翡翠色の海へうたう の商品レビュー
語る物語と、語られる物語とが、終わり頃に一つに収束する その後の更なる最後も美しい 物語というだけでなく、間違いなく過去に起こった(であろう)ことの記述を受け止めきれない 読む途中、目を瞑ったり、耳を塞いだり これでもか、これでもかと、繰り返す表現の力強さもすごい 多くの人が...
語る物語と、語られる物語とが、終わり頃に一つに収束する その後の更なる最後も美しい 物語というだけでなく、間違いなく過去に起こった(であろう)ことの記述を受け止めきれない 読む途中、目を瞑ったり、耳を塞いだり これでもか、これでもかと、繰り返す表現の力強さもすごい 多くの人が読むべき一冊だと思います
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ひとりの朝鮮の女性の半生が書かれてあります。 私は穴になる、との表現がとても痛ましく、言葉を見失う程でした。沖縄の戦中、戦後に生きた、その半生が、心に染み入りました。 難しい表現はひとつもなく、けれど、とても平和とは何かを語っている気がしました。 この本を多くの人に読んで欲しいと...
ひとりの朝鮮の女性の半生が書かれてあります。 私は穴になる、との表現がとても痛ましく、言葉を見失う程でした。沖縄の戦中、戦後に生きた、その半生が、心に染み入りました。 難しい表現はひとつもなく、けれど、とても平和とは何かを語っている気がしました。 この本を多くの人に読んで欲しいと思わずに要られません。
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深沢さんの作品だし読む前にパラパラめくるとハングル(「アリラン」の歌詞)が出ていたので韓国がからんでくるのかなと思いながら読み始めたら、実は扱うのが難しかろう「慰安婦」も、民間人も巻き込まれた沖縄戦も絡んでくるもの。それをサラッと読める小説に仕立てている。サラッと読めることの良し...
深沢さんの作品だし読む前にパラパラめくるとハングル(「アリラン」の歌詞)が出ていたので韓国がからんでくるのかなと思いながら読み始めたら、実は扱うのが難しかろう「慰安婦」も、民間人も巻き込まれた沖縄戦も絡んでくるもの。それをサラッと読める小説に仕立てている。サラッと読めることの良し悪しはあるだろうけど、骨太なテーマの間口を広げているのではないだろうか。 ストーリーは、さえない毎日のなか小説家として身を立てることに希望を見出している主人公が沖縄を訪ねた日々を追っていく。合間に戦時中の沖縄で「慰安婦」として生きていた女性のストーリーがはさまってきて、最後につながりが見えてくる。 自分は常々「慰安婦」問題は歴史問題でもあるけど、一方でいまも世のなかでまかり通っている数々の構図までも含むジェンダー問題だと思っているんだけど、この作品も「慰安婦」を中心に据えながらも、それだけにととまらず米軍に保護された収容所でも米兵による性暴力におびえながら暮らしていたことや海辺で米兵に乱暴される子どもたちのことなど男性に虐げられる女性・子どもという構図への問題提起、非難が込められているのだと思う。また、女性だけでなく強制労働に連れてこられた朝鮮人男性たちにも触れられていて、こうした虐げられるものすべてに目を向けているところがこの作品の真骨頂だと思う。 それから、さえない小説家志望の主人公が、友人や話を聞かせてもらった沖縄の人に安易に「慰安婦」問題や沖縄のことを題材にしようとしていることに対し非難がましいことを言われるんだけど、そのとき「小説は、当事者しか書いてはいけないものなのだろうか。/本物、偽物は、何をもって決まるのだろうか。当事者が書けば本物なのか。/たとえ沖縄出身者だとしても、戦後生まれで、沖縄戦の経験がなければ、当事者とは言えないのではないか。在日韓国人だって、厳密には当事者と言えるかどうかわからない。/そもそも、当事者って、誰を指すのだろう。」(p.152)と思っていて、自分もここのところ同じようなことを思っているので強く共感した。何かと当事者で一線を引かれる気がして、いってみれば排他的なようで寂しく感じる。 主人公は終盤、まずは小説家として名を上げ、それから「慰安婦」そして虐げられる女性たちというテーマを扱おうという気持ちになる。この作品は深沢さんの小説家デビューからほぼ10年目に出ているんだけど、深沢さんと主人公はけっこう重なっているのかな。
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元従軍慰安婦、沖縄戦といった極めて重い題材だが、表現はわかりやすく、辛いと思いながらぐいぐい引き込まれていった。 元従軍慰安婦の方達の壮絶な経験者、苦しみ、沖縄の方たちの戦争から今も続いているであろう苦しみ、もどかしさ。沖縄から遠く住んでる私にはまだまだ知らないことがあるのだろう...
