あなたを愛しているつもりで、私は――。 の商品レビュー
ASD・ADHDっ子を育てるお母さんの小説ですが、随所にエッセイに近いものを感じました。 フィクションとして練りこまれているいっぽうで、本質はとてもリアル。 引き込まれましたし、わが身に引き寄せて考えることができました。 母・夕子と娘・七緒の親子が、これはもう「こういうお母さん...
ASD・ADHDっ子を育てるお母さんの小説ですが、随所にエッセイに近いものを感じました。 フィクションとして練りこまれているいっぽうで、本質はとてもリアル。 引き込まれましたし、わが身に引き寄せて考えることができました。 母・夕子と娘・七緒の親子が、これはもう「こういうお母さんがこういう子を育てたらそれはもう大変だよね」という感じが群を抜いた組み合わせで、人の顔色を伺い自分の気持ちを押し込めてしまうアダルトチルドレンの夕子さんが、その生き方を七緒ちゃんに押し付けてしまうのが、夕子さん寄りの気持ちで分かりやすく理解できました。 理解はできる、けれど共感はできない、というギリギリのラインだと感じました。 自分が当事者でないからだろうと思うと、非常に未熟で情けないのですが、だからこそこのような作品に巡り合えたことが嬉しいです。 「愛してるつもりで、本当はなんなの?」という問いが含まれるタイトル、読みはじめは正直なところその答えを知るのが怖かったです。 でも、読み進めるうち、母親が子に抱く感情の正体が、丁寧に、説得力ある筆致で明かされ、ものすごく納得しました。 もしかしたら「親なのにこんな風に感じるなんて!」と憤る方もいるかもしれませんが、子育てに責任を負うというのは、そういう危うさと表裏一体だと常々思います。 七緒ちゃんの側にいてくれた大人たちが素敵でした。 母親・夕子さんと娘・七緒ちゃん、両親、妹、夫の関係が丁寧に描かれていて、夕子さんとともにインナーチャイルドが融解していくような心地になりました。 元職場の方々も素敵。 保育園も色々あるし、幼稚園はママ同士が近すぎて窮屈なのも分かる分かる……頷く首が止まりませんでした。
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発達障害の娘七緒に向き合う母親夕子の内面のなかで葛藤が起きて娘を愛し守り育てるつもりで、現実では娘の特性を認められずに普通の子供にこだわってしまう様子が描かれている。診断がついたからと言って、良い主治医に出会えたからと言って、パートナーが理解してくれたからといって母子ともに大丈夫!と言える環境、心理的状態になるのには時間がかかることが伝わってきた。 今自分で自分の発達障害を疑い、精神科に受診して薬を飲んだり対策をしても、ミスは無くならないし親からの理解はあまり得られない。発達障害だとわかってもそこで自己受容できるわけではなく、そこから普通に対する憧れと自分への無力感が増していく様が、娘の他の子を比べて悩む夕子の葛藤と重なり、とても共感して読んでいた。 夕子の「何で普通にできないの?」という心の叫びは夕子が幼少期に母親からかけられた言葉が影響しているはず。その子らしさを受け入れよう、多様性を受け入れよう、とスローガンのように社会には浸透してきているが実際は「普通にできないあの人はおかしいんじゃないか?」「人に迷惑をかけてはいけない」と周りからの目の厳しさや、周りに求める「普通」のレベルはあまり変わっていないように見える。七緒と夕子がお互いちょうどいい距離感をもってお互い穏やかにすごせるような世界になっていってほしいと切に願う。 【参考文献について】 参考文献にある『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』を途中まで読んでいたので、その本でも取り上げられていた自他境界の曖昧さが生むメンタライゼーション不足を彷彿とさせるシーンが多くて興味深かった。 例えば、夕子が理想の母親をやれないことに心を痛めて心配して声をかけた夫に対して「「本当は一日中部屋から出もしないで何してるんだって思ってるんでしょう? 母親のくせに、教師だったくせにこんな小さな子を躾けることもできないで、これからどうするつもりだって言いたいんでしょう? 誠司は…」という場面。 このシーンで夕子は緊迫した状況の中で自分の心の中で起きていることを見渡す力が落ちて、心的現実が外的現実そのものと認識する「心的等価モード」に入ってしまっていると解釈できる。
