あめつちのうた の商品レビュー
甲子園を整備している"阪神園芸"、実在の企業名をそのまま使ったお仕事小説。グラウンドの状態をよく保つ、その具体的な手法がくわしく写し取られていて、とても興味深く読んだ。 肝心なのは"厚い土の層を掘り起こして混ぜ、不透水層を作らないこと"、そ...
甲子園を整備している"阪神園芸"、実在の企業名をそのまま使ったお仕事小説。グラウンドの状態をよく保つ、その具体的な手法がくわしく写し取られていて、とても興味深く読んだ。 肝心なのは"厚い土の層を掘り起こして混ぜ、不透水層を作らないこと"、そしてそれが、人の心と重ね合わせて繰り返し語られる。 コンプレックスのかたまりで父親とうまく関係を築けない主人公・大地。ひじの故障で夢を諦めた長谷先輩。かたくななその心が少しずつやわらかくほぐれていく様を、甲子園の1年と共に描いていく。 「過去は誰にでもある。でも、今は今なのだ。」ハタチ前の大地は、そう思える負けん気も持っている。卑屈になりがちな自分を直したいと思っているのだ。だからなのか、うじうじしていても見放す気にはならずに読んでいける。 ちょっと冗長かなと感じたし、帯に書かれた「絶対泣く」には「えっどこで?」と思ってしまったけど、ハタチ前後の"雨に降られた"若者たちが影響し合って生き生きと伸びはじめる眩しい物語。 装画も好き。雨が降らなければ、虹もできない。
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青春は、学生時代にしか訪れないものだと思っていましたが、一生懸命に仕事に打ち込む大地達の姿は、まさに青春そのものでした。 登場人物達が皆、心にささくれがあって、でも、お互いが励まし合いながら、知らず知らずのうちに影響を与えている。一人一人が向上心に溢れて、生き生きとしている姿は、...
青春は、学生時代にしか訪れないものだと思っていましたが、一生懸命に仕事に打ち込む大地達の姿は、まさに青春そのものでした。 登場人物達が皆、心にささくれがあって、でも、お互いが励まし合いながら、知らず知らずのうちに影響を与えている。一人一人が向上心に溢れて、生き生きとしている姿は、読んでいて清々しかったです。 阪神園芸の方々の仕事がメディアなどで、注目されるようになったのは、恐らく、ここ数年だと記憶しています。タイトな高校野球のスケジュールと、天候の影響により、雨でも試合を継続する機会が増えています。 高校野球という、一瞬しかない、試合を心置きなくプレーできるようにという、阪神園芸の方々の思いや、プロ野球において、怪我が選手生命の命取りにならないように、安全面への考慮がされていることに気づかされました。 緻密な計算と、長年の経験が、甲子園を作り上げている。「プロ」のプライドと技に触れることができました。
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神整備で話題の #阪神園芸 が舞台の青春お仕事小説。 悩みながらも、仕事や仲間を通して悩みと向き合い夢へ向かって踏み出す登場人物が愛おしい! 爽快な読後感を味わった。 甲子園球場の舞台裏も興味深い。 野球ファン必読の一冊!
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高校卒業後、阪神甲子園球場の整備を担当する「阪神園芸」に入社した主人公の、仕事や人間関係をめぐる奮闘を描いた青春小説。 野球を観る者としては、阪神園芸の詳しい業務の様子がまず面白い。雨が降り大きな水たまりのようになったグラウンドでも、彼らの手にかかればまた野球のできる状態にまで...
