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反逆の神話 新版 の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2024/09/20

結構な量の論述。 カウンターカルチャーの表面的な批判では決してなく、未来に対する理想を抱き、前向きかつプラグマティックに論を展開していく。 消費主義がカウンターカルチャーが生み出した側面である個性化や競争性を内包しつつ、現代まで大きく肥大してきたという隠された側面にメスを入れるあ...

結構な量の論述。 カウンターカルチャーの表面的な批判では決してなく、未来に対する理想を抱き、前向きかつプラグマティックに論を展開していく。 消費主義がカウンターカルチャーが生み出した側面である個性化や競争性を内包しつつ、現代まで大きく肥大してきたという隠された側面にメスを入れるあたり頷かされた。 もちろん、カウンターカルチャーの文化左翼的活動がもたらした正の影響は否定し得ないし、自分が摂取してきた芸術を真っ向から否定する気はないが、この社会という枠組みの中でどのように個人性や自由を追求していくのか、その終わりのなさそうな永遠のテーマに、僅かながら思考する時間を作れて感謝感激雨嵐です。

Posted byブクログ

2024/06/15

カウンターカルチャーというものの思想と矛盾について深く理解できる本でした。あまり馴染みのないトピックなので始めはピンと来なかったのですが、読み進めると案外面白くて一気に読めました。 現代の人々は消費社会に組み込まれて抑圧されているので、そこから解放されるには、社会制度から逸脱し...

カウンターカルチャーというものの思想と矛盾について深く理解できる本でした。あまり馴染みのないトピックなので始めはピンと来なかったのですが、読み進めると案外面白くて一気に読めました。 現代の人々は消費社会に組み込まれて抑圧されているので、そこから解放されるには、社会制度から逸脱した行動を取ってそれを破壊する。でもそれが単なる身勝手な犯罪行為を肯定するレトリックに使われてしまう。しかも皮肉にも、カウンタカルチャーは差別化の心理によって推進される消費社会にことごとく取り込まれてしまう。さらに、逸脱を正当化するために問題の原因を制度ではなく文化であるとする。そのため、破壊後に代替となる具体的な制度を提案することはない。 いちばん刺さったのが、途上国への海外旅行についてです。グローバルに均質化する世界の中で、他国は個性を保って欲しい。でも自国は便利で多様であって欲しいという矛盾。観光地化されていない本物感のある場所を訪れたいけど、訪れるといずれ観光地化する、だからさらに辺境を追い求めるという世界の「消費」の矛盾。現地の生の生活圏を歩きまわて観光するのは異文化の搾取だが、ツアー化されると本物感で一気になくなるという矛盾。全て身に覚えがあって心が痛いです。 結論は意外とシンプルでした。政府による市場の失敗の解消と、必要な時は自由を手放してルールを増やすということ。自分の主張が正しいかの簡単なチェック法として「人類全員がそれをしたらどうなる?」と考えることが有効とのこと。これはかなり使えそうです。

Posted byブクログ

2024/01/10

資本主義への批判について、反論が満載。 資本主義の批判の対象は、消費主義であり、資本主義ではない。 フロイトの哲学やマルクス主義を対比として用いているところが興味深い。

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2023/11/23

NHKにジョセフ・ヒースさんが出演してて、トークが面白かったので著書を購入。かなり難解だが、1950年からの世相、政治、市民活動を俯瞰し、本質的なところを理解するために勉強になりました。ヒッピーやパンクなど、反体制・反資本主義を唱えて活動してきた人たちが、実は欲望を煽って消費を活...

NHKにジョセフ・ヒースさんが出演してて、トークが面白かったので著書を購入。かなり難解だが、1950年からの世相、政治、市民活動を俯瞰し、本質的なところを理解するために勉強になりました。ヒッピーやパンクなど、反体制・反資本主義を唱えて活動してきた人たちが、実は欲望を煽って消費を活性化しているという見方。差異のない平等の世界というのは、実は全体主義・監視主義の隣にいること。自然主義活動家の多様性を許容しない態度、など。現代社会などという大きな括りではなく、身近にも感じられる違和感は、世界的潮流・底流としても存在しているのだとみょうに納得。これからもそういう違和感を大事にしていこうと思いました。

Posted byブクログ

2022/10/14

読書会の課題本。副題になっている”「反体制」はカネになる”が、むしろ原題に近い。個人的に抱いてきたフェミニズムやオーガニックやスローフードなどへの違和感や嫌悪感を見事に言語化してくれた感じであった。オーガニック批判はネットで「炎上」したらしく、それについての補足説明となる「後記」...