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発達障害を持った母親の苦労、葛藤がよく描かれた作品だったと思います。子どもである七緒から見たら良い親ではないかもしれないけど、懸命に頑張っている姿には涙するものがありました。 彼女が周囲に馴染もうとする生き方をしてきてしまったばかりに、子どもにも同じ生き方を強いてしまう。一見すると、それはとても残酷なのですが、そのようなことが今までの日本では当たり前のように繰り返されてきた。同調圧力に悩まされる人の声は無視されてきた。そのことが可視化されたような物語でした。 だからこそ、これから夕子は七緒を「皆」ではなく「一人」の人間として尊重してあげられるようになってほしいし、夕子自身も自分を尊重できるようになってほしいですね。自分にどれだけ向き合ったかで、子どもへの向き合い方が決まる。そんな風にも思わせてくれる作品でした。 また、子どもや周囲の大人の描写がとてもリアルで、実際にこういう人たちと話したことがあるんじゃないかと錯覚させられてしまうほど丁寧に描かれていたと思います。学びや気付きを与えてくれる物語をありがとうございました。
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2023.6.23 読了 ふとタイトルに引かれ、初めて入った白山の図書館で手に取った。保育者としての発達障害の子との関わりを学んでいる私にとって、読まなければならない気がした。 若林さんの本も一緒に借りたが一旦そっちは諦めることにした。月曜日返そう。 今1番思うことは、やっと読み...
2023.6.23 読了 ふとタイトルに引かれ、初めて入った白山の図書館で手に取った。保育者としての発達障害の子との関わりを学んでいる私にとって、読まなければならない気がした。 若林さんの本も一緒に借りたが一旦そっちは諦めることにした。月曜日返そう。 今1番思うことは、やっと読み終わった、、ということだ。かなりしんどかった。それほど重い話だった。ただ特徴について学ぶ授業とは全く違い、発達障害を持った子を育てる辛さ、歯がゆさ、苦しみが大量に書かれており、新鮮だった。
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自身の糧になる本をちょくちょく読むようにしている。 本書もそのうちの一冊。 発達障害の娘や周囲との関係を描いた母親視点の話。 中学生くらいになると ある程度大人になる子が増えて その子にあった対応ができるようになる。 (まだ幼く、できない子もいるが…) でも未就学児や小学生は...
自身の糧になる本をちょくちょく読むようにしている。 本書もそのうちの一冊。 発達障害の娘や周囲との関係を描いた母親視点の話。 中学生くらいになると ある程度大人になる子が増えて その子にあった対応ができるようになる。 (まだ幼く、できない子もいるが…) でも未就学児や小学生はより残酷で、 皆と違うと奇異な目で見てしまう。 いや、でもこの本にも描かれていたように 親の問題も大きいのかもしれない。 「普通」という言葉の定義が いい意味で無くなっている現代。 中学生だって反抗期の子がいたり 悪いことしてしまう子がいたり そこになびいてしまう子がいたり。 親御さんだって様々だ。 夕子のように もう少し本人と噛み合ったらいいのになと 思うこともあるけど 愛情がない親なんていない。と信じている。 障害があろうがなかろうが 子どもの味方であるために、 強くいることが大事だと感じた。 それは甘やかすという意味ではなく、 子どもの言葉に耳を傾け、 変に自信や自分の子どもを卑下せず 正々堂々とできる強さを。 子どもとの関係に悩んでいる方が 読んだらいいなと思った本でした。
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胸が締め付けられる。 でも最後まで読まねばいけないと思える作品だった。 ノンフィクションの様なタイトルだが発達障害の娘を持つ母親の苦悩と葛藤をとことん描き切った物語だ。 発達障害についてはある程度知っているつもりだった。 だが本作を読んで知っているつもりと本当に理解している事...
