2030 半導体の地政学 の商品レビュー
半導体不足というニュースを見て、なぜそれほど共有が追いつかないのか、と疑問を持っていました。本書を読んでその理由がわかりました。サプライチェーンがあまりに複雑な上、投資規模が国家規模、そして高度な技術は特定の企業がほぼ独占しています。そんな状況では、需要があるなら作ればよい、とい...
半導体不足というニュースを見て、なぜそれほど共有が追いつかないのか、と疑問を持っていました。本書を読んでその理由がわかりました。サプライチェーンがあまりに複雑な上、投資規模が国家規模、そして高度な技術は特定の企業がほぼ独占しています。そんな状況では、需要があるなら作ればよい、というわけにはいかないのだな、と納得です。 普段あたりまえに使っているデバイスに必ず使われている半導体ですが、そのサプライチェーンの裏側がこんなに面白いものだったなんて驚きです。台湾のTSMCという企業のことも知らなかったですし、そこが最先端の製造技術を独占しているなんてことも初めて知りました。この業界は技術的な難しさと投資規模の大きさによる参入障壁の高さがあり、サプライチェーンの様々な段階で各国の企業が市場を抑えようと激しい競争を繰返しています。他人事としては面白い話ですが、最前線で研究開発している企業は本当に大変そう。 参入障壁によって技術や生産能力の独占が起きる上に、それが一国の安全保障を脅かすほどの重要な産業だということで、米中を中心とした国家規模のかけひきが繰り返されています。日本の将来への希望もそれなりに書かれている本ですが、客観的に見て日本企業がその中でメジャープレイヤーになる見込みはあまりなさそうだというのがとにかく寂しいですね。
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世界の半導体の生産はTSMCに偏っており、中台統一を目論む中国共産党の動きもあり、地政学的なリスクが大いに意識されるようになった。日米半導体摩擦など、かつては日本が半導体の覇権を握るのではないかという時代があったにもかかわらず、本書ではもはや、日本企業はキープレーヤーとしてほとんど挙げられていないという現実に軽いショックを感じてしまう。。。 技術的なことはほとんど触れられないが、その分読みやすい。最近のimecやTSMC熊本工場のニュースの裏側を読み解くにもよい内容。
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2018末まで半導体業界にいた自分は戦略物質を扱っている感覚で働いていたことは一度もなかったが、今は国内メーカーの人たちはどんな感覚なのだろうかと思った。 産業の中の要点を抑えれば安全保障上有利になるのはわかるけど、本当に日本にそれができるの?となかなか疑問になる。 市井の民に何...
2018末まで半導体業界にいた自分は戦略物質を扱っている感覚で働いていたことは一度もなかったが、今は国内メーカーの人たちはどんな感覚なのだろうかと思った。 産業の中の要点を抑えれば安全保障上有利になるのはわかるけど、本当に日本にそれができるの?となかなか疑問になる。 市井の民に何ができるのか、具体的には見つけにくいが、関心を持っていかなければと思った。
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日米同盟視点で見れば半導体世界一のシェアを持つTSMCは台湾西部の新竹にあるので台湾海峡の安全保障政策は現時点では重要だがアリゾナや熊本など国外への工場建設が進みリスクが分散した後も今と同じ熱量で中国を牽制するとは思えない。 個人的にはルネサス那珂と旭化成マイクロの火災で放火の可...
日米同盟視点で見れば半導体世界一のシェアを持つTSMCは台湾西部の新竹にあるので台湾海峡の安全保障政策は現時点では重要だがアリゾナや熊本など国外への工場建設が進みリスクが分散した後も今と同じ熱量で中国を牽制するとは思えない。 個人的にはルネサス那珂と旭化成マイクロの火災で放火の可能性に言及していることが興味深かった。
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面白かった。単なる技術の戦いでなく、国防の問題。グローバリゼーションの巻き戻しは世界をどこに連れていくのだろう。
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現在の半導体事情が簡潔にかかれている。 ただ、ロシアのウクライナ侵攻の前までの出来事なのでその地政学が大きく変わっている可能性がある。半導体の地政学は歴史が早く進むためになるべく早く読まないと風化してしまうだろう。
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半導体シリーズ第3弾。 地政学の観点から半導体産業を眺めようと。 地政学なんて謳うもんだから軍事的な内容が濃いのかと思ったけども、著者が日経新聞の記者なだけあって国内経済に寄った内容だった。いずれにせよ勉強になってとてもいい本。 半導体のグローバルサプライチェーンでTSMCが...