高校卒業後、阪神甲子園球場の整備を担当する「阪神園芸」に入社した主人公の、仕事や人間関係をめぐる奮闘を描いた青春小説。 野球を観る者としては、阪神園芸の詳しい業務の様子がまず面白い。雨が降り大きな水たまりのようになったグラウンドでも、彼らの手にかかればまた野球のできる状態にまで戻してくれる。そのことから「神整備」と呼ばれる彼らの仕事っぷり。 普段は高校野球中継の試合と試合の間で彼らがホースで水を撒いている姿が印象的だけど、高校野球での校旗の掲揚の裏話、オフシーズンの準備、そんな知られざる仕事の様子が面白かった。野球好きならおそらく試合の見方がちょっと変わるはず。 そして彼らの仕事に掛ける思いも熱い。グラウンドの整備が悪ければ、選手のケガにもつながりかねない。それは選手生命、選手の人生にもかかわってくるかもしれない。 高校野球ならその一試合は、球児にとってかけがえのないもの。だからこそグラウンドキーパーは真剣にグラウンドに向き合う。その心意気の真っ直ぐさたるや。 物語の主人公である雨宮大地は、阪神園芸の新入社員。運動神経が悪く、社会人野球経験者の父親との不仲、父の才能を受け継ぎ甲子園出場を果たした弟への気おくれに悩みます。 そうした主人公の物語と並行して描かれるのは、故障のため野球を諦めた先輩グラウンドキーパーの物語や、同性愛者である主人公と親友の大学野球の選手の物語。 主人公の大地や、大地の友人の同性愛者の一志が、体育会系のノリや女性関係をネタにした男性のコミュニケーションに戸惑ったり苦悩する姿が、自分も文化系側の人間だったから、とても共感しました。だからこそ彼らがもがき、諦めたり倒れそうになる姿も、その壁を超える姿も自然と感情移入しながら読めました。 甲子園といえば高校野球の爽やかさが印象の第一に上がるけど、その爽やかさに引けを取らない読み心地の爽快な青春小説でした。
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高校卒業後、就職した大地。その会社は、甲子園のグラウンド整備などを行う「阪神園芸」。ベテラン社員や一つ上の先輩に言われながらも、仕事に追われる日々。 それぞれの同年代が抱える心の引っ掛かりと戦いながら、どう自分と向き合っていくのか。 甲子園の様々な一面が知れて面白かったです。...
高校卒業後、就職した大地。その会社は、甲子園のグラウンド整備などを行う「阪神園芸」。ベテラン社員や一つ上の先輩に言われながらも、仕事に追われる日々。 それぞれの同年代が抱える心の引っ掛かりと戦いながら、どう自分と向き合っていくのか。 甲子園の様々な一面が知れて面白かったです。「阪神園芸」という会社は実際にある会社で、会社の名前・事業内容など知らないことだらけでした。試合での選手だけでなく、色んな人たちによって、作り上げられていることに改めて感慨深いなと思いました。 お仕事小説ですが、青春小説で味わう爽やかさがあり、青春の延長のような雰囲気がありました。 高校時代は東京にある野球部のマネージャーだった大地。なぜこの会社に入ったのか。大地の成長物語だけでなく、様々な同年代の成長物語としても楽しめました。 内容としては、入社してからの1年間が描かれています。経験ゼロなので、失敗続き。しかし、最初から完璧な人なんていません。経験を積むことで、色んな感性などが成長していきます。1年間だけでしたが、段々と成長していく姿に読み応えがありました。 仕事だけでなく、登場人物にも魅力がありました。 音楽を目指すピール売り、野球を諦めた先輩社員、同性愛者の友達、甲子園を目指す大地の弟。それぞれが抱え込む苦悩と闘いながらも、お互いと励まし合っていく姿に「仲間」としての大切さを感じましたし、羨ましいなとも思いました。 時間が経つごとに段々と「大人」になっていく姿には応援をしたくなる気持ちになりました。それぞれの人物が、どんな答えを出していくのか。人生良いことばかりではありませんが、頑張って欲しいなと思いました。 自分自身も何か頑張って見ようかなと思いたくなる気持ちにさせられました。 まもなく始まる高校野球。選手だけでなく、裏方で働くスタッフにも注目したいと思いました。
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”神整備”として知られる高校野球の聖地・甲子園球場のグラウンド整備を請け負う職人集団「阪神園芸」に高校卒業後に入社した雨宮大地。 運動神経ゼロが故、かつて野球選手だった父とは上手くいかず、野球センス抜群の弟・傑にも引け目を感じて家族から浮いた存在だった。 高校野球部マネージャーと...
”神整備”として知られる高校野球の聖地・甲子園球場のグラウンド整備を請け負う職人集団「阪神園芸」に高校卒業後に入社した雨宮大地。 運動神経ゼロが故、かつて野球選手だった父とは上手くいかず、野球センス抜群の弟・傑にも引け目を感じて家族から浮いた存在だった。 高校野球部マネージャーとして、甲子園出場を果たしたが一回戦敗退。 父に認められたい一心でグラウンドキーパーになるため甲子園に戻ってきた。 失敗続きの大地にいつも辛く当たってくる一つ先輩の元甲子園優勝投手の長谷騎士。 甲子園出場時のピッチャーだった一志との再会やビールの売り子で歌手を目指している真夏との出会い。 グラウンド整備の奥の深さを感じるほど、不安、焦り、無力感に押しつぶされそうになる大地。 みんな不器用だった。 みんな必死にもがいていた。 でも、不器用でも必死に前に進めば自分の未来が見えてくる。 「雨が降るからこそ、地面は固まる」「何度でも、何度でもな」 グラウンドも人の心も同じだと知る、青春お仕事ストーリー。
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