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君の顔では泣けない の商品レビュー

3.9

144件のお客様レビュー

  1. 5つ

    29

  2. 4つ

    64

  3. 3つ

    32

  4. 2つ

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2024/03/01

男女入れ替わり者の結末は、お互い身体を取り戻して大団円、というのが相場でしょう。けれどこのお話ではもう15年も元の体に戻れず、きっとこれからも戻れないのだろうということを予感させる物語です。自分とは違う性別の他人の体に入り、恋人を作ったり初体験を済ませたり子供まで産んだり……それ...

男女入れ替わり者の結末は、お互い身体を取り戻して大団円、というのが相場でしょう。けれどこのお話ではもう15年も元の体に戻れず、きっとこれからも戻れないのだろうということを予感させる物語です。自分とは違う性別の他人の体に入り、恋人を作ったり初体験を済ませたり子供まで産んだり……それでもどこかこの体は自分のモノではないから、という客観性のある人生。他人のものだからこそ大切にしなくてはという2人の優しさが沢山垣間見えました。これまでの人生、大切に丁寧に生きて来れたかな、と自分の時間を振り返りたくなる作品です。

Posted byブクログ

2024/02/23

男女の身体が入れ替わるという使い古された設定にも関わらず、面白いと思った。 入れ替わり系の物語だと、たいていは元に戻るために四苦八苦するプロセスを描くものだが、本作の主人公は違った。異常な状況を何となく受け入れてしまう。もちろん葛藤はある。ただ、原因を探るとか、元に戻るために苦悩...

男女の身体が入れ替わるという使い古された設定にも関わらず、面白いと思った。 入れ替わり系の物語だと、たいていは元に戻るために四苦八苦するプロセスを描くものだが、本作の主人公は違った。異常な状況を何となく受け入れてしまう。もちろん葛藤はある。ただ、原因を探るとか、元に戻るために苦悩するとか、そういう展開ではなく、まずは新しい環境に適応する努力をするのだ。そこが新しい。 他の気づきもある。 この物語に大きなイベントは起きない。ただただ入れ替わった男女の日常が続く。年齢とともに一般的なライフイベントは起きるが、ドラマチックな事件は無い。 それでも読者としての自分は主人公の行く末をハラハラしながら見守ってしまう。 どうやらドラマというものは、主人公の葛藤さえあれば成立するものらしいと気づいた。主人公の目の前にはありふれた日常しかないのだが、「この人生は自分のものではない」という葛藤が物語のエンジンとなっているのだ。身近な愛すべき人々に嘘をついている罪悪感。他人の人生を生きる居心地の悪さ。それが葛藤となる。 なるほど、「葛藤」さえあればドラマになるのだな。 個人的には大林宣彦監督で映像化してほしい作品。 <アンダーライン> ・「無償の愛を注げる相手がいるって、なんつーかすげえなって思うときあるよ。足枷になるときがないって言ったら嘘になるけど、やっぱ原動力になるし。死んでる場合じゃなねえってなるよね」 ・誰かとの約束には、人を生かす力がある

Posted byブクログ

2024/02/08
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第十二回野性時代新人賞ということだが、なぜ読もうとしたのか分かない、何かのSNS等で勧めていたのか知れない、装丁は少女漫画のようでラノベかと思ってしまうだろう。しかし内容は男女の入れ替わり、余りにも使い古された題材だ、大林宣彦監督の「転校生」が余りにも素晴らしかったので完全にフォーマットとなってしまったようだ、しかし本作は違っていた、戻らないのだ主人公の陸とまなみは男女入れ代わりのまま人生を進めていく、そこには人生の機微があり人生の素晴らしさが綴られて行く、選考委員も素晴らしく卓越した小説を選考した。

Posted byブクログ

2024/01/25

初読みの作家さん。帯に「辻村深月が推薦」とあったので、辻村深月ファンとしては外せず手に取りました。ちょっと苦手な入れ替わりの設定だったけど、なんとか最後まで読了。なぜ入れ替わったのかよく分からず、入れ替わった後のストーリーにもあまり共感できず…

Posted byブクログ

2023/12/02
  • ネタバレ

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高校1年生の夏に入れ替わった男女。 突然女になった男の視点でのお話し。 入れ替わって戻れないまま、15年が過ぎていく。 女として生きてく大変さ。本当の家族との関係。 ラストは曖昧じゃない方が好みだけど、今回ばかりはあの後どうなるのかわからないままなのも良かった。 出会えて良かった1冊。

Posted byブクログ

2023/11/20
  • ネタバレ

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カドカワの新人賞。 普通の入れ替わりの話かと思ったらちょっと違う。 冒頭から 子供を置いて旦那さんとは違う男の子に会いに行く。 入れ替わってから15年、戻っていないと。 リアルな描写で入れ替わった頃を振り返っていく。

Posted byブクログ

2023/10/22

何かが変わってしまうことが昔からずっと苦手だ。中学や高校に上がった時も初めて会社勤めをし始めた時も不安でいっぱいだった。その不安は今でもまだ付いて回っている。いずれここまで積み上げてきたもの全てが崩れ去って、何もかもが変わってしまうんじゃないかと恐れている。でも、その方がいいんじ...

