送別の餃子 の商品レビュー
民族音楽を学んでいた著者が、1987年以来、30年以上ものあいだ中国の農村や都市に滞在し、研究のためのフィールドワークを通して出会った現地の人たちとの交流の記憶。 中国人の先生から中国語を習っており、先生から見聞きする中国。 中国ドラマから垣間見る中国の農村と都市の格差。 小説...
民族音楽を学んでいた著者が、1987年以来、30年以上ものあいだ中国の農村や都市に滞在し、研究のためのフィールドワークを通して出会った現地の人たちとの交流の記憶。 中国人の先生から中国語を習っており、先生から見聞きする中国。 中国ドラマから垣間見る中国の農村と都市の格差。 小説から知る文化大革命前後の中国の様子。 そこから想像しつつ、著者の 「中国農村での、あるときは身を震わせて怒り、またあるときは涙を滂沱と流した日々。」 はどんなに大変なことがたくさんあっただろうと思います。 それでも、人と人の出会いから得る心温まる体験、思い出、それは本当にかけがえがないもので、読んでいる私まで心が温かくなったり、嬉しくなったりしました。 村から村へ楽器を持って巡業する語り物芸人からの言葉。 「哪行都辛苦(どんな仕事も苦しいものだ)!あなたが遠い異国からここにやってきたのだって苦しいことだろう。」 そして、 「ぬかるんだ道を、でこぼこの道をそれでも道がある限り、命がある限り進みつづける、どこにも楽な道などない、という彼のことばは三十年が過ぎた今も、寒い夜空の彼方からふいに舞い落ちる一片の雪のように私に届く。」 という著者の言葉が私の心に力をくれます。 「想像力」 相手の背景や生活を知ること。自分の生きている価値観では想像の及ばない生活やその立場になって気持ちを想像することの大切さ。 私も改めて「想像力」の大切さを思いました。 今、言語学習を通じて、また読書を通じて、相手の思考や文化、自分との違いを知ろうとしている日々は、自分の心を少しずつ成長させられているように感じています。 また、この本の装丁がとっても素敵で、帯を外して、眺めても楽しく、触れても楽しい。
Posted by
テーマと内容はとてもおもしろいのだ、が、なんだか、もう少しでもっとおもしろくなりそうな感じがするのはなんなのだろう。
Posted by
中国の各地をフィールドワークした筆者の、そこで出会った人について述べたエッセイ。中国の、特に農村部となると訪れる日本人もほとんどいないので、その実体験はとても興味深かった。沿岸部ならともかく黄土高原のような内陸部にまでなると、行き来や食事、衛生面の苦労は日本とは比較にならないのに...
中国の各地をフィールドワークした筆者の、そこで出会った人について述べたエッセイ。中国の、特に農村部となると訪れる日本人もほとんどいないので、その実体験はとても興味深かった。沿岸部ならともかく黄土高原のような内陸部にまでなると、行き来や食事、衛生面の苦労は日本とは比較にならないのに、研究のために訪れ、そこを生き延びた筆者のバイタリティには畏れ入る。
Posted by
文化人類学系の本なので身構えながら読み始めたら、最初から面白い!エピソードが強い! 中国人のことを私は「明るくてやさしい」と思ってきたけど、著者によれば「やさしい」という言葉は中国には不要な概念だそうだ。 病院の描写はどれもおどろおどろしく、よっぽど心細かったのだろう。 対して食...
文化人類学系の本なので身構えながら読み始めたら、最初から面白い!エピソードが強い! 中国人のことを私は「明るくてやさしい」と思ってきたけど、著者によれば「やさしい」という言葉は中国には不要な概念だそうだ。 病院の描写はどれもおどろおどろしく、よっぽど心細かったのだろう。 対して食事の描写は感動が溢れていて、日本の食事は彼らには不満だろうとあるのも、日本人はなかなか言わない事で面白かった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ブクログのタイムラインで流れてきて印象的なタイトルに惹かれて読んだ。学者の著者が中国でフィールドワークしているあいだに遭遇した中国人との思い出が綴られていて興味深い。また今すぐ会いたい、会えるわけでもないけど、自分の人生の中で通り過ぎた人たちに関する思い出話は個人的にとても好き。そして本著はそれの詰め合わせであり最高なのであった。 一番オモシロかったのは著者が1980年代に中国の農村でフィールドワークしていた頃の話。今のように中国が豊かになる前で、80年代でこんな生活レベルだったのか?と驚く話の連続だった。そんな貧しい生活の中に根付く音楽をひたむきに調査している著者と現地の人々のやりとりは心温まるものが多い。今のように世界で戦争が起こっている中だと人間不信がうっすら社会に蔓延していくよなぁと最近考えていた。しかし著者が冒頭で宣言している通り、国がどうこうというのは超えてあくまで人同士の関係なのだと思えて心の平穏を取り戻せた。(ゆえに特定の国に対して誰彼問わずヘイトを飛ばしている人間には中指を) 知らなくて興味深かったのは、中国語では日本語における「やさしい」に該当する言葉がないということ。生存するのが厳しい環境だったからこそ曖昧な概念を許さないがゆえらしい。しかしそれは逆をかえすと中途半端な「やさしさ」は存在せず困っている人がいたらすぐに助ける、そういった直接性は健康的だし社会としては生きやすいだろうと思えた。(功利主義ゆえなのかもしれないけど) 本の装丁や挿絵も本著の大きな特徴。絵は味があって文字だけでなかなか伝わらない中国の文化が直接伝わってきて良かった。背表紙が餃子の皮で包まれているのもかわいい。インデペンデントな出版社だからこそできるフットワークと懐の深さが産んだ本だと思うので他の本も読んでみたい。
Posted by
中国の農村でのフィールドワーク。そこで出会った忘れられない人たち。 なんだかとてもうらやましかった。誰でもが簡単には行けない辺境の地に行って、いろいろな人と出会い、調査する。それが仕事であること。なんと自分は狭い世界で生きてきたのか。そういう感想を持つために書かれたものではないと...
中国の農村でのフィールドワーク。そこで出会った忘れられない人たち。 なんだかとてもうらやましかった。誰でもが簡単には行けない辺境の地に行って、いろいろな人と出会い、調査する。それが仕事であること。なんと自分は狭い世界で生きてきたのか。そういう感想を持つために書かれたものではないと思うが、そう感じてしまったのだから仕方がない。 著者の目を通して描かれた中国の農村の人はとても魅力的だった。欠点もまた魅力的で、それは著者の目を通したからこそであろう。距離も時代も遠いのだが、まるでそこに自分もいるかのように楽しんだり困ったりした。
Posted by
- 1