誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版 の商品レビュー
『君たちはどう生きるか』を観て、モヤっとした感情が残っていたが本書を読んでスッキリした。 本書P123より 宮さんの映画に整合性を求めちゃいけないんだって。妄想なんだから。
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宮崎駿監督と仲が良い押井守監督だからこそズバズバ突っ込めて、なおかつ同じ職業として現場の状況を考察しつつ作品の解説をしてて面白かったです。対談形式なのも読みやすかった。
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2023/04/29〜2023/06/08 間に一冊挟んで読了。 互いに才能を認め合っているのに、近付けばケンカになってしまうという宮崎駿と押井守の関係性が面白い。 「ポスト黒澤明の椅子に座っているのが宮崎駿。批判的な評価が国内の批評家から出て来ないという点に於いて酷似している」...
2023/04/29〜2023/06/08 間に一冊挟んで読了。 互いに才能を認め合っているのに、近付けばケンカになってしまうという宮崎駿と押井守の関係性が面白い。 「ポスト黒澤明の椅子に座っているのが宮崎駿。批判的な評価が国内の批評家から出て来ないという点に於いて酷似している」という言説に膝を打った。 P22「自然描写と言えば宮崎駿」 P23「線と塗り分けだけで表現できないものはない」 P37〜38 押井:(略)宮さんは、ドラマツルギーとか構造がある人じゃないんです。」 --その原因は、脚本ではなく絵コンテを切ることから始めるせいなんですか?? 押井:脚本の才能はないよ。うちの師匠とは正反対。師匠の口癖は「演出は脚本がすべてだ。自分の思いなんて入れなくていい。そんなもんは家に帰って日記に書いとけ」だったから。「まず監督としての義務を果たせ」とも言われていた。監督は常に客観性をもち、絶えず修正し続けるんだということを、僕も教え込まれましたから。 --じゃあ、宮崎さんは……。 押井:ゼロです。客観性なんてカケラもありません。 --ゼロとは凄いですね。 押井:本人はあると思ってるけど、ゼロです。 --そういうこと、宮崎さんに直接、言ったことあります? 押井:うん、散々ケンカしているけど、その原因の多くはそういうことだったから。「映画は熱い思いで作るもんだ」というのが宮さんで、僕は「それだけじゃ、ダメでしょ」。だから常にぶつかっていた。 P39 押井:宮さんが言っていたのは「空中戦は世界で一番上手に描ける自信がある。でも、やらないんだ」。なぜ、やらないかというと、戦争を肯定したくないから。でも、本当にやりたいのは空中戦。そこに矛盾を抱えているんだよ。 P49 P134 押井:監督というのは「あえてこれはやらない」と言うことが重要なんだよ。僕は監督って、基本的に引き算の存在たと思っているから。頭のなかはやりたいことでパンパンになっているけど、これとこれは捨てるという決断をしなければいけない。そこで初めて構造が生まれると言ってもいいくらい。
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鈴木敏夫の暗躍、不遇な高畑、宮﨑駿は天才アニメーター これは、おそらく実質的にジブリに大きく関与し、さらに映画に造詣のふかい押井だからこそ語れた批評で、ほかの人にはとうてい無理だったらう。語りがおもしろくて、すっと飲み込めた。 私がよんだきっかけは、鈴木敏夫がタイ人の女性に...
鈴木敏夫の暗躍、不遇な高畑、宮﨑駿は天才アニメーター これは、おそらく実質的にジブリに大きく関与し、さらに映画に造詣のふかい押井だからこそ語れた批評で、ほかの人にはとうてい無理だったらう。語りがおもしろくて、すっと飲み込めた。 私がよんだきっかけは、鈴木敏夫がタイ人の女性にほれ、ジブリで公私混同してゐるといふ週刊誌の記事を見たから。おいおい大丈夫かよと思った。で、よんだけど、まあジブリを大きくした立役者の鈴木敏夫は、ほかにもいろいろ暗躍してゐるやうでどうもいけ好かなかった。 宮﨑のひととなりについてはかなり納得づく。ストーリー構成の人ではなく、確乎たるフェチがあり、徹底的にアニメーションの細部で魅せる人なのである。だからストーリーはどれも辻褄が合ってゐないが、アニメーションはすごすぎる。 すこし残念なのは高畑勲の扱ひで、押井はあまり評価してゐない。私も高畑の最高傑作は「赤毛のアン」と「母をたずねて三千里」だと思ってゐて、もうすこし「赤毛のアン」について語ってほしかった。でも、これはジブリ批評なので仕方ないか。 それに「かぐや姫の物語」もインテリの産物だとして、そこまで評価してゐない。 一方で、小谷野敦は「ユリイカ」に書いた批評で(https://jun-jun1965.hatenablog.com/entry/20170215)、いささか荒唐無稽かもしれないが、「かぐや姫」は小和田雅子だとしてゐて、私は説得力を感じてしまった。 高畑は左翼だし、大塚ひかりによれば(https://www.excite.co.jp/news/article/E1388945337959/?p=5)、そもそも『竹取物語』は諷刺の強い物語だといふし、さらに、高畑はプロデューサーの西村義明に、この映画を見ればある一人の女性の姿が浮かび上がるはずだと動画で言ってゐた。だから、十分にありうる。 また、平気で押井が『魔女の宅急便』を読んでないとか「君の名は。」を見てないとか言って、語ってゐるのはまづい。野坂昭如の「火垂るの墓」の記述を見ても、押井は文学についてまるでわかってゐないし(文学は藝術だから問題ないと言ってゐるがそんなことはない)、「火垂るの墓」も読んですらゐないなと思った。「ポニョ」もワグナーが元ネタだが、一切言及されてゐない。 しかしそんなのは些細な欠点である。とにかくおもしろかった。
