老人支配国家日本の危機 の商品レビュー
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最初のインタビュー記事がコロナ元年だが、2026年に読んでもエマニュエル・トッドの先見性に驚かされる。ただ、経済活動をロックダウンで規制して老人を守る取り組みに疑問点を抱かれていることに違和感を感じた。コロナ禍については産業が空洞化してマスクさえも作れない先進国の危うさが指摘され...
最初のインタビュー記事がコロナ元年だが、2026年に読んでもエマニュエル・トッドの先見性に驚かされる。ただ、経済活動をロックダウンで規制して老人を守る取り組みに疑問点を抱かれていることに違和感を感じた。コロナ禍については産業が空洞化してマスクさえも作れない先進国の危うさが指摘されていてもっともだ。家族システムによる社会論の総集編となっているので非常に読みやすい。日本がメインテーマとなっているが、日本の核武装と直系家族の弊害としての少子化への対策が示される。核兵器は自国防衛に特化し(核の傘はあり得ない)、戦争をなくす画期的なものとの位置づけだ。核拡散防止の観点からはなかなか難しいテーマだが、核保有国が非保有国に対して脅しをかけてくるシナリオを想定して、その場合にゼロから核保有で対抗するまでのリードタイムや方法などは確立しておくべきだと思う。他国のために核兵器を使うことはあり得ないため、核で脅すなら核を持たざるを得ないぞとの牽制が最低限必要。中国については男女比率の不均衡が異常値を示す点と、一人っ子政策の弊害で超少子高齢化が進んでくるので長期的には脅威にならないとの指摘。世界の工場だが外需・輸出に依存している脆弱性も繰り返さられている。日本の少子化対策として移民の受け入れを提言するが、幅広い階層・国籍で受け入れて(寛容な)同化を進めていく政策が提言されている。ドイツはトルコやシリアなどの移民受け入れが劇的すぎて歪を生じるリスクが指摘されている。エマニュエル・トッドといえば反EUだが、本書でも共通通貨ユーロの導入はフランス最大の失敗としてこき下ろされている。直系家族系の日本やドイツはもともと保護主義なところがあり、何でも安いものを選ぶ欧米と消費嗜好も違っていると紹介される。日本もドイツも品質や産地にこだわる傾向が強いのだそう。EU圏内ではドイツの産業面での優位性によってドイツ以外の国は壊滅的な被害を受けた結果になっており、そもそも自国通貨を持たないのは主権国家としてあり得ないとの指摘。ヨーロッパの事情はなかなか見えてこないので、非常に勉強になる。 日本からはずっと脱線が続くが、最後に日本において直系家族がどのように発展してきたかと、その影響の考察が非常に興味深い。もともと中国では春秋戦国〜三国時代あたりが直系家族の時代で、その後共同体家族に移行した経緯があるそう。権威主義家族関係を倫理化したものが儒教だったと。8世紀に日本も中国に倣って律令制を導入して長子(男子)相続原則を導入したが、実際に直系家族が浸透するのは鎌倉時代以降で関東地方が始まりだった模様のため、中国から渡来したのではなく独自で発達したと考えられる。中国では遊牧民からの外圧もあったが文治主義が多いのに対して日本はずっと軍治主義が続いてきた。そして、現代の日本女性は父系的で男性上位社会にいるため、女性の地位が高い社会出身の男性に惹かれやすいのかもしれない、との指摘。これについて、国際結婚が増加傾向にあるとはいえ、それは単に女性の高等教育が進んでいることが背景であって、女性の地位が低い社会出身との交際も増えているだろうと反論できそうだ。 直系家族は江戸時代を通して増え続け、徳川幕府の安定化に貢献したと考えられるが硬直化の弊害もあるため、明治維新という大きな転換に活躍したのが別の家族システムを持つ南西部(薩長、佐賀、土佐など)だったとの指摘(中性的な核家族システムが影響した可能性)。信憑性はさておき、仮説として色んなことを説明できるので、エマニュエル・トッドの作品は面白い。
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2025/10/23:読了 面白かった。 中国、EU、トランプのアメリカ、アメリカ民主党のことがよくわかる。 2021年の本なのだが、2025年の今、この本に書いてあるような方向に世の中が動いている。 『Ⅱ.アングロサクソンのダイナミクス(83ページ~』は、アメリカの強...