半導体シリーズ第3弾。 地政学の観点から半導体産業を眺めようと。 地政学なんて謳うもんだから軍事的な内容が濃いのかと思ったけども、著者が日経新聞の記者なだけあって国内経済に寄った内容だった。いずれにせよ勉強になってとてもいい本。 半導体のグローバルサプライチェーンでTSMCが大っきな要衝になってるのは既に理解してたが、それこそ地政学的な観点からシンガポールやアルメニアも大事になってきてることが知れたのがよかった。 「描く」「つくる」「使う」の3つの視点からサプライチェーンを捉え直すことで、自分の中でも各キープレイヤーの立ち位置がスッと頭に入った。 日本もっとがんばれ
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2021年に出版された半導体に関する世界情勢をまとめた本。 「電子立国日本」などと言われた時代から幾年月、すでに半導体製造を担っているのは、米国や、台湾や、欧州。そして、世界規模での分業化が進んでいる、とのこと。 半導体は、生活のさまざまな場面を支える資源であり、文化的生活を...
2021年に出版された半導体に関する世界情勢をまとめた本。 「電子立国日本」などと言われた時代から幾年月、すでに半導体製造を担っているのは、米国や、台湾や、欧州。そして、世界規模での分業化が進んでいる、とのこと。 半導体は、生活のさまざまな場面を支える資源であり、文化的生活を送るためにも不可欠なものになっている現在、世界レベルでの分業化の危うさを感じました。 私がこの本を読んだのは、2023年になってから。 この本が出たのは2021年。 この本が出たばかりの頃に読んだとしたら、「日本は1番じゃなくなっちゃったのか〜。ちょっとは頑張ってくれないかなー」ぐらいの感想しか持たなかったかもしれない。けれど、昨年に始まったロシアのウクライナ侵攻や、それに対する各国の反応などを聞いていると、技術を手元に用意できない怖さを感じました。 商売だけではなく、安全保障としての技術の蓄積も考える必要があるのだと、とても考えさせられました。
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半導体の産業における重要性は薄らと認識していたが、安全保障面でも重要物質であり、地政学的な側面から解説してくるところに目新しさを感じた。 日本の立ち位置がパッとしないが、製造装置や素材面で優位性があるし、TSMCとの協働研究や熊本への工場誘致など着実に戦略を練っているところは...
半導体の産業における重要性は薄らと認識していたが、安全保障面でも重要物質であり、地政学的な側面から解説してくるところに目新しさを感じた。 日本の立ち位置がパッとしないが、製造装置や素材面で優位性があるし、TSMCとの協働研究や熊本への工場誘致など着実に戦略を練っているところは興味が引かれる。 米国の王者の貫禄、中国の台頭、台湾の技術力と強かさ、欧州のスマートな振る舞い、小国の存在感、日本の巻き返し。それぞれの思惑がひしめき合い、物語が展開されていく。胸熱な読書になりました。
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半導体サプライチェーンのチョークポイントを押さえることが、その国の国力を高め、ひいては防衛力にさえなることが理解できた。そしてその事は台湾が立証しており、この観点から台湾をめぐる米中のかけひきを見ると、国際政治が極めてドライなものであることを痛感する。日本の政治家にこうした発想力...
半導体サプライチェーンのチョークポイントを押さえることが、その国の国力を高め、ひいては防衛力にさえなることが理解できた。そしてその事は台湾が立証しており、この観点から台湾をめぐる米中のかけひきを見ると、国際政治が極めてドライなものであることを痛感する。日本の政治家にこうした発想力や構想力があるのか甚だ心許ないが、著者が提示した日本の再起動へのチャンスに希望を持ちたい。半導体の技術覇権をめぐる国家間の競争を地政学の視点で俯瞰的に解説しているところが極めて秀逸だと思う。私自身の地政学の概念が大きく変わり、読んで良かった。
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