彼は早稲田で死んだ の商品レビュー
昭和、1960.70年代の学生運動に興味ある方はとうぞ。 今の大学(大学生)からは想像できない時代でしょう。
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1970年代に全国の大学で学生紛争が起きた事は知っていたが、その後の早稲田でこんな事が起きていたのは知らなかった。現代の早稲田大生にインタビューしても、知っている人は皆無だったという。暴力にさらされた生活が紛争下の国ではなく国内の有名大学の日常だった事、そしてそれが半世紀後の世の...
1970年代に全国の大学で学生紛争が起きた事は知っていたが、その後の早稲田でこんな事が起きていたのは知らなかった。現代の早稲田大生にインタビューしても、知っている人は皆無だったという。暴力にさらされた生活が紛争下の国ではなく国内の有名大学の日常だった事、そしてそれが半世紀後の世の中では忘れられている事に驚く。 著者が伝えたかった事を、もう一度考えてみたい。
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学生運動の名の下、大学キャンパスを暴力が支配し、殺人まで行われていたという事実。今からは想像できないが、そのような時代が確かにあったという現実。日本人だけではないかもしれないが、集団心理状態における人間の残虐性。 最後の対談で語られた、「その場だけ見れば、寛容は不寛容にかなわな...
学生運動の名の下、大学キャンパスを暴力が支配し、殺人まで行われていたという事実。今からは想像できないが、そのような時代が確かにあったという現実。日本人だけではないかもしれないが、集団心理状態における人間の残虐性。 最後の対談で語られた、「その場だけ見れば、寛容は不寛容にかなわない。絶対的に劣勢である。」という言葉は、まさに今の中国の対外強行路線が表す通り、短期的には真実であると思う。その後に続く「それを押し返す力が本来、人間には備わっている。人間の本質は寛容である。人間は寛容の方向に進化してきた」。これが真実かどうかは良く分からない。 作者が最後に書いた「不寛容に対して我々はどう寛容で闘い得るのか」は、非常に難しい問いかけだと思う。
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私もまさに早稲田出身でありながら「何も知らない」学生でした。2009年に早稲田大学に入学した私もまさにこの事件が起きた文学部キャンパスに毎日通っていたのです。 しかしそのような事件があったことは全く知りませんでした。この時点ですでに私は大きなショックを受けたのですが、その後、「約半世紀前、東京の真ん中に、キャンパスが暴力によって支配された大学があった」という一節を読み、さらに驚くことになりました。 この本の衝撃は一生忘れられません。 各大学の学生運動が熾烈であったことはわかっていたつもりだったが、長期間にわたってセクトと無関係の学生達まで暴力支配していたというのはショッキングな事実であった。しかもそれが私も通っていたあのキャンパスで行われていたという・・・
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理想や希望を掲げることで見えなくなること…今の時代も世界各地で起きていることと通じている気がする。 その反面この時代にあって今は失くしてしまった熱気みたいなものも、描かれていたように感じた。 最後の元革マル派幹部の方との対談は、この方の本も読んでいたため驚きとともに、とても興...
理想や希望を掲げることで見えなくなること…今の時代も世界各地で起きていることと通じている気がする。 その反面この時代にあって今は失くしてしまった熱気みたいなものも、描かれていたように感じた。 最後の元革マル派幹部の方との対談は、この方の本も読んでいたため驚きとともに、とても興味深く読めた。 二人の温度差も感じたが、「理屈で判断しようとすると嘘になる」というくだりは身に沁みこむように自分に入ってきた。 ひとは、誰かの過去にどれだけ寛容になれるのだろう… 亡くなられた方の無念を忘れずにいられるのだろうか…
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メインは著者の入学した1972年から1973年にかけたほぼ時系列の記述で、朝日新聞入社後のことに一章、約半世紀を経た、曾ての対立者との対話に一章ずつ。安定した文章で読み易い。 この本を読むに当たっては、当時は今よりずっと日常に暴力が瀰漫していて、ヤクザ映画などはそれを支える心象を...
