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味の台湾 の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2022/03/12

中華の食の華やかな多彩と深い文化を伝える『中国くいしんぼう辞典』も楽しかったが、台湾の詩人の手になるこちらは、この国の複雑な歴史と、また著者の亡き妻への想いをからめて綴られており、そこはかとなく漂う哀しみや苦みが全体を引き締め、格調すら与えているようだ。 ああしかし、調理と美味を...

中華の食の華やかな多彩と深い文化を伝える『中国くいしんぼう辞典』も楽しかったが、台湾の詩人の手になるこちらは、この国の複雑な歴史と、また著者の亡き妻への想いをからめて綴られており、そこはかとなく漂う哀しみや苦みが全体を引き締め、格調すら与えているようだ。 ああしかし、調理と美味を表現する言葉の広さ豊かさ! チマキを縛るには「まるで初恋の相手の手を握るように、柔らかく、だがしっかりとしめていく」。 豚スペアリブのスープから出汁の生姜や葱は捨て、「ただ大根だけが残って、明星が月に寄り添うように、白く清らかに姿を現すのだ」。 少食のくいしんぼというタチの悪い食い手の私ですが、こんなふうに食を表せたらなあ。 いやいや、美味を追うだけの書物ではないですよ。  米干(幅広の米麺)が雲南に根づく事情を探れば過去の内戦に行きつき、夜市の栄枯盛衰を見れば発展する台湾が捨てていかざるをえない風情への嘆きを感じる。 そしてそして、出会った頃の妻と食べたスナック、岳母の絶品の手料理、子育ての食事の思い出、妻の看病を支えた味、そして、彼女を偲びつつ食べるもの…亡き人への食を通じたラブレターでもあって心に迫る。 何を食べたかじゃない、誰と食べたかだとは言いますが、大切な人と一緒にする食事をより丁寧に味わい大切にしていきたいと思えたのでした。

Posted byブクログ

2022/02/20

いまハマっちゃっているTV番組「オモウマい店」で取り上げているテーマ(?)のひとつに「店名に『味の〜』が付く店は名店が多い!」というものがあります。本著「味の台湾」も美味しい本なのでは、と期待でページを開きました。目次にある漢字だらけの60ものメニューに海外のレストランで何をオー...

いまハマっちゃっているTV番組「オモウマい店」で取り上げているテーマ(?)のひとつに「店名に『味の〜』が付く店は名店が多い!」というものがあります。本著「味の台湾」も美味しい本なのでは、と期待でページを開きました。目次にある漢字だらけの60ものメニューに海外のレストランで何をオーダーしていいのか、という不安と同じ拒絶感を一緒、抱きますが一個一個は、実は食べたことがある料理、なんとなく知っている料理で、実は台湾料理って日本の味覚にも入り込んでいるのを感じました。いわゆる中華料理よりも台湾料理はヘルシーで食べやすいってこと、胃袋が思い出させてくれました。本著にも出来てますが日本統治時代の影響もあるだろうし、また戦後の日台関係による日本国内での存在感もあるだろうし。前に読んだ「中国料理の世界史」で中国料理のローカル化という切り口に出会いましたが、文化大革命で中国本土で消え去った調理文化が台湾に流れ込んだというのも改めて料理と近代史の関係の側面なのでありました。そう、この本は台湾という島国のナショナルアイデンティティの物語なのです。そして、同時に著者の子どもの時から今に至る自我形成の物語でもあります。最初は料理の話に挿入されるエピソードぐらいな感じで受け止めていましたが、中盤、後半に進むにつれ著者の人生そのものものが本書の主食材なのだ、と思い知りました。一貫して、食材の新鮮さと作る人の工夫と誠意を料理に見出す著者の視点は、彼の人生観でもあるようです。なにげない美味しいひとときの積み重ねがかけがえのないものであることを感じます。もしかしてそれが、台湾人の特質であり中国から距離を置きたいメンタリティーなのかもしれません。中国が台湾を飲み込んだら、台湾料理はどうなるのだろう?

Posted byブクログ