2025/10/23:読了 面白かった。 中国、EU、トランプのアメリカ、アメリカ民主党のことがよくわかる。 2021年の本なのだが、2025年の今、この本に書いてあるような方向に世の中が動いている。 『Ⅱ.アングロサクソンのダイナミクス(83ページ~』は、アメリカの強さを再認識できた。 金融投資をしていて、アメリカがダメだのような情報を目にするが、この本からは、当面アメリカ中心のままというのが納得できる。 日本は、アメリカとともにいく ので大丈夫そう。 『7.それでもトランプは歴史的大統領だった(147ページ)』の以下の記述が印象的 --以下引用 私はむしろ「トランプこそ米国大統領として”歴史に足跡を残す”ことになるだろう」とみています。 トランプは下品で馬鹿げた人物であり、私自身も人として、とても許容できません。しかし、今回再選を果たせなかったとはいえ、過去四年間にすでになされたトランプ政権による”政策転換”が、おそらく”今後三十年の米国のあり方”を方向づけることになる。「保護主義」「孤立主義」「中国との対峙」「欧州からの離脱」
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エマニュエル・トッド氏の本は何冊か読んで、家族構造から人間の価値観や行動を説明するアプローチに感心した。その著者が日本について論じた本ということで興味を持ち手に取った。 日本は伝統的に直系家族であり、日本人は継承が得意な反面、創造的破壊が苦手という性質を持つ。特に、直系家族シス...
エマニュエル・トッド氏の本は何冊か読んで、家族構造から人間の価値観や行動を説明するアプローチに感心した。その著者が日本について論じた本ということで興味を持ち手に取った。 日本は伝統的に直系家族であり、日本人は継承が得意な反面、創造的破壊が苦手という性質を持つ。特に、直系家族システムが完成してしまうと女性差別や権威構造が硬直化してしまい、システムの維持が目的となり自己変革が更に難しくなるという。ここに日本の危機がある。 面白いのは鹿児島のとある地域では、創造的な破壊が自然に受け入れられるような家族を持つところがあるらしい。明治維新での薩摩藩の中心的役割もその文脈で語られていた。規律正しい反面、奔放な一面もあるという両面性が、今後の日本をより強くしなやかな国にするヒントがあるのかもしれない。 単純に、同じ国なのにかなり多様な家族構造が存在していることに驚いた。著者は『家族システムの起源』という本で、その部分をさらに深掘りしているらしい。家族構造が人間の認知や思考に及ぼす影響にパターンがあるとしたら、非常に面白そうである。
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本書において、著者エマニュエル・トッドは、人口学者の立場から日本の少子高齢化の問題を指摘している。彼の主張によれば、日本における人口減少は将来的に大きな課題であるという。コロナ禍の最中に出版された本書では、「自粛生活が全世代の平均寿命にもたらす影響」に焦点を当て、高齢者の健康を...
本書において、著者エマニュエル・トッドは、人口学者の立場から日本の少子高齢化の問題を指摘している。彼の主張によれば、日本における人口減少は将来的に大きな課題であるという。コロナ禍の最中に出版された本書では、「自粛生活が全世代の平均寿命にもたらす影響」に焦点を当て、高齢者の健康を守るために、若者と現役世代の生活が犠牲にされたことが語られている。ここで、トッドは高齢者の死亡率以上に「出生率」の重要性を強調する。 日本の家族構造は、イギリスやアメリカの「絶対核家族」(親の遺言で相続者を指定)やフランスの「平等主義核家族」(平等に分割相続)とは異なり、直系家族(長子相続)を基盤としており、結果として老人尊重の状況を生んでいる。ドイツもまた、直系家族の形態をとっている。現在、日本において家族がすべてを担うという考え方は困難であり、子育てや老人介護などを家族だけで賄うことはできなくなっているとトッドは述べている。こうした家族への過剰な重視は、非婚化や少子化を助長しているため、家族を救うためには公的扶助が必要であると主張する。日本の少子化は、「直系家族の病」とも言えるとトッドはいう。 日本の強みは、直系家族が重視する「世代間継承」「技術・資本の蓄積」「教育水準の高さ」「勤勉さ」「社会的規律」にある。しかし、その完璧さは長所である一方で、短所にもなり得る。今日の日本は、まさにそのようなジレンマに直面している。 