メインは著者の入学した1972年から1973年にかけたほぼ時系列の記述で、朝日新聞入社後のことに一章、約半世紀を経た、曾ての対立者との対話に一章ずつ。安定した文章で読み易い。 この本を読むに当たっては、当時は今よりずっと日常に暴力が瀰漫していて、ヤクザ映画などはそれを支える心象を作っていただろうことを念頭に置く必要があるだろう。今の感覚で捉えると、なぜこうも内ゲバが激しくなるか理解できないのではないか。そんな中非暴力の方針を貫いた著者は、挫折したとはいえ筋を通していると思った。
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私が生まれる前の話で、大学紛争は聞いたことあるし連合赤軍事件も漫画で読んだけど、早稲田大学が戦場のようになってたことは知らなかった。 思想とか闘争なんて当時の若者の”ファッション”としか思えないけど、当時を生きた人はそこに”パッション”があったんだろう。
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学生運動時代がどれほど激しかったのかを想像することができた。 事件を起こした団体と、早稲田大学の当局との間で、1997年頃まで癒着が続いていたということにも驚いた。 権力と自由と暴力についていろいろ考えさせられる。 また、最終章の、著者と元革マル派の人との対談も興味深かった。 ...
学生運動時代がどれほど激しかったのかを想像することができた。 事件を起こした団体と、早稲田大学の当局との間で、1997年頃まで癒着が続いていたということにも驚いた。 権力と自由と暴力についていろいろ考えさせられる。 また、最終章の、著者と元革マル派の人との対談も興味深かった。 同じ時代を、同じ空間で過ごしてきた人間同士であっても、見方、捉え方、未来への影響が違うというところに、人間社会の難しさを感じた。 と同時に、対面での対話によって、相手を理解しようとするお二人の心の動きが読み取れた。 事件から時間が経過したからこその対談だからだろうけれど、暴力では決して生まれることのできないものを見ることができた。
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暖かい太陽であれ。 2022年8月のポリタスTVにご出演の樋田さんの渾身の、ルポ。帯に渾身のルポと書いてある、もうそれしかない。単刀直入な書名、それしかない、樋田さんの強い気持ちがこもる。 ポリタスTV では、統一教会元幹部との取材内容が語られ衝撃だった。その番組で知った本書では、第七章 半世紀を経ての対話 大岩圭之助=辻信一氏との対談が衝撃だった。鶴見俊輔氏のお名前、交流も対談の中にあり、からに衝撃。 一貫して、筋が通っている樋田毅さんの、真摯で内省的でフェアで緻密、正確な文章なので、こちらも丁寧に読む。が、50ページぐらいから、涙が目の淵に湧いてきて、しらっちゃけた気持ち(と、樋田氏の寛容さに脱帽だが)大岩対談部分以外は、涙を拭きながらの読書。 マングローブなど、学生運動華やかな頃ではない時代のことも読んではいたので大きな驚きはないが、しかし1997年まで大学側は早稲田祭や自治会費などの資金を渡していたとは。1997年とは。 一貫して語られ行動される寛容、非暴力、正義。時に不屈になりきれない。激しい暴力も裏切りもある。 樋田氏いわく 寛容な心は、社会に蔓延る不寛容を鋭く見抜き、寛容であれも粘り強く働きかけるこころの持ち方である、と。 イソップ童話の、旅人の衣服を剥ぎ取る北風ではなく、人間の善性を信じる暖かい太陽な心だと私は思うと。 正しさに固執するあまり北風になり不寛容になり人より偉そうにしていないか、常に点検が必要だと痛感。と共に、今ほどに、さらになお、どんどん、不寛容不誠実な人たち(権力持つもの)、システム等に追いやれて、なおもは寛容な心を持ち続けることの大変さに、最後に引用される、1973年文学部キャンパスに密かに配布された[立ち竦む君に]というタイトル、呼びかけ。大きな主語ではない、一人ひとりの立ち竦む私たちに、小さな勇気をと呼びかける。答えなければいけないと思う、立ち竦みながらも。 装丁も美しく、当時を知る、川口君を知る大学生だった方には本の姿だけでも感慨深いものではないかとお察しする。
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1972年、学生運動の激しい早稲田大学内、一人の学生がリンチにより殺される事件。トラウマを背負った元新聞記者が振り返る時代の記憶。 ここまで学生運動と内ゲバが激しいものだとは知らなかった。革マル派や中核派。名前ぐらいは聞いたことはあったが、学内でかくも壮絶な抗争をしていたとは。...
1972年、学生運動の激しい早稲田大学内、一人の学生がリンチにより殺される事件。トラウマを背負った元新聞記者が振り返る時代の記憶。 ここまで学生運動と内ゲバが激しいものだとは知らなかった。革マル派や中核派。名前ぐらいは聞いたことはあったが、学内でかくも壮絶な抗争をしていたとは。 革マル派の資金源となる自治費の徴収と早稲田祭の運営。こちらがようやく全廃されたのはなんと1997年だという。 当時の空気を吸った者にしか分からないだろう時代の雰囲気を、生涯をかけて描こうとする筆者の信念が素晴らしい。
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