立花隆 最後に語り伝えたいこと の商品レビュー
立花隆が亡くなってから編集された本。長崎に生まれた著者は戦争の恐ろしさを身をもって実感しており、また大江健三郎は中国からの引揚げ者であり、同様の体験をしている二人には通じ合うものがあった。 保阪正康の解説も良かった。
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2015年に行われた長崎大学の講演と作家、大江健三郎氏との1992年の対談を再構成した本。 前半は、被爆者、核の脅威について。これからこの体験をどう伝えていくか、自分の経験も含めて語る。後半は、大江健三郎氏との対話。約30年前のソ連崩壊の頃の対談だが、その後の環境問題や人口減、移...
2015年に行われた長崎大学の講演と作家、大江健三郎氏との1992年の対談を再構成した本。 前半は、被爆者、核の脅威について。これからこの体験をどう伝えていくか、自分の経験も含めて語る。後半は、大江健三郎氏との対話。約30年前のソ連崩壊の頃の対談だが、その後の環境問題や人口減、移民、格差の問題、戦争の話について語っており、2人の先見の明を感じた。 立花隆は、若者に対して、有効性を求めすぎてはいけないこと(コスパ,タイパの風潮)、大衆運動は99.9%は負け戦なのだから負け続けること、継続こそ力であり、自分の意思を持ち続けることが大事という。またメディアに対しては、視覚メディアと言語メディアでは性格が違うこと。言葉のメディアは、心情的に深いところに届く。視覚のメディアは一瞬で情報を伝えるが、深いレベルで理解するためにはデータなどで二重三重に補足しないと良質な情報にはならない。写真は、言葉と組み合わせて初めて伝達力を持つこと。情報伝達の難しさを感じていると言う。 最後に、保坂正康さんの解説、回想記は興味深かった。 昭和史に焦点を当てて文筆活動をする保坂さんと森羅万象について好奇心旺盛な立花隆とは、同じノンフィクション作家で方向性が全く違うけれど、出来事の真髄を知りたいという欲求は共通している。同年代の盟友として、共感する部分が多かったのだろう。二人には若い頃から接点がありその話も面白かった。(この本が遺作となっている)
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戦争について深い。 加害者被害者では終わらない。絡み合う話。 赤い死体と黒い死体 抑圧された者からの暴力。引き揚げの悲哀。 吉田茂の自問 小倉和夫 シベリア鎮魂歌 立花隆 ヒロシマ・モナムール マルグリッド デュラス
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本書の「まえがき」にあたる部分を、立花隆の実の妹である菊入直代さんという方が書かれている。それによると、本書の発行意図は下記の通りである。 【引用】 2021年4月30日に兄・立花隆が亡くなり、80日あまりが経った。 本書は、時代を担う人々に、兄がどうしても伝えたいと切望したラス...
本書の「まえがき」にあたる部分を、立花隆の実の妹である菊入直代さんという方が書かれている。それによると、本書の発行意図は下記の通りである。 【引用】 2021年4月30日に兄・立花隆が亡くなり、80日あまりが経った。 本書は、時代を担う人々に、兄がどうしても伝えたいと切望したラストメッセージを、講演録や対談など書籍未収録だった「肉声」を中心に編んだものである。 【引用終わり】 そして、具体的な中身としては、第一部は、立花隆が2015年1月に長崎大学で行った講演「被爆者なき時代に向けて」を中心に構成されており、第二部は大江健三郎との2日にわたる対談を中心に構成されている。さらに、最後に保坂正康が追悼的な文章を書いている。 第一部・第二部で語られているテーマは、核兵器・戦争・地球環境などといった問題である。それを、立花隆は、「現在」「将来」の問題として、提起している。メッセージは、若い世代に向けたもの。 立花隆は、数多くのテーマを著作にしているが、若い世代に伝えたかったことの中心は、こういうことだったのか、と理解した。
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2021年に永眠した知の巨人・立花隆。1991年ソ連崩壊の年,大江氏との対談で語られたのは,核拡散,格差拡大,環境破壊の問題であった。これらは現代における地球規模の問題であり,立花氏が生涯取り組んだテーマ「戦争と平和」について,今こそ深く問いかけられる1冊。
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本書の巻頭の前書きは、菊入直代(立花隆の実妹)が書いている。 本書で一番読みたかったのは、実は保阪正康の解説だった。 時代に生き、万象の深部を見る と題されている。 文字通りの追悼文だ。 立花隆の追悼番組にこの人が出演していて、的確な話をしていたので関心を持っていた。 左...
