ヒロシマを暴いた男 の商品レビュー
産経新聞202188掲載 朝日新聞202187掲載 本の雑誌20221 評者:深町真理子(翻訳家)
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『#ヒロシマを暴いた男』 ほぼ日書評 Day451 今日では小学生でも知っているヒロシマ(およびナガサキ)の悲劇。ところが、それが世に明らかになるには、雑誌『ニューヨーカー』の若きピュリッツァー賞記者ハーシーの、1年にわたる地道な取材活動の成果としての「曝露記事」を待たねばな...
『#ヒロシマを暴いた男』 ほぼ日書評 Day451 今日では小学生でも知っているヒロシマ(およびナガサキ)の悲劇。ところが、それが世に明らかになるには、雑誌『ニューヨーカー』の若きピュリッツァー賞記者ハーシーの、1年にわたる地道な取材活動の成果としての「曝露記事」を待たねばならなかった。 当初、ヒロシマは幾重にも隠蔽された。原子爆弾保有のアドバンテージを少しでも長く独占したい米国の軍事機密として、そしてヒロシマの惨状報告を過剰反応と位置づけ日本(人)を貶めせしめ、さらには遅れをとったソ連がその威力を恐るるに足りぬものと去勢を張るためにである。 結果、大半のアメリカ人は、ヒロシマ・ナガサキの真の惨状を知ることなく、大戦終了につながった原子爆弾の使用を本気で是認し、目にしたものを日本に対するアメリカの道徳上の勝利ととらえていたのだ。 時代はレッドパージが始まろうとする頃、爆発の規模等に具体的に触れた記事を出せば反国家勢力として検挙される恐れもある、一方で抒情的な表現に過ぎれば真実が伝わらない。 ハーシーの選択は、出来事を実在の市井の人々6名によるストーリーとして、「リトルボーイ」が彼らの街と生活を引き裂いた日の記憶に重ね合わせるというもの。すかわち、ヒロシマの記事をして、『読者を登場人物の心に入らせ、その人物になりきらせ、ともに苦しませる」ことを目指したのだった。 淡々と語られる翻訳調で所々読みづらい箇所もあるが、この季節に手に取って良かったと思わせる一冊だった。 https://amzn.to/3rRUx0F
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