ミカエルの鼓動 の商品レビュー
『すべてが白い。あたりを見渡す目印はなく、どこを歩いているのかわからない。右も左も雪だ。予定では、今日中に下山するはずだった』とプロローグに書き始めている。 柚月裕子さんが書いた医療ミステリー小説は、初めてなんでしょうか。この小説から作家の熱意が感じられた。多くの時間をかけ...
『すべてが白い。あたりを見渡す目印はなく、どこを歩いているのかわからない。右も左も雪だ。予定では、今日中に下山するはずだった』とプロローグに書き始めている。 柚月裕子さんが書いた医療ミステリー小説は、初めてなんでしょうか。この小説から作家の熱意が感じられた。多くの時間をかけ、取材活動し勉強したのだと思う。 北海道中央大学病院に、手術支援ロボット(ミカエル)を操作する第一人者で、心臓外科医西條は、命は平等だからこそ、より高度な医療の水準を上げ、病で苦しむ人々に公平に受けられる未来を望んでいた。 ミカエルを使う利点は、患者の負担を最小限に抑えられ、従来からの開胸術ではなく内視鏡で行う点で繊細な作業も可能。第二は、複数人の患者に執刀医一人が、手術室に入らず、ガラス張りの操作台の前の椅子に座ったまま遠隔操作が可能な点である。操作室を独立させることにより、既にスタンバイされている次のスタッフと患者に、そのまま執刀医が移動できる。(手術着の着替えや消毒等が不要) 北中大病院は、循環器第一外科の医師が退職することになり、後任が誰になるのか注目されていたが、西條でさえ思いもよらない人事が病院長から発表された。世界的にも知られている心臓手術の専門病院で、まさに活躍中の人物(真木)を説得したのだ。しかし、西條にとっては懐疑的だ。それに、西條医師に係る広報及び取材は、今後一切禁止になった。 ある日、良からぬ情報が入った。広総大病院で親交のある布施医師が、病院を退職し失踪した。彼もまたミカエルによる手術を推進する一人だったのだ。 東京の病院から、患者を紹介された。 白石航・十二歳・先天性心疾患で難病だ。 手術の方法で、真木医師と対立した。 西條は、諸事情で決断を迫られている。今、彼に降りかかっている疑問が、謎のままなら術式は決められない。 エピローグ(一部抜粋)には…「生きようとする命を見殺しにすることはできない。それが、他人でも自分でもだ。ひとしきり強い突風が吹いた。きつく目をつむる。次に瞼を開けたとき、視界に西條は目を見張った。風が止み、立ち込めていた雲から差し込む光が、あたりを照らす。(中略)眩い景色に目を細めた。命をめぐる厳粛な世界を感じる」と書かれていた。 何といっても、手術の模様を文章で実況している様は、読みながら自分の心臓がバクバクと早鐘を撞いた。 読書は楽しい。
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最後に、どんでん返しがあるのでは、と思いながら読んでいたけど、そんなこともなく、ちょっと残念だった。部分的には細かいところまで書かれていたので、すごいなと思いました。
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検事モノが有名な著者だが、某バチスタ作品かと思うほど医療の描写もリアル。ライバルとの関係も読み応えがあったが肝心の動機部分が山の荘厳さみたいなもので有耶無耶にされた感があり残念。
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医学小説としては及第点だが、柚月作品として読むと物足らない。文章や描写は素晴らしいのはいつもの通りだが、展開や人物の行動原理に違和感を感じる箇所が複数あり、読後感がすっきりしなかった。柚月作品にハイレベルを求め過ぎなんでしょうか。。
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懐かしい樽前山登山から支笏湖畔の丸駒温泉コースが、目に浮かんだ。とても面白く一気に読み終えたが、メーカーはともかく北大病院が不具合隠蔽する意味と理屈が理解できないし、自分を責める西條教授の純粋すぎる思考も理解できない。天使とか悪魔とか大袈裟すぎ!機械だから不具合は起きるし、そのた...
懐かしい樽前山登山から支笏湖畔の丸駒温泉コースが、目に浮かんだ。とても面白く一気に読み終えたが、メーカーはともかく北大病院が不具合隠蔽する意味と理屈が理解できないし、自分を責める西條教授の純粋すぎる思考も理解できない。天使とか悪魔とか大袈裟すぎ!機械だから不具合は起きるし、そのためにバージョンアップしているんでしょ。「人間は何かを失ったとき、いままでいかに満たされていたのかを知る」「人生の意味は自分が納得できるかだ。結果がどうあれ、自分が決めた道なら後悔はない」その通りだけど、難しい…
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北中大病院で働く西條は、心臓外科医で手術支援ロボットを操る第一人者で、数々の難しい手術をこなしている。そんな時、循環器外科教授が辞めるということで、病院長は、後任に真木をおこうとしている。真木は、かつて心臓外科医として活躍していたが、それ以降今まで空白の期間があった。外部からだけ...
