「論理的思考」の社会的構築 の商品レビュー
ビジネスでよくいわれる「論理的思考」というものを相対化できる良書。結論を冒頭に持ち出し、それを補強する材料を続けていくのが正しいという風潮、特にタイムパフォーマンス(タイパ)重視の傾向が強まる中で、フランスでの「論理的思考」はアンチテーゼとしてとても重要だと感じた。 ドイツに暮...
ビジネスでよくいわれる「論理的思考」というものを相対化できる良書。結論を冒頭に持ち出し、それを補強する材料を続けていくのが正しいという風潮、特にタイムパフォーマンス(タイパ)重視の傾向が強まる中で、フランスでの「論理的思考」はアンチテーゼとしてとても重要だと感じた。 ドイツに暮らしたこともあるが、隣国フランス、大陸欧州の教育は学ぶ点は多い。目先の結論に飛びつくのではなく、小さいころから人間の人間たるゆえんをたたき込む。よき共和国民を育てるため(しかもフランス革命を相対化する)、ナチスドイツの再現をさせないため。それがまどろっこしい表現になったりもして、母語話者以外からするとハードルだったりするのだが(苦笑) いずれにしてもSNSなどで本来的な論理的思考に触れる機会が減っている中、このアプローチは参考にしていきたい。同じ著者の「論理的思考とは何か」(岩波新書)というシンプルなタイトルも買ったのだが、これはアメリカ、フランス、日本、イランの4領域で論理的な思考を論じた本のようだ。こちらもこれから読むことにする。楽しみ。
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論理的思考とはなにか。 日本で社会人になってからの壁、「結論から話せ」になぜ戸惑うのか? 小中高の作文教育と歴史教育からその謎を紐解く。 ビジネスシーンではアメリカの影響が色濃く反映しており、アメリカ風な書き方5パラグラフエッセイを『論理的』としている。 「結論を先に提示する」ことで、まず何の話なのか明確になる利点はあるが、その結論が正しいものであると錯覚してしまう不具合が生じやすい(フェイクニュースを作りやすい) フランス風な書き方では、テーゼ主張とアンチテーゼ反論を併記し、落とし所やジンテーゼ第三の論への展開が導きやすいが時間がかかる。 →ビジネスシーンのような(少しの間違いは許容して)早めの決断が良い場合は5パラグラフエッセイ、政治のようなより重要な意思決定が必要な場合はディゼルダシオンを選択することがベターと思われる。 ⚪︎日本の作文 →こんな体験をして、わたしはこう思い、こんなふうに価値観が変わった。 (その人はどう考えている?その人あるいはその動物になりきって考えてみると?→八百万に魂が宿る信仰がベース?) ⚪︎英語の作文 →結論、それを補完する内容3つ、まとめ (5パラグラフエッセイ) ⚪︎フランスの作文 →主題に対するテーゼ、アンチテーゼ、テーゼとアンチテーゼをいいところで落とし所をつけた結論 (ディセルタシオン) ⚪︎ イランの作文 →バイブルや有名な詩の一節を引用、バイブルを褒め称える
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自分の知っている論理的な文章の構築方法とは異なるフランス式の「ディセルタシオン」について、フランスの教育文化の歴史とともに解説している。『現代社会思想』で解説のあった「脱構築」に近いものを感じる。 おそらく自分達が普段からよく見るパターンは日本式であったりアメリカ式の展開の仕方を...
自分の知っている論理的な文章の構築方法とは異なるフランス式の「ディセルタシオン」について、フランスの教育文化の歴史とともに解説している。『現代社会思想』で解説のあった「脱構築」に近いものを感じる。 おそらく自分達が普段からよく見るパターンは日本式であったりアメリカ式の展開の仕方をした文章や論文が多いと思うが、そうではない表現を仕方でとても興味深かった。
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