元従軍慰安婦、沖縄戦といった極めて重い題材だが、表現はわかりやすく、辛いと思いながらぐいぐい引き込まれていった。 元従軍慰安婦の方達の壮絶な経験者、苦しみ、沖縄の方たちの戦争から今も続いているであろう苦しみ、もどかしさ。沖縄から遠く住んでる私にはまだまだ知らないことがあるのだろう。 また、そこから続くどこにいてもある性的差別や居場所のない人たちに関する問題も考えさせられた。 私自身がそうした問題にどれだけ役に立てるとは思えないが、より知ること、寄り添う気持ちだけはは忘れたくないと思った。
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太平洋戦争末期の従軍慰安婦の話。悲惨でかわいそうというだけではなく、一人の女性が生きた話として受け止めた。 小説家志望の女性の語りがちょっと鬱陶しいと思っていたけど、この作品を書くにあたっての意図がわかりやすくなり、過去と現在を繋げて考えさせてくれる大事な役割を持っていると次第に...
太平洋戦争末期の従軍慰安婦の話。悲惨でかわいそうというだけではなく、一人の女性が生きた話として受け止めた。 小説家志望の女性の語りがちょっと鬱陶しいと思っていたけど、この作品を書くにあたっての意図がわかりやすくなり、過去と現在を繋げて考えさせてくれる大事な役割を持っていると次第にわかった。
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沖縄戦での朝鮮人慰安婦をテーマにして新人賞を狙おうとする作家が、取材をする中で、このテーマを扱うことがいかに難しいかを痛感する。今はまだ書けないが、いつかかけるだけの力量をつけて挑もうとする。。。 もしかしたら作者自身の経験かもしれませんね。やっと書けるだけのものになったって...
沖縄戦での朝鮮人慰安婦をテーマにして新人賞を狙おうとする作家が、取材をする中で、このテーマを扱うことがいかに難しいかを痛感する。今はまだ書けないが、いつかかけるだけの力量をつけて挑もうとする。。。 もしかしたら作者自身の経験かもしれませんね。やっと書けるだけのものになったってことかな。 自分も慰安婦や沖縄戦については知っているつもりだったけれど、いやはや、読むのが辛い内容でした。深沢さんはつらい体験を結構ライトに書ける作家さんだと思っていましたが、それでも重い。このテーマに近寄らないでという世間の風潮が今でも強い中で、やはり書こうとした決断に拍手です。
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沖縄戦時の朝鮮人慰安婦をテーマに据えた小説と知り、さっそく入手。「推し」のK-POPアイドルから朝鮮人慰安婦問題のことを知り、小説の新人賞に応募するための作品を書こうと沖縄に取材に出掛ける、というかなり危うい設定を逆手にとって、視点人物・葉奈の学習過程自体が小説化されている。そ...
沖縄戦時の朝鮮人慰安婦をテーマに据えた小説と知り、さっそく入手。「推し」のK-POPアイドルから朝鮮人慰安婦問題のことを知り、小説の新人賞に応募するための作品を書こうと沖縄に取材に出掛ける、というかなり危うい設定を逆手にとって、視点人物・葉奈の学習過程自体が小説化されている。そのような彼女の姿と、沖縄戦を生き残り、名も知られずに女性たちを守ろうとし続けた元朝鮮人慰安婦の姿が交互に描かれる。 リアリズム的に戦場を直接描くのではなく、間にメディアとなる聞き手=取材者をさしはさむ構成は近年よく見られる形式だが、小説を書く以外に社会的な場所を見つけられずにいる聞き手=取材者のキャラクターを詳しく書き込むことで、戦時から現在まで続く沖縄の女性たちの苦しみを受け止めることのできる感性を持たせることに成功している。巻末に掲げられた参考文献も興味深く、取材の質の高さを確認できた。
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ひたすらに重く苦しみを伴う作品だ。 慰安婦の事をある程度知っているつもりだった。 読み進むに連れ自分の認識の甘さを思い知り、知っているつもりと真実の間には天と地ほどの隔たりがある事に気付かされる。 騙され連れて来られた彼女達は、人間扱いされず軍事物資として運ばれて来たという。...