北中大病院で働く西條は、心臓外科医で手術支援ロボットを操る第一人者で、数々の難しい手術をこなしている。そんな時、循環器外科教授が辞めるということで、病院長は、後任に真木をおこうとしている。真木は、かつて心臓外科医として活躍していたが、それ以降今まで空白の期間があった。外部からだけでなく、正体不明の医師を招くことに疑問を抱く西條。深掘りしてみると、真木は空白の期間、ヨーロッパにいて、超有名な所で働いていた。 ロボットで難解な手術をこなす西條、ロボットは使わず、手で華麗にこなす真木。二人の対立が、ある少年の治療をきっかけに変化していく。 柚月さんといえば、「孤狼の血」を最初に浮かぶのですが、そのエキスが、医療ドラマに盛り込まれている印象でした。 医療界での教授の人選、横の繋がりなどヤクザとは違いますが、似たような構図があって、その中での静かなる争いが、巧みに描かれているなと思いました。 医療ドラマですが、中盤ではミステリーも入っていきます。 手術用ロボット「ミカエル」は果たして人々を救う天使なのか?それを取材するフリーライターの存在によって、西條の運命を狂わしていきます。 冒頭は雪山のシーンで、どういった状況なのかわかりません。最後の方で明らかになりますが、改めて読むと、ある人物の思いが盛り込まれていて、痛々しく感じてしまいました。 全部で約460ページというボリュームある量ですが、一つ一つの文が、スーッと頭の中に行動として思い浮かぶので、読みやすかったです。 ミカエルの疑惑も面白いですが、もう一つの要となる、ある少年の手術シーンも見所でした。手に汗握るシーンであり、緊張感も漂わせていました。その雰囲気にすっかり引き込まれてしまいました。難病を抱えている少年が、ロボットvs人、どちらの手術法で手術していくのか。最高峰の二人が対立していきます。 どちらにせよ、少年を助けるということには変わりありません。それぞれの立場で考える「救うこと」が描かれていて、その難しさに考えさせられました。 どれが最善の方法なのか。素人としては、固唾を飲むしかないなと思ってしまいました。 その他にも二人の過去にも触れていて、登場人物に厚みを持たせています。二人の医師だけでなく、周りの登場人物も大きな役割として発揮されていて、読み応えのある医療ドラマでした。
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まず一言、感動した。 私にとって、初の柚月裕子作品でしてどんな感じなのかと最初読む前思っていたのですが、見事ハマりました。作品のテーマとしては、医療の裏と表で、難しい医療用語がいっぱい出て来ます。でもそんなことも忘れるぐらい文章はとても読みやすくて、引き込まれます。柚月さんはとて...
まず一言、感動した。 私にとって、初の柚月裕子作品でしてどんな感じなのかと最初読む前思っていたのですが、見事ハマりました。作品のテーマとしては、医療の裏と表で、難しい医療用語がいっぱい出て来ます。でもそんなことも忘れるぐらい文章はとても読みやすくて、引き込まれます。柚月さんはとても取材力がすごいんだなと感じました。リアリティと緻密に組まれた文章。圧巻でした。
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手術支援ロボット「ミカエル」を推進する循環器外科医西條と、ドイツ帰りの天才医師真木。 難病の少年の治療方針をめぐって、二人が激しく対立します。 支援ロボット「ミカエル」を用いた手術か、従来の開胸手術か。 そんな中、西條の知り合いの若手医師が、自死してしまいます。 その最中、フリー...
手術支援ロボット「ミカエル」を推進する循環器外科医西條と、ドイツ帰りの天才医師真木。 難病の少年の治療方針をめぐって、二人が激しく対立します。 支援ロボット「ミカエル」を用いた手術か、従来の開胸手術か。 そんな中、西條の知り合いの若手医師が、自死してしまいます。 その最中、フリーの記者が西條に接近し、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と言い、病院内の闇を暴こうと迫ります。 医療とは?命とは?絆とは何かを問う作品です。 考えさせられました。
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手術シーンや病院人事、医療メーカーとの癒着など医療小説のてんこ盛り。よくある話だけど人物像がしっかりしてるから面白かった。
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【心臓外科医に託された少年の命。この医師は神か、悪魔か――】手術支援ロボットを推進する心臓外科医とドイツ帰りの天才医師。難病の少年の治療方針をめぐり二人は対立。命の意味を問う感動巨編。
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