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さくっと読了。押井監督の忖度抜きのジブリ評集。ナウシカから思い出のマーニーまで、ジブリ全作品がその舌鋒の対象となっている(ナウシカはジブリ前夜、として)。ただこき下ろすだけの内容ではないので、ジブリ信奉者も嫌な気分にならずに読めるはず、たぶん。
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今までそれほど熱心にジブリの作品を観てこなかったが、この本を読んでちょっと観たくなってきた…と思わせる所が凄い。22.1.18読了
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ーーお父さんメガネをかけているのも、いつものジブリですよね。 押井 だって宮さんだからね。言っておくけど、ガキ大将のような田舎の少年(カンタ)も宮さんの分身。そんなの当たり前。アニメーションなんてもれなくそうだから。キャラクターは監督のアルターエゴなの。『ガンダム』のアムロ・レイもシャアも富野さんの分身だって知ってるでしょ? ーー押井さん、みんなの夢を打ち砕くようなことを……せめてシャアだけはやめてというファンの悲鳴が聞こえましたよ(笑)。 押井 何言ってるの。決まってるじゃない。僕だってそうだよ。バトーとか荒巻とかは、そういう意味で言えば僕の分身。僕はああいうクソジジイになりたいんですから! トグサの出番が少ないのは、自分の部分が少ないし興味がないからだよ。 押井 キキがパン屋の離れに下宿することになってた朝のシーン、覚えてる? キキはトイレに行く。それもこっそりね。僕はそこでが一番印象的だった。ヒロインをトイレに行かせるなんて、それまで宮さんは一度もやったことがない。宮さんのヒロインはトイレなんて行きませんーーそれはアニメファンの間では有名な話です。美少女は、何か食べるのはギリギリ許されるけど、トイレは絶対ダメ。にもかかわらず、宮さんは描いていた。しかもコソコソ、恥ずかしそうに。初めて世の中に出たことの象徴的な表現という解釈もできるだろうけど、宮さんはこれまでたくさんの美少女を描いてきたとはいえ、その生理には一度も立ち入ったことはないし、やりたいはずもない。にもかかわらずやったのは、鈴木敏夫がいたから。これもまた想像だけど「宮さん、いままでの美少女じゃダメだよ。もっと現実の女の子が共感できるキャラクターにしなきゃ」とか鈴木敏夫が耳元で囁き続けたんじゃないかと思うわけ。これは僕の確信的推論。たぶん正しい。おそらく、そうやって徐々に説得されていったんだよ。そんなことでもなきゃ、宮さんは絶対描くはずのない女の子だもん。 では、鈴木敏夫は本作で何をしたかったのか? これも僕の確信的推論だけど、プロデューサーとしての自己実現をしたかった。プロデューサーには二通りしかなくて、ひとつは黒子に徹する人、もうひとつはプロデューサーとしての自己実現を目指す人。そのどっちかなんだよ。言うまでもなくトシちゃんは後者。 ーー自己実現を目指すって、自分でクリエイターを操り、自分の映画を作るってこと? 押井 簡単に言えば、自分のテーマを実現する。プロデューサーにとっては監督もスタッフのひとりだから、自分のコントロール下に置きたいと言う気持ちがある。監督にテーマと脚本を与え、現場を預けて、最終的な管理は全部自分がやる。要するにハリウッド型のプロデューサーだよ。ただし、彼らは最終的には権力と金で全部を押さえつけるけど、トシちゃんの場合は得意の恫喝と懐柔(笑)。
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馴れ合うばかりでなく、人は自分なりの物差しを持つべきだというのは「ギャラリーフェイク」だったか。 押井さんは自分の物差しでジブリ作品をバッサバッサと切っている。 ただ、そこには高畑さん鈴木さん宮崎さんをはじめとする作り手への愛情が確かにあるし、自分の物差しが唯一の正しい物差しでは...
馴れ合うばかりでなく、人は自分なりの物差しを持つべきだというのは「ギャラリーフェイク」だったか。 押井さんは自分の物差しでジブリ作品をバッサバッサと切っている。 ただ、そこには高畑さん鈴木さん宮崎さんをはじめとする作り手への愛情が確かにあるし、自分の物差しが唯一の正しい物差しではないことは十分に承知しているから、文章に嫌らしさが無い。 「ジブリが嫌い」な人がこの本を読んでも溜飲は下がらないと思う。
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ジブリに対する長年の疑問に対してスッキリしたところもあり、擁護したくなるようなところもあり。 だいたい辛口。でもこの本はそれでいい。 監督視点での評価とか、自分ではできないので割と面白く読めた。 タイトルに増補分の内容があまり沿っていないように思えた。
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で、増補版だけど、金出す気になったのは、石川さんとの鼎談故。 009に関しての神山監督の暴露で、もうIGじゃ仕事できないんじゃないの、と思っていたので、現在の石川さんとの距離感が気になった、と。 読んでみて、やっぱもうダメなんだな、とは思った。 まぁ、トミノさんと一緒で、昔話だけ...
で、増補版だけど、金出す気になったのは、石川さんとの鼎談故。 009に関しての神山監督の暴露で、もうIGじゃ仕事できないんじゃないの、と思っていたので、現在の石川さんとの距離感が気になった、と。 読んでみて、やっぱもうダメなんだな、とは思った。 まぁ、トミノさんと一緒で、昔話だけさせとけばいいのであって、独りよがりの映画モドキなんか作らせちゃいかん、と。
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