さらに、仲間同士で摩擦を起こさない快適さから、移民を受け入れない排外的な社会となっている日本において、出生率を向上させるためには移民の受け入れも必要であるとトッドは指摘する。不完全さや無秩序を受け入れることが今求められている。 また、フリードリヒ・リストの言葉を引用し、すべてを「交換価値」で捉えると『豚を飼育する人々』は生産的であるが、『子供を育てる人々』は非生産的であると述べられている。高齢者を敬うのは良きモラルであるが、「社会としての活力」は「次世代の子供を産み育てる力」にこそ現れるというトッドの見解は、重要な視点である。彼は、日本で少子化問題が話題になったのは30年前であり、その後、日本政府の実際の対策はほとんど講じられていないと指摘する。 日本人は自己を特別な存在と見なし、外国人とは異なる存在と考える差異主義的傾向があり、これが分離や隔離を促進する一因となっている。しかし、日本は外部からの人々を包摂し、同化する能力も有している。日本の社会は古来から舶来物を吸収し、環境の変化に適応してきた。この適応能力こそが日本文化の真髄であり、そのためには外国人を受け入れ、日本文化に同化させることが必要であるとトッドは論じている。 日本の天皇家は直系家族とは異なり、男子長子相続の原則が適用されている。近世の日本においては、婿養子が一般的であったが、天皇家は一貫して婿養子をとらない形を維持してきた。直系家族は鎌倉時代から始まり、江戸時代に広がり、明治政府により「長男相続」が法制化された。家名の存続が血脈の継承よりも重視されてきたのが日本の家族制度である。 ドイツの法体系においてはイトコ婚が認められない一方で、日本では戦後においてイトコ婚の割合が高かった。日本では、第2次大戦直後で、イトコ婚は7.2%あった。戦後の首相で、35人いるが、岸信介、佐藤栄作、菅直人の3人がイトコ婚。イスラムでは、30%がイトコ婚。ドイツでは、イトコ婚を厳しく排除している。このことは、日本の家族システムが社会の閉鎖性や二世政治家の背景となっている要因とも考えられる。タレントの不倫騒動が起こるのも、直系家族の価値観が大きく影響する。 日本では想像できないような婚姻関係がフランスにおいては受け入れられている。マクロン大統領の妻は、家庭を持っていた女教師と教え子。マクロンと出会ったのは、16歳だった。その奥さんは30年連れ添った夫と別れ、24歳年下のマクロンと結婚した。不倫略奪愛、女教師と男子生徒という結婚だった。バッシングがあるものの、大統領として選ばれた。日本の直系家族的価値観が育児と仕事の両立を妨げ、少子化を招いている現状を踏まえ、国家が介入すべきであると強調している。 トッドはまた、トランプを高く評価し、日本がアメリカの核の傘の下にあることは幻想に過ぎないとし、核の保持を提唱している。中国も高齢化と少子化社会に直面しており、成長の見込みがないと警告している。彼の意見は、全く異なる角度からの提言として、日本にとって非常に刺激的で重要なものである。
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タイトルに共感して手に取る。 老害に蝕まれる日本社会についてもっともっとあからさまに非難してくれるかな、と思ったらそうでもなく。 今のフジテレビの問題もまさに根元は老害が原因で起こったことなんだろう。 老兵は死なずただ去り行くのみ。 新陳代謝は大事。 椅子にしがみつかず、かっ...
タイトルに共感して手に取る。 老害に蝕まれる日本社会についてもっともっとあからさまに非難してくれるかな、と思ったらそうでもなく。 今のフジテレビの問題もまさに根元は老害が原因で起こったことなんだろう。 老兵は死なずただ去り行くのみ。 新陳代謝は大事。 椅子にしがみつかず、かっこよく次世代にその席を引き渡して欲しいものだ。
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ユーモアたっぷりで新しい視点を提示してくれる。ヨーロッパ的な見方からすると世界はどう見えるのか? 日本の見え方、あり方は? 面白い。
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著名な人口学者であるエマニュエル・トッドによる著作。 「日本のシルバー・デモクラシーへの言及と提言」 「英米の急速なアンチ・グローバリゼーション的動向」 「ドイツ帝国と化したEU」 「日本の家族形態の系譜」 大きくこの4つのテーマが本書では解説される。 終始軽快な語り口で、内...
