台所太平記 改版 の商品レビュー
この作品、何で谷崎作品の中ではあんまり有名じゃないんだろう?と思うくらい面白かった。 次々女中さんの紹介をしていくだけの小説といったらそれまでだけど、ぐいぐい読まされちゃう。さすが文豪。 解説が松田青子さんなのも得した気分。 確かに、今の時代だと人権的にどうなの、みたいな描写も...
この作品、何で谷崎作品の中ではあんまり有名じゃないんだろう?と思うくらい面白かった。 次々女中さんの紹介をしていくだけの小説といったらそれまでだけど、ぐいぐい読まされちゃう。さすが文豪。 解説が松田青子さんなのも得した気分。 確かに、今の時代だと人権的にどうなの、みたいな描写もあるけども、出てくる女中さんたちが、出て行けと言われたらさっさと出て行くもののしれっと戻ってきたり、仕事をサボって恋愛沙汰で大騒ぎしたり、雇い主が作ってくれた俳句に文句を言って書き直させたり、とにかく自由でパワフルなものだから、私は気にならなかった。 『細雪』の雰囲気が好きな人は本書も好きだと思う。 逆に『細雪』に挑戦したいけど長いし…と思っている人にもおすすめ。
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巨匠のフェチな視点からの女中たち。個性派揃いの娘たちを見る作家の視点。 谷崎潤一郎の晩年の作。居を熱海に移す前後から雇った女中たちを丹念に描く。娘のように可愛がる視点なのだか、特に妙にエロチックなところはさすが巨匠。川端康成と谷崎についてはもっと若い頃から読んでいたらもっとハマ...
巨匠のフェチな視点からの女中たち。個性派揃いの娘たちを見る作家の視点。 谷崎潤一郎の晩年の作。居を熱海に移す前後から雇った女中たちを丹念に描く。娘のように可愛がる視点なのだか、特に妙にエロチックなところはさすが巨匠。川端康成と谷崎についてはもっと若い頃から読んでいたらもっとハマっていたかも。 結婚が終着点、女性の幸せという所が現在の価値観とは異なるが、結婚後も幸せに暮らす女中たちの姿に安心のラスト。 挿絵も良い。
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図書館で。 母が熱海の出身なので、同級生が谷崎先生のお使いでケテルにパンを買いに行かされただの、お茶のお稽古が谷崎先生に蕎麦を所望されたので中止になった(お寺の住職だか大黒様の手打ち10割蕎麦を食べたいと言われたとか)なんて話を聞いたことがあり、あの当時の作家というのは随分と大事...
図書館で。 母が熱海の出身なので、同級生が谷崎先生のお使いでケテルにパンを買いに行かされただの、お茶のお稽古が谷崎先生に蕎麦を所望されたので中止になった(お寺の住職だか大黒様の手打ち10割蕎麦を食べたいと言われたとか)なんて話を聞いたことがあり、あの当時の作家というのは随分と大事にされていたんだなぁと思ったことがあります。母の同級生は先生の秘書と言っていたそうですが、この本を読むと「女中さん」という括りだったんだろうな、雇用主としては。 読んだ感想としては、雇用主とは言え随分と言いたいこと言われてるなぁという感じです。きちんとした雇用条件も保証も無く、気に入らなければ暇を取らされるというのは雇われる方が圧倒的に不利なような気もします。人を使うというのは結構大変だとは思うので、雇用側も苦労はあるのかな、なんて思ったりもします。が、まぁやっぱり立場の弱いのは使用人側ですよね。いくら雇用主が「娘同様に」女中さんを使っていたと言っても娘では無いのだし、その辺りは読んでいて随分おごってるなぁと思いました。いや、他の家などよりはよい思いをさせてやっているという気持ちもあったのでしょうが、その考え自体が傲慢でもありますしねぇ。(そんな食べ歩きに連れまわされるより給金を上げてもらう方が嬉しいよなぁ、実際問題) そういう時代だったんだろうなぁと思うのと同時に、女性が好きな仕事に就けるようになったのは本当に良い事だなと思いました。女性の最終的ゴールが結婚しかない時代って…今の時代に生まれてよかったなと思いました。しみじみ。
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いゃあ〜谷崎の文章は、美しいな〜 まず読んでそう思いました。谷崎作品に共通するテーマとしては、フェチです。サド・マゾ・レズ等、様々なフェチシズムを流麗の如く美しい文章で表現する。さすが近代文学の奇才。
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前から本書が中公文庫に入っていたのは知っていたのだが、今般の改版の機会に購入、読んでみた。 晩年に近い作品だし、日常雑記的な題材を、ユーモアを混じえた平易な文章で書いているので、とても読みやすい。 昭和11年夏に千倉家に雇われた「初」から始まり、昭和37年の千倉磊吉(本書...
前から本書が中公文庫に入っていたのは知っていたのだが、今般の改版の機会に購入、読んでみた。 晩年に近い作品だし、日常雑記的な題材を、ユーモアを混じえた平易な文章で書いているので、とても読みやすい。 昭和11年夏に千倉家に雇われた「初」から始まり、昭和37年の千倉磊吉(本書では谷崎のこと)、数えで喜寿の祝いをするまでの間の、同家で働いた女中たちの中から、忘れることのできない人物の姿、性格、働き方などが、様々なエピソードと共に紹介されていく。 日本がまだまだ貧しくて、特に田舎の学歴もない女性には女中奉公のような仕事しかなかった時代ではあるが、磊吉が忘れることのできない人たちと言うだけに、個性豊かな女中さんたちの仕事振りやいろいろな奮闘振りが印象的だ。 結婚して初めて一人前とされていた時代だけに、終盤は各人の見合いや恋愛の末の結婚から家族へという姿が描かれ、喜寿の祝いでの久方振りの再会という形で大団円を迎える。 あくまで磊吉たち使う側からの視点で描かれているので、使われる側がどのような気持ちで働いていたかは見えないし、時代的背景が今とはだいぶん違うから、笑ってばかりでは読めないかもしれない。でも、彼女たちのたくましさには、読んでいて気持ち良くなる。 今回、山口画伯の挿絵が相当な数挿入されている。谷崎により描かれた人物像と、画伯の絵を見比べながら読むことができるのも、贅沢な楽しみである。
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特技はお料理、按摩、ゴリラの真似。曲者揃いの女たちが、文豪の家で元気にお仕事中! 珍騒動と笑いが止まらぬ女中さん列伝。〈挿絵〉山口晃〈解説〉松田青子
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