国民を資本主義体制の枠内に留め置くための、資本主義延命策。共産党の党内序列は獄中生活が長い者順であったが、造反議員を排除する目的で、更に完全黙秘を貫いた者が偉いとなり、宮本...
日本共産党の考え方。福祉国家とは国民の選択を社会主義に向かわせないため、社会保障や所得配分を部分的に改善し、国民を資本主義体制の枠内に留め置くための、資本主義延命策。共産党の党内序列は獄中生活が長い者順であったが、造反議員を排除する目的で、更に完全黙秘を貫いた者が偉いとなり、宮本顕治が№1となった。 しかし以前と比べ、ストライキ闘争はめっきり減った。公立の学校でも以前は毎年のようにストライキが行われていたが、当時から公務員のストライキは法律で禁止されていた。つまり処分覚悟で実施していた。で、クビになったり、幹部だと逮捕されたりしたが、そのような教師は日教組等の専従となり働けた。だから違法なストライキも覚悟をもって貫くことが出来た。 共産党と社会党の争い。共産党は労働者が社会党に引き寄せられるのを嫌がり、大規模ストなど派手な闘争を総評主導で進めてきた社会党を「一揆主義」(国家にかなわない一揆を起こしても、権力に叩き潰されるだけで効果が無い)として批判しだした。共産党にとって真の敵はアメリカ帝国主義であるため、国内問題である日本の差別問題(部落や沖縄)までも無い事としてきた。 新左翼。彼らにとって60年安保闘争の敗北は巨大な挫折。もう何をやっても無駄という無力感に襲われた。当時大学の自治は非常に重視されており、今と違い大学側が学内に警察を招き入れ学生を排除するなど言語道断という意識は、広く一般学生においても当然の考えであった。民青(共産党系)と全共闘の内ゲバは凄惨。日大は当時から裏金・使途不明金のオンパレード。裏金を応援団や柔道部に配り、全共闘学生を襲撃させる。YouTubeで「日大闘争の記録」を見られる。早稲田では法学部以外を革マル派が制圧。他のセクト学生に対し、鉄パイプで膝の皿を割ったり、目をタバコの火でつぶすなど、再起不能にし学校に出てこられないようにしてしまう。警察も捜査しない。京都の左翼系書店には公安がいて、本を探す学生に声がけし、親しくなり公安の内定者に仕立て上げる。全共闘指導部も三島由紀夫事件に衝撃を受け、あそこまで体を張れる人間を我々は一人も持っていないと嘆く。そして赤軍派、大菩薩峠事件と、よど号事件、更にはテルアビブ空港乱射事件。実行犯の岡本らは最初から生還できないことは判っており、その覚悟はパレスチナで称賛され、難民キャンプでは「オカモト」や「コウゾウ」という名を付けるのが流行した。 しかし結局新左翼はその過激さゆえに日本人を総ノンポリ化させてしまう。著者も暴力の対象を権力だけにしていれば存在感は示せたかもしれないと述べている。そしてそれが個としての自立にはこだわるが、目の前の利益をひたすら追求する経済成長型サラリーマンを量産することとなる。新左翼の連中は信頼していた仲間に裏切られ、党も何も信用できなくなり、頼れるのは自分だけという会社員に育ち、新自由主義の母体を作った。日本赤軍幹部の重信房子は今年5月28日に刑期を終え出所する。
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