読書会の課題本。副題になっている”「反体制」はカネになる”が、むしろ原題に近い。個人的に抱いてきたフェミニズムやオーガニックやスローフードなどへの違和感や嫌悪感を見事に言語化してくれた感じであった。オーガニック批判はネットで「炎上」したらしく、それについての補足説明となる「後記」も必読である。

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2022/10/02

個人的な思いを語らせて欲しい。私が2002年に入学した大学ではいわば反体制・カウンターカルチャーという文化が未だ賛辞されるものとして残っていた。もちろんそれは極めて局所的な残滓というものに過ぎないのだが、私自身はそうした活動に対して極めて否定的、というよりも強い嫌悪を持っていた(...

個人的な思いを語らせて欲しい。私が2002年に入学した大学ではいわば反体制・カウンターカルチャーという文化が未だ賛辞されるものとして残っていた。もちろんそれは極めて局所的な残滓というものに過ぎないのだが、私自身はそうした活動に対して極めて否定的、というよりも強い嫌悪を持っていた(ヒッピー風の輩がよく着ているサイケデリック風のTシャツ、あれは未だに吐き気がする)。 しかしながら、なぜ自身がここまで強い嫌悪を持つのかは言語化できておらず、そのまま卒業すると共にそうした人間と接することもなく今に至ったわけだが、本書はその嫌悪感の理由をクリアに示してくれ、笑いながら膝を打って読み進めた。 本書はトロント大学の哲学・公共哲学の教授である著者が2004年に出版した論考である。ページ数は相当あるものの、そのメッセージは以下のように極めてシンプルである。 ”反体制・カウンターカルチャーが実効力を持たないのはなぜか?それは反体制・カウンターカルチャーがカネになり、彼らが忌み嫌う資本主義を単に太らせるだけだから” 本書ではその証拠を、様々な反体制・カウンターカルチャーの営みや言説と共に示してくれる。 ここまで書いて自分でも嫌な人間だという気がしなくもないが、自分が忌み嫌うもの、その理由をクリアに与えてくれる言説というのは一種の知的な快楽を与えてくれるのだということを実感しながら、大笑いと共に読了した。

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2022/02/02

2022-02-01 前半2/3は面白かった。目新しいとは思わなかったが、納得の内容。 終盤はどうもよく分からない。様々な活動の欠点を指摘してるけど、ではどうしろと言うのか? 全ての問題を一気に解決する魔法の方法はない、と言っているのかなあ?

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2022/01/27

(資本主義・市場がかかえる問題を例示した後)「どちらのケースも、システムの問題ではない。問題はシステムに内在する抜け穴だ。解決は抜け穴をふさぐことであり、システムを廃することではない。」(p528) 「二十世紀の福祉国家の歴史は、市場の論理との一連の戦いというよりも、むしろさまざ...

(資本主義・市場がかかえる問題を例示した後)「どちらのケースも、システムの問題ではない。問題はシステムに内在する抜け穴だ。解決は抜け穴をふさぐことであり、システムを廃することではない。」(p528) 「二十世紀の福祉国家の歴史は、市場の論理との一連の戦いというよりも、むしろさまざまな形の市場の失敗の克服として解釈されるべきだ。(中略)僕らは市場を廃止するのではなく完成させるように努めるべきである。」(p536) 概ね、近代経済学的な分析、それに基づく解決策を支持した内容。 ファシズムに至った民主主義的な手法への過剰な懸念へも、疑問を呈している。 「反逆」という手法は、派手だが、本質的ではなく、問題解決につながるものではないのではないか、という主張と感じた。 「結局のところ、文明とは、ルールを受け入れ、他者のニーズと利益を尊重し私利の追求を抑えるという僕らの意志のもとに築かれるものだ。カウンターカルチャーの理想への誤った傾倒から、政治的左派が、この文明の土台への信頼をやめてしまったことは悲惨きわまりないー歴史上に類を見ないほど、それが重視されるようになった、まさにそのときに。」(p539)

Posted byブクログ

2022/01/16

自分は基本的にはルールを守る人間で、体制というシステムそのものに反抗を持つことはなかった。そんな自分でもこの本を読んでいるうちにうぎゃ~と痛いとこを突かれた気持ちになった。幼いころからジブリやガンダムやその他沢山の物語に触れてきたことによって、カウンターカルチャー賛美の価値観がい...

自分は基本的にはルールを守る人間で、体制というシステムそのものに反抗を持つことはなかった。そんな自分でもこの本を読んでいるうちにうぎゃ~と痛いとこを突かれた気持ちになった。幼いころからジブリやガンダムやその他沢山の物語に触れてきたことによって、カウンターカルチャー賛美の価値観がいつの間にか自分に育っていたのだ。 この本はどちらかというと実際的なことに重心を置いて書かれているので(あたりまえだ)、作品そのものの価値にはあまり触れていないが、解説でそのあたりを拾ってくれているのでいつもは早川のSFを読んでいる人もある意味救われる・・・のかもしない

Posted byブクログ