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犬神家の戸籍 の商品レビュー

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13件のお客様レビュー

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2022/01/12

著者は戸籍関係についての著書多数。 明治民法から新民法への遷移の解説に「犬神家」を切り口とした着眼は面白い。 明治民法での「男尊女卑」を強調するが、当時としては特段我が国特有の状況でもなかったのではないか。 戸籍の存在は必須でなく、現在においては無戸籍者も特段不自由なく生活...

著者は戸籍関係についての著書多数。 明治民法から新民法への遷移の解説に「犬神家」を切り口とした着眼は面白い。 明治民法での「男尊女卑」を強調するが、当時としては特段我が国特有の状況でもなかったのではないか。 戸籍の存在は必須でなく、現在においては無戸籍者も特段不自由なく生活できるという説明と「トリカゴ」での描写との乖離に戸惑いを覚える。実態はどちらなのか。 著者の主張は戸籍不要論、夫婦別姓につながるようで、大学教員特有の「リベラル」臭を感じるのは偏見だろうか。

Posted byブクログ

2021/12/19

横溝正史ブーム時代に少年期を過ごしたので『犬神家の一族』には思い入れがある。朝日新聞の書評で紹介されていたので手に入れてみた。 読んで分かったのは日本の戸籍制度についてまったく無知だったこと。今も残る「戸籍」についてもなんの感慨もなかった。パスポートを取得する時に必要、くらいの...

横溝正史ブーム時代に少年期を過ごしたので『犬神家の一族』には思い入れがある。朝日新聞の書評で紹介されていたので手に入れてみた。 読んで分かったのは日本の戸籍制度についてまったく無知だったこと。今も残る「戸籍」についてもなんの感慨もなかった。パスポートを取得する時に必要、くらいの認識。 しかしこの戸籍の存在とその根本にある思想が、天皇制や身分差別と繋がり、現在も解決されない夫婦別姓や同性婚などの弊害となっているのだ。 犬神家の人々の関係性を通して嫡子、諸子、養子などの定義(旧民法と新民法で定義が異なったりする)が説明される。 横溝正史がなぜドロドロした家族の関係を書き続けたのかにも言及。 何回作品を観たり原作を読んだりしてもすべての関係性を理解できなかったのだが、本書でやっと理解できた気がする。 しかしウチの親も、近親相姦やら男色やらが混在する横溝正史ドラマを小学生が観るのをよく許していたもんだ。 こう書いていて思い出したが父親だったかに「犬神佐兵衛と神主(育ての親)はホモ関係(どう表現したかは忘れたけど)なの?」と質問した気がする。 嫌な子供だな。

Posted byブクログ

2021/10/18

 "戸籍"を切り口に、日本社会の在りようを分析してきた著者が今回取り上げたのは、あの「犬神家の一族」。  角川映画の『犬神家の一族』公開と、横溝正史作品の続々たる文庫化による空前のブームを、ほぼ同時代で経験していたので、どのような内容なのか興味を惹かれて手に取...

 "戸籍"を切り口に、日本社会の在りようを分析してきた著者が今回取り上げたのは、あの「犬神家の一族」。  角川映画の『犬神家の一族』公開と、横溝正史作品の続々たる文庫化による空前のブームを、ほぼ同時代で経験していたので、どのような内容なのか興味を惹かれて手に取った。  犬神家当主、犬神佐兵衛。実に懐かしい名前だし、この名前を聞いただけで、一代の成り上がり者のイメージが浮かぶ。観てから読んだか、読んでから観たかはもう定かでないが、他のミステリーはほぼ細かな筋立ては忘れてしまったのに、こと犬神家に関しては、かなり詳細に登場人物や内容を覚えている。  だから本書を読みながら、「ああ、そうだった」、「そういうことだったのか」とスンナリ入っていけた。  敗戦後、日本社会が大きな変化の真っ只中にあった時代が本作の舞台となる。"一族"というだけに、親族・相続制度がどのように組み立てられていたのか、また戸籍制度において、具体的にどのような取扱いがなされていたか、について様々な角度から論じられる。  旧民法の「家」制度の法令上の仕組みについて詳しくは知らなかったので、孤児や棄児の無戸籍の場合の処理方法、家長の地位と家督相続、一夫一婦制における妾の存在、婚外子の戸籍表示、婿養子縁組と入夫婚姻の違い、戦争が戸籍に及ぼした影響等々について、犬神家を巡る具体的な続柄、人間関係を素材にして、多くの学びを得ることができた。  新憲法の下、不当な不利益が生じないよう、逐次、戸籍の記載方法にも配慮がなされてきているが、選択的夫婦別姓制度に根強い反対があるように、家族の一体性を保証するものは何なのだろうか、戸籍はどういう意義を持つのだろうか、そんなことを考えた。  また、横溝作品には複雑な家族関係の中で事件が起こる作品が多いが、横溝正史の義理の親子・兄弟姉妹の複雑な家族関係が、もしかすると何か反映しているのかもしれない。  

Posted byブクログ