ひたすらに重く苦しみを伴う作品だ。 慰安婦の事をある程度知っているつもりだった。 読み進むに連れ自分の認識の甘さを思い知り、知っているつもりと真実の間には天と地ほどの隔たりがある事に気付かされる。 騙され連れて来られた彼女達は、人間扱いされず軍事物資として運ばれて来たという。 そして来る日も来る日も男達の穴となり拒む事は許されない。 戦争が男達を獣にしたのか? いや、どんな言い訳を並べたとして決して許される行為ではない。 二度と会えない故郷の家族を想いながら、翡翠色の海へ向かいアリランを歌う彼女達の姿に涙が止まらない。
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とてもエグい。読むのしんどい。 それが正直なところ。 でも小説であって、内容は実際にあったこと。 戦時中に本当に起きていたことであり、 現代のこの時代に些細なことで 嫌気がさしてしまう贅沢は、 私の「運」が良かったのだろうか。 だとしたら、 戦時中に生まれた人は そういう時代...
とてもエグい。読むのしんどい。 それが正直なところ。 でも小説であって、内容は実際にあったこと。 戦時中に本当に起きていたことであり、 現代のこの時代に些細なことで 嫌気がさしてしまう贅沢は、 私の「運」が良かったのだろうか。 だとしたら、 戦時中に生まれた人は そういう時代に生まれたから、 「運」が悪かったのだろうか。 そういう単純な話ではないのだろうけど、 本当にこんなことがあったなんて 信じられなくて辛くて心が痛い。 でも、性の搾取はいつの時代にも存在して、 世界はいつも争いが絶えなくて、 本当にどんな方向に向かってしまうのだろう。 決して他人事ではなくて、 少し踏み外せば私も争いの被害者にも加害者にも なるかもしれない。 偉大なハルモニたちに、私たちは もっと学ばなければいけない。
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作家志望のOLと元従軍慰安婦の生を強いられた女性とが時代を隔てて交互に織りなす物語。現代と戦時中のエピソードが交互に織りなされ、いったいどこで結着点を見出せるのか、最後までぐいぐい引き付けられる逸品である。 結局のところ、両者に直接的な接点はない。しかし、元従軍慰安婦の女性が凄惨...
作家志望のOLと元従軍慰安婦の生を強いられた女性とが時代を隔てて交互に織りなす物語。現代と戦時中のエピソードが交互に織りなされ、いったいどこで結着点を見出せるのか、最後までぐいぐい引き付けられる逸品である。 結局のところ、両者に直接的な接点はない。しかし、元従軍慰安婦の女性が凄惨な運命を生き抜き戦後を迎えた中で、それでも唯一守ってくれる存在と出会えたこと。その温もりを受け継いだからこそ、次は自分にできることを誰かに与えたい、という意思が芽生えたこと。そこから、子供たちを守り育むという働きにつながり、ある少女の心の支えとなったこと。その少女を母に持つ女性こそ、主人公が最後に泊まったゲストハウスのオーナーだった。ここに、両者の交差点がようやく見いだされたのだ。 慰安所の描写は正直、えぐい。あまりのえぐさに目をそむけたくなる。また、巷間よく言われているように、投降したら米軍は親切に保護してくれる、悪いのはひとえに日本兵だ、というのはあくまで米軍側の流布する話に過ぎなかったという現実。つまり、実際のところ、女性は米軍兵士の性の慰み者にされるがままだったという悲惨な現実が描かれている。 なぜこれほどまでに悲惨な話を物語らなければならないのか。それは、シェルターの少女が語ったセリフに尽きる。いわく、「いないことにされるよりマシかな」 人は得てして、悲惨な現実から目を背ける。それは、関わってしまうと、手を差し伸べなければならなくなるから。助けなければならなくなるから。しかし、誰しもそんな力はない。誰もが英雄ではないのだ。だから、見なかったことにする。いなかったことにする。そんな事実はなかったことにする。そうすれば、英雄であれない自分自身に対するささやかな言い訳になるからだ。ネトウヨが激しく慰安婦像を憎悪するのもこの点に起因するのだろう。 だが、現実に存在するのだ。かつて、男どもの慰み者として、完全にモノ扱いされ、尊厳も何もかもを根こそぎ奪われた少女たちがいた。彼女たちの悲鳴が闇夜をつんざき、彼女たちの絶望で地は満たされた。そして今もなお、少女たちは絶望し、それでも声を上げ、訴えている。いつの時代でもそうであったように、今もなお悲惨さは地表を覆い尽くしてやまない。 その現実が存在すること。悲惨さは決して絵空事でもなんでもなく、現に存在していること。この現実に真正面から向き合うことがまず求められるのではないか。そのためにこそ物語がある。 しかし、作者の意図はそれだけではない。作者の真の意図は、どんな悲惨な現実であっても、人の優しさがあり、その優しさは受け継がれ、与えられるものであること、そうしてバトンタッチされうるものであることを描こうとしていることだ。そのことを強く感じた。
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