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霊魂の足 の商品レビュー

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2024/04/16

角田喜久雄は伝奇時代小説の作家、という印象だったので、こんな名探偵を生んでいたとは知らなかった。それもシムノンのメグレ警部のようなキャラクターを作りたかったらしい、なんて。着物姿の真面目そうな作家を想像していたので、この一冊でなんだか角田喜久雄がモダンに思えてきた。(検索したら「...

角田喜久雄は伝奇時代小説の作家、という印象だったので、こんな名探偵を生んでいたとは知らなかった。それもシムノンのメグレ警部のようなキャラクターを作りたかったらしい、なんて。着物姿の真面目そうな作家を想像していたので、この一冊でなんだか角田喜久雄がモダンに思えてきた。(検索したら「現代推理小説大系5」に著者近影があっていい感じのポートレートだった) 中短編のみで面白く読んだ。事件はどれも工夫が凝らされていて興味が逸れないように最後まで読み通したくなる。むっつり不機嫌な巨漢・加賀美課長も魅力的でないことはないけれど、どの作品でも事件の関係者がとてもよく描けている。つい感情移入したくなるキャラクターが多かった。決してダラダラと描写しているわけではないのに、その人となりがスッと胸に入ってくる。描写も構成も、もちろん探偵小説としても、巧い作品を読んだという感じ。 加賀美シリーズである「高木家の惨劇」はだいぶ昔に読んだはずなのだけどすっかり忘れてしまっている。加賀美課長が印象に残らなかったのかな? 読み返さねば。

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2022/07/15

加賀美捜査一課長全短編を収録。 国書刊行会『奇蹟のボレロ』から表題作だけ抜かしたのと同じ構成で、収録作はエッセイ以外すでに全部読んでいたので、久々の再読ということになるが、やはり素晴らしい。 冒頭の謎から惹きつけられる「怪奇を抱く壁」がベストだが、いま読むと「五人の子供」などもか...

加賀美捜査一課長全短編を収録。 国書刊行会『奇蹟のボレロ』から表題作だけ抜かしたのと同じ構成で、収録作はエッセイ以外すでに全部読んでいたので、久々の再読ということになるが、やはり素晴らしい。 冒頭の謎から惹きつけられる「怪奇を抱く壁」がベストだが、いま読むと「五人の子供」などもかなり泣けて、敗戦直後の混乱した社会の不条理に対して見せる加賀美の人情に心を打たれた。 なお「Yの悲劇」ではクイーンの作品のネタバレをしているので未読の場合は注意。

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2021/12/28

加賀美捜査一課長の事件簿。タイトルで想像したほどに猟奇的、怪奇的な事件ではなかったものの。不可解な謎と加賀美の人情味あふれる解決が魅力的なミステリ短編集です。 お気に入りは「怪奇を抱く壁」。それほど怪奇ではなかったし、このタイトルで事件の真相に関わる部分をかなりあらわにしてしまっ...

加賀美捜査一課長の事件簿。タイトルで想像したほどに猟奇的、怪奇的な事件ではなかったものの。不可解な謎と加賀美の人情味あふれる解決が魅力的なミステリ短編集です。 お気に入りは「怪奇を抱く壁」。それほど怪奇ではなかったし、このタイトルで事件の真相に関わる部分をかなりあらわにしてしまっている気がしますが。謎の魅力という点ではこれが一番でした。あまりに不可解で不思議な謎なのだけれど、真相がわかってみれば納得。「Yの悲劇」もいろいろトリックが使われた点もあって面白いのですが。クイーンの「Yの悲劇」の犯人明かしちゃってる……! ああ読んでいてよかった。 「黄髪の女」「五人の子供」はストーリー的な面と、加賀美の解決がぐっときますね。いやほんと、これはこういう結末にしてもらって本当に良かったです。

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2021/10/31

終戦直後の話だけど昭和40年代くらいまではこういった感じだったよなと思ってしまった。肌感覚で理解できる人は還暦以上かな。

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2021/10/17

 名こそ知っていたが、初めて読む角田喜久雄のミステリー、というよりも探偵小説と言った方が相応しいか。  本書は、警視庁捜査第一課長・加賀美敬介が登場する全短篇を一冊にまとめたものである。  シムノンのメグレをモデルにしたとのこと、そう言われると、確かに雰囲気が感じられる。市井の...

 名こそ知っていたが、初めて読む角田喜久雄のミステリー、というよりも探偵小説と言った方が相応しいか。  本書は、警視庁捜査第一課長・加賀美敬介が登場する全短篇を一冊にまとめたものである。  シムノンのメグレをモデルにしたとのこと、そう言われると、確かに雰囲気が感じられる。市井の人々に向ける視線であったり、寡黙な中にも人情が窺われるところなど。  作品の舞台となるのはだいたい敗戦後の東京。捜査に当たる加賀美の目を通して、戦争により運命が変転してしまった人々の間に起こる事件が描かれる。その推理により事件は解決をみるのだが、謎解きものとしての面白さはもとより、短い一編一編の中に、悲しいドラマが沁み沁みと感じられる。  70年以上も前の作品だが、文章も読みやすく、今読んでも面白いと思う。一読をお勧めしたい。  

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