胸が締め付けられる。 でも最後まで読まねばいけないと思える作品だった。 ノンフィクションの様なタイトルだが発達障害の娘を持つ母親の苦悩と葛藤をとことん描き切った物語だ。 発達障害についてはある程度知っているつもりだった。 だが本作を読んで知っているつもりと本当に理解している事の差を歴然と感じ自分の無知に呆れてしまう。 外見からでは分からない障害ゆえ、周りの人達の対応は冷酷だ。 発達障害と分かっていながら辛辣な言葉を投げるママ友。 明らかないじめ。 人間の悪意に悲しくなる。 理解を深める為にも多くの人に手に取って欲しい一冊。
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発達障害である子どもはもちろんだが、その親の苦しみや辛さがすごく伝わった。 保育所の担任や、千秋にかなりイライラした。 夕子に同情もしたが、そこまで苦しむのかと驚いた。 この本を読んで、発達障害の親の支援も必要であると感じた。 普通とは何か、みんな同じが良いのかと考えた。欠けているところを補っていくよりも、得意な部分を伸ばしてあげる方が良いのではないかと感じた。 毒親の子どもの苦しさも描写されていて、アダルトチルドレンや機能不全家族であるなと感じた。毒親に育てられた子どもは大人になっても苦しみ、自分で気づかない限り親に支配されたままであると考えた。
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障害は悪いことなのか、人と違うのはいけないことかを考えることができた。 障害者やその親のことを学ぶときは、ぜひ読んで欲しい本。 私も自己肯定感が低いので、母親の考えが自分に当てはまりすぎて、胸が痛くなり、途中で読むのをやめようと思った。しかし、読み進めていくうちに母親が子供の頃の...
障害は悪いことなのか、人と違うのはいけないことかを考えることができた。 障害者やその親のことを学ぶときは、ぜひ読んで欲しい本。 私も自己肯定感が低いので、母親の考えが自分に当てはまりすぎて、胸が痛くなり、途中で読むのをやめようと思った。しかし、読み進めていくうちに母親が子供の頃の自分の思い込みを自覚し、妹との確執も解消し、親の感情に振り回されないようにと思う姿をみた。心の霧が晴れたように清々しい気持ちになった。 親の存在が子供の自己肯定感に多大な影響を及ぼすことを痛いほど身に染みた。 本を読んで学んだこと ・障害は、著しく不便だと考える ・いつだって、多数派が優先される ・子育てをする事で、子供を通して自分自身の子供の頃を思い出す ・子供は、親を求めありのままの自分を受け止めてほしいと願っている。親が子供を受け入れ、愛を注ぐ事で、子供は自分は満たされた存在だと認識し、他の人にも愛を与えられる人間になる ・子供は、無力だから毒親だろうと頼らないと生きていけない。親はそのことを自覚する ・子供を自分の正しい道に導こうと躍起になるのが行き過ぎると、気付かぬうちに子供の気持ちを無視してしまう ・子供は、自分で道を切り開いていくから、親は見守り、支える
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人と違う事で、個性だと言ったり、障害だと言ったり‥普通とはなんだろうと最近考えます。 親になると、子どもが人並みになんでも出来て欲しいと願ってしまい、無意識に型にはめているのかもしれない。 共感できる部分も多々あった。
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ASDやADHDのような情緒障害は、他者とのコミュニケーションに問題が生じます。と、言葉で言っても分かりにくいですよね。この本を読めば、どんな問題があるのかよく分かります。世の中の全てに人に知って欲しい。 誰もが、我慢したり、自分を偽ったりしなくてもいいように、ありのままをお互...
ASDやADHDのような情緒障害は、他者とのコミュニケーションに問題が生じます。と、言葉で言っても分かりにくいですよね。この本を読めば、どんな問題があるのかよく分かります。世の中の全てに人に知って欲しい。 誰もが、我慢したり、自分を偽ったりしなくてもいいように、ありのままをお互いに受け入れ合える世の中になって欲しい。夢みたいな話ですが、願わずにはいられません。 本文中の療育センターの指導員の言葉がとても分かりやすかったので、簡単に紹介します。 ・障害は不便と言い換えれば分かりやすい。 ・世の中は多数派が快適なように出来ているから、少数派は不便。 ・発達障害は目に見えない。まずはどこに不便があるかを見つけて、次にどうすればその不便が解消できるか考えましょう。
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