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最後の角川春樹 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2022/01/30

良くも悪くも角川春樹さんの作ってきた本や映画に影響されて育ってきた世代。 角川春樹さんのことは、もちろんメディアを通してしかしらないが、あの一見こわもて、文人らしからぬ風体から、あまり好んで知ろうとは思わずにいた。 しかし、この本を読んで、かなり印象は変わり、その筋を通した生き...

良くも悪くも角川春樹さんの作ってきた本や映画に影響されて育ってきた世代。 角川春樹さんのことは、もちろんメディアを通してしかしらないが、あの一見こわもて、文人らしからぬ風体から、あまり好んで知ろうとは思わずにいた。 しかし、この本を読んで、かなり印象は変わり、その筋を通した生き方には敬服。 見た目で、イメージだけで判断してはいけない、と今更ながら思わされた。 著者の伊藤彰彦さんは角川春樹さんに関する過去の著書、インタビューや関係者の証言など、徹底的に調べ上げていて、まさに博覧強記。 とにかく、角川春樹という人を知るにも、角川春樹が生み出してきた書籍や映画について知るにも、その時代の文化を知るにも、第一級の資料だと思う。 そして、この国のありようもよくわかる。 多くの人に読んで欲しい一冊。

Posted byブクログ

2022/01/28

この前に読んでいたのが文春文庫の正力松太郎の評伝「巨怪伝(上)」であまりの濃厚濃密濃縮っぷりに(下)に行く前に、いったん休憩、とエスケープしたのが本書。出版社にいる友人に、最近、面白かった本として勧められたので手軽に手にした訳なのです。ところがどっこい、本書も相当に波瀾万丈なので...

この前に読んでいたのが文春文庫の正力松太郎の評伝「巨怪伝(上)」であまりの濃厚濃密濃縮っぷりに(下)に行く前に、いったん休憩、とエスケープしたのが本書。出版社にいる友人に、最近、面白かった本として勧められたので手軽に手にした訳なのです。ところがどっこい、本書も相当に波瀾万丈なのでありました。なにしろ、びっくりなのは正力、角川、共通するのは富山をルーツとすること。「越中強盗、加賀こじき、越前の詐欺」という言葉に表される越中出身者の荒ぶるバイタリティも時代は違えども繋がっていました。そして富山の米騒動が角川生家の商売である米問屋をスルーし、警視庁正力は徹底的に弾圧した、という妙な偶然も、それぞれに大衆の欲望との向き合いがそれぞれのビジネスの本質であることを表しているような気もします。いや、正力は置いておいて、角川春樹の人生は、彼が仕掛けた映画を進行形で受け取った世代としては「わかるわかる」と「えーそうだったの」の繰り返しで満喫の一気読みでした。中川右介「角川映画 1976-1986」を読んでいたので下準備は出来ているつもりでしたが、本書の著者の伊藤彰彦のインタビュアーとしての知識の幅と問い掛けの深さは半端なく、角川春樹360°評定決定版みたいな本です。「最後の角川春樹」という書名、正解かも。下世話なネタとして「スローなブギにしてくれ」で南佳孝を起用したのは当時、付き合っていた安井かずみの影響というのも「うわー」だし、映画監督角川春樹と俳人角川春樹を不可分とし、「情念」と「エンターテインメント」の融合による破綻と矛盾を角川映画の本質とする指摘も「うわー」でした。でも一番の「うわー」は裁判と収監の歳月…でした。なんなんだ、この強さとナイーブさは…最後まで大人にならない少年、それが最後の角川春樹なのかもしれません。そんな人物像を引き出した著者は、なんとこれまた名著「映画の奈落ー北陸代理戦争事件」を書いた人と、最後で知りました。

Posted byブクログ

2022/01/09

出版人として稀有な存在であり、映画プロデューサー、監督としても名を馳せた人物、そして俳人としても評価される角川春樹の一代記。ノンフィクション作家への語り下ろし。 角川氏は、ご存じの人も多いと思うが、麻薬の所持などで逮捕、収監されたことのある人物で、毀誉褒貶相半ばするような男である...

出版人として稀有な存在であり、映画プロデューサー、監督としても名を馳せた人物、そして俳人としても評価される角川春樹の一代記。ノンフィクション作家への語り下ろし。 角川氏は、ご存じの人も多いと思うが、麻薬の所持などで逮捕、収監されたことのある人物で、毀誉褒貶相半ばするような男である。 しかし、というか、だからというべきか、この一代記は滅法面白い。 彼がかつて率いたKADOKAWAは、今は出版社の大手で売上、純利益ともに3本の指に入る。しかし、かつてはそうではなかった。講談社、小学館、集英社、文藝春秋などに比べ、とても小さな会社だった。それを、小説の映画化などで大キャンペーンを仕掛けて、ベストセラーを連発。業界の寵児となっていく。 メディアミックスも、文庫に目を引くカバーや帯をつけることも、今ではどこの出版社もやっていることだが、すべて角川氏が始めたことと言っていいだろう。 角川氏の逮捕後、KADOKAWAは弟が引き継ぎ、角川氏とは無縁の会社となった。角川氏は別の会社を作り、そちらも成長させている。 逮捕後は目立たなくなったように感じていたが、さまざまなジャンルの小説を仕掛け、成功させていることがわかる。 法を犯して捕まったことは評価などできないが、その後の働きぶりは評価できる。 書籍の編集者はもちろん、角川映画を見てきた人にも面白い作品だろう。

Posted byブクログ

2022/01/06

敗れざる者出版と映画と俳諧と民俗学のカオス 富山市水橋という原点 「四月八日」は出所の日 少年時代(~二十二歳) 編集者時代(二十二~三十三歳) 映画プロデューサー時代(三十四歳~) 俳人と映画監督の間(四十歳~) 収監そして復帰へ(五十一~六十二歳) 麻薬事件の真相(51歳)...

敗れざる者出版と映画と俳諧と民俗学のカオス 富山市水橋という原点 「四月八日」は出所の日 少年時代(~二十二歳) 編集者時代(二十二~三十三歳) 映画プロデューサー時代(三十四歳~) 俳人と映画監督の間(四十歳~) 収監そして復帰へ(五十一~六十二歳) 麻薬事件の真相(51歳) 最初の収監(51〜52歳) 獄中での屈辱 保釈で出所する(53歳) 出版社「角川春樹事務所」設立(53歳) 監督復帰作『時をかける少女』(55歳) /七畳一間、風呂なしの部屋(56歳) 二度目の獄中生活(59〜62歳) 反省も更正もしなかつた 出所(62歳) 刑務所体験がなければ作らなかつた 瀬島龍三の涙 興行的惨敗と観客の変化 映画と観客の距離を感じた 最後の監督作品 沈黙の10年(67~78歳) 細部に神が宿る 死者を背負って生き 甘美な人生がここにある それでも敗れざる者

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