著名な人口学者であるエマニュエル・トッドによる著作。 「日本のシルバー・デモクラシーへの言及と提言」 「英米の急速なアンチ・グローバリゼーション的動向」 「ドイツ帝国と化したEU」 「日本の家族形態の系譜」 大きくこの4つのテーマが本書では解説される。 終始軽快な語り口で、内容がよく理解できた。 知らない知識も多くあり、特に第二部の論は新鮮で面白かった。 これは、現在の世界で最も支配的なイデオロギーである「資本主義」「民主主義」はともに英米(アングロサクソン)から出現しており、これらのイデオロギーがもし終焉を迎えるとしたら、それはやはりアングロサクソンからもたらされるだろう、という主張である。 一方、国家間の相違をすべて「家族形態の違い」だけで説明しようとするのは、些か暴論かと思った。 著者曰く、日本人がスクラップ&ビルドを苦手としているのは、日本の伝統的な家族形態が「直系家族」(男子長子が跡取りとなり、結婚した後も父の家に住んで、すべてを相続する。親子関係は権威主義的で、兄弟は不平等)であるからだとする。 対して、英米は「絶対核家族」(子供は早くから親元を離れ、結婚すると独立した世帯を持つ。遺産相続は親の意思による遺言で決定されるため、比較的親子関係は自由)なので、イノベーションの発想に優れるとする。 しかし、ここまで厳密な直系家族は現在の日本では残っておらず、英米のスタイルに近付いている。にも関わらず、この違いだけで国家間のパフォーマンスの差異を説明しようとするのは無理があるだろう。 日本がこの30年間停滞に甘んじているのは、「財政出動が不足しているためにデフレマインドから抜け出せていないこと」と「労働生産性が上がらないこと」の二つが要因である。 本書の論とは外れるので、仔細についてはここでは書かないが、前者は完全なる政治上のミスであり、後者は日本人の怠慢がもたらした結果に過ぎない。 無能で無知であるにも関わらず、勉強しようとも努力しようともしない、有能な者の足を引っ張ることしかできない人間が日本には多過ぎる。 この脱却を試みるにも既得権益と保守権力、老人が阻害するため、改革も遅れるという構造が日本には定着してしまっている。 総括。 本書は原因の考察と解決策の提示に関しては疑問がもたれるものの、「人口動態」を切り口とした各国の分析に優れる。一般論とは異なるが、面白い観点である。 今後の日本の在り方を考える上で参考にしたい一冊。
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いくつかのメッセージをまとめた本だから首尾一貫している訳ではなく、本の題名に合ってないようなものも含まれている。しかしながら特に前半は示唆に富むメッセージが多く、少子化への対応については本当に急がないとこの国はどんどん衰退していくのだろう。 移民の受入れ、同化、教育などは国が先導...
いくつかのメッセージをまとめた本だから首尾一貫している訳ではなく、本の題名に合ってないようなものも含まれている。しかしながら特に前半は示唆に富むメッセージが多く、少子化への対応については本当に急がないとこの国はどんどん衰退していくのだろう。 移民の受入れ、同化、教育などは国が先導してやらなくちゃいけないこと。カネを配るよりも先に、である。目指すべきは自国通貨が高くなるような施策であり、それだけお金を払ってでも行きたい、そこで働きたい、と思わせる国づくりだろう。簡単ではないだろうが、目指すべきだ。
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タイトル詐欺。編集社の会議で最悪のタイトル案と最悪のサブタイトル案が進んでいく様を見たかった。 人口学者の著者が、長男一人が財産を相続する直系社会である日本やドイツ、兄弟で平等に相続するアングロサクソン国の違いを結構しつこく語る。タイトルに反して日本にかなり好意的でリベラルを自...
タイトル詐欺。編集社の会議で最悪のタイトル案と最悪のサブタイトル案が進んでいく様を見たかった。 人口学者の著者が、長男一人が財産を相続する直系社会である日本やドイツ、兄弟で平等に相続するアングロサクソン国の違いを結構しつこく語る。タイトルに反して日本にかなり好意的でリベラルを自称する著者が日本に核武装を勧めるところは面白い。日本国内の左翼の主張では絶対にありえない。 今後、ネオリベラリズムの限界が見えてきて、世界がどう落ち着くのか、もしかしたらフランス革命から始まる民主主義の終わりに立ち会ってるのかもとか考えてしまう。
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