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ある詩人への挽歌 の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2022/05/26

緻密に計算された謎と陰鬱な雰囲気の、いかにも乱歩好みの素晴らしい作品だった。 7章立てで、章ごとに話者が代わり、その度に新たな視点と情報が加わり、事件の様相がどんどん変わって行くのが楽しかった。掘れば掘るほど違う世界を見せてくれる、奥の深さに読む手が止まらなかった。 これは傑作!

Posted byブクログ

2022/01/10

 乱歩が高く評価した本作を新訳で読むことができて、とても嬉しい。乱歩は、前半を占めるスコットランド方言がほとんど理解できなかったと言っているが、翻訳で読むことのありがたさ、抵抗なく読み通すことができた。(訳文が原文の風合いを表現できているかどうかについては評価する能力がないので、...

 乱歩が高く評価した本作を新訳で読むことができて、とても嬉しい。乱歩は、前半を占めるスコットランド方言がほとんど理解できなかったと言っているが、翻訳で読むことのありがたさ、抵抗なく読み通すことができた。(訳文が原文の風合いを表現できているかどうかについては評価する能力がないので、読み易かったと言うに留めたい。)    舞台は、スコットランドの古城。そこに住む主人は、古くからの一族の末裔だが、吝嗇漢で、地元の村人からは嫌われていた。彼が墜落死を遂げたとの報がもたらされる。その死の真相や如何に…  複数の語り手による語りにより、舞台背景や登場人物の性格、態度、お互いの関係などが、徐々に明らかにされていく。  前半の導入部から、後半は事件の真相解明になっていくのだが、納得のいく説明が、次の説明により覆され、これで終わりかと思ったら、最後にまた一捻りがあって、ラストまで間然としない。  ロマンスあり、幽霊談あり、クリスマスの雪に閉ざされた古城と、ミステリの舞台としては最高だし、古城を我が物顔で走り回るネズミが大きな役割を果たしているのも、なかなかシュールだ。    タイトルの由来は、スコットランドの詩人ウィリアム・ダンバーの『詩人たちへの挽歌』。過去の詩人たちを悼む詩で、各連の最終行で繰り返される「死の恐怖、我をさいなむ」(Timor Mortis conturbat me)が有名らしい。

Posted byブクログ