あの春がゆき この夏がきて の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今月は、乙川優三郎さんに凝っていますw。乙川優三郎さん、時代物から入りましたが、近年は現代物のようで。女性が主人公の場合、凛とした女性が多いと思っています。男性の場合はいかがでしょう(^-^) 「あの春がゆき この夏が来きて」、2021.10発行。出版社に勤務、絵描きと文筆に造詣があり、バーのオーナーに転身するも、装幀の魅力に舞い戻る神木(こうのぎ)久志を描いた作品です。後半にいくほど、味わい深く感じました。
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現代を描いているかと思いきや、戦後の浮浪経験のある人が壮年として生きてきた時代。 男女の機微については、共感し難い部分も多いが、芸術についての文章が多く、作家の思考に触れる感じがいい。
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芸術と女性を愛した男の人生…というと小説にはなるが、少し寂しい人生かな。無理無理お話作りの為としか思えない出会いも乙川さんらしくない。ただ、あちこちから文学の香りは立ち上る。「生きるって事は誰かのために貴重な時間を犠牲にすること」矛盾だらけの世の中だからこそ、犠牲と思う暇もない充...
芸術と女性を愛した男の人生…というと小説にはなるが、少し寂しい人生かな。無理無理お話作りの為としか思えない出会いも乙川さんらしくない。ただ、あちこちから文学の香りは立ち上る。「生きるって事は誰かのために貴重な時間を犠牲にすること」矛盾だらけの世の中だからこそ、犠牲と思う暇もない充実した時間を過ごしたいもの。読了後、表紙見返す。マリエさんなのか?NO MORE BLUESどういう意味?今まで気にしなかった部分にも目が吸い寄せられ、スッキリしないモヤモヤも。
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過去、現在、未来 → すべてつながっているが、過去の不幸は現在の不幸でも未来の不幸でもない。現在の不幸は今現在作り続けている不幸であり、未来の不幸は悩み続けているからの不幸であるから。 どこか納得させられました〜
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言葉を、表現を、そして神木の人生を、しっかりと味わった。劇的なものはないかもしれないが、それは仕方の無いこと。憧れはないが、こんなにふうに成し遂げられないままで終わるのも本当の人生だな。
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主人公が装幀を職業にしているので、自然、この本のそれにも目がいくのだが、そうでなくても美しいなと思う。この人の本は結構、そういうものが多いな。これもそうだしこれまでも大体、図書館で借りてすましてしまったが、やはり気に入った装幀の本は買い求めよう、買い求められるうちに。 それはそ...
主人公が装幀を職業にしているので、自然、この本のそれにも目がいくのだが、そうでなくても美しいなと思う。この人の本は結構、そういうものが多いな。これもそうだしこれまでも大体、図書館で借りてすましてしまったが、やはり気に入った装幀の本は買い求めよう、買い求められるうちに。 それはそうと、話はやはり、期待に違わず、むしろこれまでと違って、今の自分が、もう一度、何か食べずに身体を壊してもそれをよしとできる何かを見つけ、そしてそれに情熱を込めて、自身がこの世に生まれて、そして生かされてきたのはなぜなのか、それはこれなんだとみえる最期を迎えられるといいなと、しみじみ感じることができた。 いい日曜日だったな。 平凡な人間に見えながら実は熟していく人がいるように パリだけがフランスではないように、東京だけが日本でもない。私はこの歳になって静かな暮らしを愉しめるようになった、人にはその人に向いている土地というのがあるのかもしれないな、そこへ行き着くためにいろいろやって生きてきたような気さえする。
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乙川氏の髄ともいえる文、そして選びつくされた言葉が並ぶ。 黄昏期に立つ男女の機微を主人公の語り手神木の言葉で紡いでいく。しかし、このくらい嫌な男はいないだろうと言うのが正直な感想・・ほとほと嫌悪感で充満した。 だから読書っていいんだなとも思う・・好きな人とだけ、好きな時間を生き...
乙川氏の髄ともいえる文、そして選びつくされた言葉が並ぶ。 黄昏期に立つ男女の機微を主人公の語り手神木の言葉で紡いでいく。しかし、このくらい嫌な男はいないだろうと言うのが正直な感想・・ほとほと嫌悪感で充満した。 だから読書っていいんだなとも思う・・好きな人とだけ、好きな時間を生きていた結末の空虚さを逆に考えさせられる。 画家であり、装丁家である神木・・どこまで乙川氏が乗り移っているのかと思ったり、上期がこの作品を想定したとも思ったり。ブルー―を基調とした色彩に俯く肌を見せる女性。 神木が好む女性~乙川氏が好む女性をかいま感じたり。。。 同じ語彙の日本語でも「この言葉」を選んだ乙川氏だからこそ、好き嫌いが大きく出そうな感想を持った
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画家として、装丁家として、ひたすらに美を追い求め闘い続けた男の生き様を、その歳々にすれ違い、情を交わした女たちとの水のような関わり通じて描き出す8つの物語。 まず本の装丁が美しいの一言。開かずに表紙を眺めているだけでうっとりする。乙川さんの作品はいつも装丁が一つの美術品のようだ...
画家として、装丁家として、ひたすらに美を追い求め闘い続けた男の生き様を、その歳々にすれ違い、情を交わした女たちとの水のような関わり通じて描き出す8つの物語。 まず本の装丁が美しいの一言。開かずに表紙を眺めているだけでうっとりする。乙川さんの作品はいつも装丁が一つの美術品のようだけれど、今回は特に好き。 その作者の装丁への想いがこの物語の主人公である装丁家・神木の言葉によって十分に描かれている。 売るために目立たせるだけの商業的な装丁に抗い、会社を辞めた神木が語る装丁への思い。それは多分、作者のこだわりそのものなんだろう。 だからこそそんな乙川さんの本はこんなにも美しいんだなと納得。 作者の言葉は相変わらずどこを切り取っても美しく、情景が浮かび上がり、温度や湿度、匂いまでもが感じられるような心地よさ。 男と女の情は、抑えた中にも熾火のような熱量を感じて哀切を帯び、静かに心を満たしていく。 「夏仔」は切なく、その20年後の2人描いた表題作もまた哀しい余韻を残す。神木が、最後に追い求めた美を見つけたことが希望の光となって読後を照らす。 美しい物語でした。
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