ビタートラップ の商品レビュー

月村了衛(著者)

2024/06/15

中国のハニートラップに掛かった農水省公務員の並木は、小心者で疑り深いくせに流されるままにトラブルに巻き込まれていく。
不甲斐ない並木の疑い深さと保身に走る様は、ハニートラップを仕掛けた中国からの留学生慧琳の方に読者は感情移入してしまう。
中国情報院と公安警察の綱引きが面白く、どのような結末があるのか？と読み進めた。
最後の水戸黄門的に見事な結末は、納得の大団円でした。

2023/09/23

農林水産省に勤める並木は、交際相手の中国人留学生・慧琳から驚愕の事実を打ち明けられる。彼女は中国政府から指示され、並木に近づいたハニートラップ要員なのだという。慧琳に懇願され、それまでどおり何事もないかのような生活を続ける並木だったが、やがては日本の公安警察からの接触もあり、窮地に立たされる。自ら秘密を打ち明けた慧琳を信じても良いのか、そして自らの感情をどうするべきなのか。恋愛要素も絡んだ謀略サスペンスです。
他の謀略サスペンスに比べると、地味な印象があります。アクションもないし、機密といってもあまり切実な感じがしないので、差し迫った危機という感じもしなくて。だけれど日常の中で疑心暗鬼と保身にじわじわと追い詰められていく様子がスリリングでした。そして端から慧琳のことを単なる遊び相手としか捉えていなかった並木と、任務で近づいたものの並木のことが本気で好きになったという慧琳の仲がどうなるのか。その部分も読みどころです。

2024/05/12

誰を信じればよいのか。

欺瞞に満ちたこの世の
中で、

信じてよいのは己だけ
かも。

とはいえ、まああまり
頑なにならず、

ときに片目をつむって
騙されてみるのも、

そう悪くないかもしれ
ません。

2023/04/29

※
人、国、性別、生い立ちの違う人たちが、
生きてゆく過程で徐々に積み上げて行く
数多くの偏見。

そんな偏見を深く掘り下げ、直視し、
偏った思い込みを持つ自分を認め、
その上で新しい価値観を築いてゆく物語。

ハニートラップに嵌められた主人公と
国に命じられて仕掛ける側に立った彼女が
悩み抜いた末に辿り着いた結末が、希望に
繋がるものであることを願ってなりません。

2023/04/19

　農林水産省の役人に接触した中国の女性スパイ、その二人がやがて恋に陥ってしまう話。月村了衛「ビタートラップ」、2021.11発行。テンポがやや悪く、著者の作品にしてはドキドキ・ハラハラもおとなしめです。どう収束させるのか結末が心配でしたが、小説ならではの秘策を準備されていましたｗ。一応、楽しめる作品だと思います。

2023/02/02

2023-11硬く暗いストーリーばかりと思ってたら、こんな洒脱でオシャレな作品も行けるんですね。まあうまく行きすぎの感がするけど、他人を落としたり正義を振り翳す社会にあってこういうホッとするのが良いね。歳を取っただけかもしれないけど。

2022/10/26

'22年10月26日、Amazon audibleで、聴き終えました。月村了衛さんの小説、初体験です。

なかなかに面白かったです。

テーマ的には割と重めかな、と思えて、もっと重厚な小説を想像していましたが…思っていたよりは軽めかな、と。その軽さみたいなものが、この小説の魅力なのかな、と感じました。この設定で、ドシッとした小説だと…なんだかイヤミスになってしまいそうಥ⁠‿⁠ಥ

主人公、並木のなんだか頼りない、フワッとした感じが、本作の「軽さ」みたいなものを表しているようで、その主人公の弱さ（？）も、僕にとっては魅力的でした。

「オススメ」にあがっていたので聴いてみましたが…月村了衛さんに、興味を持ちました。他の作品も、聴いてみたいです。

2022/04/24

中国人のハニートラップに嵌る農水省の役人の物語。

最近の著者の傾向からして、もっと硬派なサスペンス物を期待していたのですが、案件もあっさり解決してしまって残念です。
ハニートラップを仕掛けられた理由も、その周到さにしては大したことが無かったというのは納得しがたいです。
ただ、寂しい男が中国人のハニートラップに嵌る気持ちはわからないでもないです。

2022/04/21

ひどかった。浅い…
最後なんて、ベタすぎる。
唐突に伊那市が出てきてびっくりしたが、
旅館なんてないよ！
そもそも新幹線ではいけないよ！
ちゃんと調べて書こうね。

2022/03/19

これまでの月村了衞作品と異なり軽快。小市民、並木の必死な言動描写が他人とは思えず親しみを感じた。並木と慧琳のハッピーエンドにどこか欺瞞を抱くような読後感である。