何かが変わってしまうことが昔からずっと苦手だ。中学や高校に上がった時も初めて会社勤めをし始めた時も不安でいっぱいだった。その不安は今でもまだ付いて回っている。いずれここまで積み上げてきたもの全てが崩れ去って、何もかもが変わってしまうんじゃないかと恐れている。でも、その方がいいんじゃないのかとも思っている。(P.7) 空は子供が画用紙に塗りたくるような嘘っぽすぎる青で、雲はその中をちらちら泳ぐ。真ん中には自己主張の強い太陽が一つ光っている。確かに、晴れた空を眺めるのは久し振りだった。どうしてだようと考えて、雨が降りそうな曇りの空の時にしか、天気なんて確かめたりしないからだと気付く。(P.66) たぶんいつまでも幼さを武器にしているわけにはいかない。大人になることを強いられるときがやがて来る。制服でラーメンを食べることができなくなる。そう考えると、やり残したことばかりのような気がする。水村も、そして田崎も、同じような不安を抱いていてくれていたらなと思う。もう少し先の未来がどうなるか分からなくても、今日までの過去をいつまでも美しいと思っていたいと、ラーメンの中のコーンをすくいながら考えていた。(P.85) 自分の本当の親でなくても、そういった姿を見ると感傷的な気分になってしまう。そうやって周りの人は変わっていく。普段は何とも思わないくせに、突然突きつけられるその変化にたじろぐ。(P.118) 水村の両親が坂平陸という男に見せる愛想や歓迎は、他人に対してだからこそできることだ。本当の子供にだけ見せるぞんざいさやいい加減さはそこには存在しない。水村が本当に欲しているのはそちらなのに。聞こえの良い言葉で溢れた丁寧な愛情なんて、欲しいわけがない。(P.174) 埃が電化製品を緩やかに破壊していくように、細かなひびが少しずつ入っていって、そして割れた。(P.177) 好きだったところが嫌いになり、許せていたことが許せなくなり、気になってもいなかった部分が鼻につき始める。きっとそう思っていたのは田崎だって同じだっただろう。最後まで俺たちは本音をぶつけ合うことをしなかった。真剣になることを嫌って、不満を奥歯で嚙み潰して飲み込んだ。胃の腑に溜まっていく負の感情は二人をうんざりさせるには充分な重さだったように思う。(P.178-179) ああ、また一つ失ってしまった、と思った。糸を紡ぐのにはあんなに苦心するのに、ぷつんと切れるときはあっという間だ。(P.179) 男と女が入れ替わるだけの物語ではなく、個々の登場人物の「人間」を見ている感じがした。家族、友達との関係。恋愛。その人だけにしか築けない関係が渦巻いていた。その人だから、愛される、慕われる。許される。日常の中で、誰かと会話をしていても「人間」と話しているのだ、とまじまじと意識していることはほとんどないが、この本を読むと、私が関係を築いてきた、またはいる相手も一人一人がオリジナルの人間で、その人自身の人生を歩んできたのだと感じさせられる。 今は素直になれなくてもいずれ消えてなくなってしまう友達との時間、家族との時間、恋人との時間。目に見えないものにその人の全てが詰まっている感じがして、なんだか胸が苦しくなるようなザワザワするような、感情的になるような。不思議な気持ちになった。 私がもし、入れ替わって他の誰かとして生きることとなったら上手く生きていけるだろうか。今の自分より楽しい人生を送れるだろうか。それか、今の自分の人生の方が充実しているのだろうか。 簡単に繋がりなんて切れてしまう時代に生きている私は日常が単調になりすぎているような気がしている。そんな日常の中で親とした会話、友達とした会話、誰かと話した時間こそが今の私になっているのかな。なんて思った。今の自分が好きかと問われると素直に頷くことはできないが、たまには自分を客観的に観て、褒めてあげるなり、叱るなり、許すなりしてあげても良いんじゃないかな。とも思った。 久しぶりに時間も忘れて没頭できた1冊。お気に入りになった(*ˊ˘ˋ*)。

Posted byブクログ

2023/09/13

同級生の男女の魂が入れ替わってしまうお話。主に女の子の体になってしまった男の子側の視点で描かれています。もしも自分がそうなったら…と想像しながら読み進めました。

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2023/08/05

体が入れ替わってしまった男子高校生と女子高校生の人生を描いた作品。 設定自体はベタベタだが、描写が細かくてすごい。女性として生きていく葛藤、戻った時への希望と不安、それぞれの親への思いなどなど実際に入れ替わったことある?と思ってしまうほど細かく感情が描かれていた。SF感を出さず、...

体が入れ替わってしまった男子高校生と女子高校生の人生を描いた作品。 設定自体はベタベタだが、描写が細かくてすごい。女性として生きていく葛藤、戻った時への希望と不安、それぞれの親への思いなどなど実際に入れ替わったことある?と思ってしまうほど細かく感情が描かれていた。SF感を出さず、「体が入れ替わった男女はどう生きていくのか」にフォーカスした人間味溢れた作品です。 冒頭の「十五年前。俺達の体は入れ替わった。今に至るまで、一度も元に戻っていない」が秀逸。かっこいい。

Posted byブクログ

2023/08/12
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図書館で見かけてなんとなく気になったので読んだ。 男女入れ替わりで、その後元に戻れずなんと15年も入れ替わったまま生活していく話で新しいなと思った。 元が男で女になって生きる主人公視点で話が進むので、女だったら普通に経験するであろうことを男性視点だとどう感じるのかみたいなところは読んでて面白かった。 ただこれ描いてるのは男女どちらなんだろう?女性だったらちょっと説教くさいかなと思ったけど調べたら男性だった。想像で描いたのか誰か女性から話聞いたのかわからないけど、女性は色々大変なんだよというのを暗に描いていたような気がする。男性も男性で大変なことあると思うけど、男性がこの本を読んだ時どう感じるのか気になる。 起承転結というか起承承承って感じだった笑

Posted byブクログ