本書の巻頭の前書きは、菊入直代(立花隆の実妹)が書いている。 本書で一番読みたかったのは、実は保阪正康の解説だった。 時代に生き、万象の深部を見る と題されている。 文字通りの追悼文だ。 立花隆の追悼番組にこの人が出演していて、的確な話をしていたので関心を持っていた。 左翼の論客的なイメージだったのだが、少し違っていた。 保阪あるいは保坂という別人(いるとして)と混同していたのかもしれない。 でこの解説文を読んでこの人の立花隆、更には立花隆の一族についての考えが理解できたので、良かったと思う。 本編に関しては、ウクライナがロシアに侵攻されている現実を見て、2022年3月12日現在、とても読む気にはなれない。 現実は動いている。 参考 女は戦争の顔をしていない の作者は、両親がそれぞれウクライナとベラルーシの出身だそうだ。 彼女は現状をどう見ているのだろうか。
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※このレビューにはネタバレを含みます
核兵器を禁止すべき理由が書いてある。なるほど、そういうことだったのかと思った。大陸からの引揚げのことも、こういう視点があるのだということを教えられた。巻末の保阪さんの解説もよかった。
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今年亡くなった立花隆、若い頃から田中角栄研究で、センセーショナルを起こしたジャーナリストの作品、かなり刺激されて読んだ。 一族も知性的で、思考が深い人々だと読んでわかった。 読みごたえのある作品を次々と上梓し、精力的に生きた人。意志的に生きる、かなり難しいことを 問われた内容だっ...
今年亡くなった立花隆、若い頃から田中角栄研究で、センセーショナルを起こしたジャーナリストの作品、かなり刺激されて読んだ。 一族も知性的で、思考が深い人々だと読んでわかった。 読みごたえのある作品を次々と上梓し、精力的に生きた人。意志的に生きる、かなり難しいことを 問われた内容だった。
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2021.4.30に永眠された立花隆さん。彼の戦争の記憶を後世に引き継ぐという思い、大江健三郎さんとの対談での、環境問題、核拡散など地球規模での危機についての警笛が主に著されている。(保阪正康さんによりまとめられている。 「赤い屍体、黒い屍体」という話が印象的だった。赤い屍体は、...
2021.4.30に永眠された立花隆さん。彼の戦争の記憶を後世に引き継ぐという思い、大江健三郎さんとの対談での、環境問題、核拡散など地球規模での危機についての警笛が主に著されている。(保阪正康さんによりまとめられている。 「赤い屍体、黒い屍体」という話が印象的だった。赤い屍体は、満州引き上げの際、満洲人により皮を引き裂かれ真っ赤になった日本人の死体。黒い屍体とは、原爆により黒焦げになり亡くなった日本人の死体。前者は加害者として、後者は被害者としての視点。 日本人は黒い屍体(被害者)としての視点で戦争を語りがち。しかし、赤い屍体として戦争を語らないと、真の反戦運動にはならない。 もう一点、大江さんとの対談は、1991年に行われたもの。その際に語られた環境問題について、今も同じことを問題視して、何も対策を講じていない(進展がない)ということが、この問題の難しさなのか、取り組む姿勢が低いからなのか・・・。彼のやり残したことは多々あると思う。それは彼の残した課題なのかもしれない。
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立花隆の遺作。反戦の思いを学生にぶつけた長崎大学での講演、大江健三郎氏との対論など未収録の立花の「肉声」を発掘した。
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