鳥がぼくらは祈り、 の商品レビュー
映画的。 に風景描写をコマ割りでしているので、そこがよくもあり、読みにくさでもあった。カメラ越しの視点が途中で挿入され、会話も誰と誰だかわかりにくくしてある。 空気感とか好きだけど、読むのにやたら時間がかかった。 最後のお祭りの雨の景色は映画としても素晴らしい場面だとおもった。
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私たちがふだん視認する世界は、理路整然な文脈に沿い編集された映像ではないのであって、つぎはぎが断続的に曖昧なままただ流れる。高島のカメラが記録していたのはそんな、私たちがふだん視認する世界に限りなく近いそれであり、それと対応するような著者の独特の文体は一見くどく冗長に見えるかもしれないが、私たちの瞬間瞬間の行動、思考、視線の変遷を極めて忠実に記述しようとした痕跡であった。そして、外部からは破綻や不可思議に見えたものも、特定の何かを了解し得たとき、それは整合性のとれた、そうとしかなり得ないものになる。 物語は一定の温度を保ったまま、文字に記されていないが存在している世界に接続される。始まり、終わりが明確に区切られているというより、膨大で途方もない時間軸のほんの一瞬を切り取っただけのようでもある。どうしようもない葛藤も苦悩も希望もただそこにある、それだけであり、それがすべてである。人生はそうやって進んでいくのか、と思う。 小難しく書いてしまったけれど、時間感覚と当人が認識する世界をことばで描写するということにここまで誠実な文章に初めて読んだような気がしていて、視界がひらけた。彼らはきっとこの日々を経験を胸に抱いて、少しずつ取りこぼしながら、きっと明るい未来に進んでいく。 高島が母親と妹に会いに行く道中で、目の前の人々への目のかけ方が一変した場面がとても鮮やかであたたかくお気に入り。 高島、山吉、池井それぞれの描写が"ぼく"の視点であることがとてもユニークで不思議な印象を抱かせる。互いのことを分かっているようで少しズレていて、それでもやはり分かる、のような4人の関係性があるからこそ成立し得ているのかもしれない。 もともと気になっており、ラジオかポッドキャストかでMONO NO AWARE玉置さんが言及していた本書。とても読んでよかった。
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文章がとんでもなく好きだ、、 読んでいて心がぐらぐらする 思考が深い場所まで辿り着かないうちに、全く別のことを考えている感じ の言語化がすごい
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まず、読む前に知っていた方がいいことはこの小説における特殊な文体について。 通常の小説と違い「」の表記があまりなく、文 章の中にセリフが組み込まれているため、それが登場人物の実際の発言なのか、心情描写なのかもあいまいに描かれている。 最初は不安定な文体に非常に読みにくさを...
まず、読む前に知っていた方がいいことはこの小説における特殊な文体について。 通常の小説と違い「」の表記があまりなく、文 章の中にセリフが組み込まれているため、それが登場人物の実際の発言なのか、心情描写なのかもあいまいに描かれている。 最初は不安定な文体に非常に読みにくさを感じたが、読んでいるうちにこの斬新な表現の方法にアートや詩を見ているような面白さを感じた。 ぼく、山吉、池井、高島の4人の誰のものなのかもわからなくなって複雑に絡み合って紐帯で結ばれ、一つに統合される感覚すら感じてしまう。 青春時代の友人関係における自他の境界線の曖昧さが見事に描かれていたと思う。
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これが著者のデビュー作。 最新作から3作を遡って読んだけど、これが一番とんがっている。逆に言えば、作品ごとに分かりやすくなってきているんだね。それにしても、これって小学校や中学校の作文なんかで提出したらボツだろうな。特に読点の使い方は独特だし、段落の扱いも自由だ。既存の文章作法に...
これが著者のデビュー作。 最新作から3作を遡って読んだけど、これが一番とんがっている。逆に言えば、作品ごとに分かりやすくなってきているんだね。それにしても、これって小学校や中学校の作文なんかで提出したらボツだろうな。特に読点の使い方は独特だし、段落の扱いも自由だ。既存の文章作法にとらわれてない。 次作が楽しみな作家の一人ですね。
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あまりに地元なので感想が偏りそうな気がしたんでしたが、杞憂でした。 通常ならタブーのように思える文体が物語全体を引っ張っていく。 もちろんタブーというのは今の普通の書き手が使わないというだけだ。 一人称でありながら他の人物の視点に自由に出入りしたり、過去へ未来へ時間軸を錯綜した...
あまりに地元なので感想が偏りそうな気がしたんでしたが、杞憂でした。 通常ならタブーのように思える文体が物語全体を引っ張っていく。 もちろんタブーというのは今の普通の書き手が使わないというだけだ。 一人称でありながら他の人物の視点に自由に出入りしたり、過去へ未来へ時間軸を錯綜したり、句点が区切れでなかったり、区切れてないのに改行したり。 そんな破綻したような文体が表すのは、鬱屈した世界でうごめく中高生たち。そのとめどないエネルギー。 閉塞感の裏側で血と死と暴力がせめぎ合う埼玉の県北で、それぞれの悩みをそれぞれに受け止めて区切りをつける。 人は問題を直視するのは苦手だし、逃げるならどこまでも逃げていく。 その代わり、立ち向かう勇気もまた、その人にしか抱けない。 連綿と過去を紡ぎ、未来へと羽ばたけるのは他ならぬその人しかいないのだ。
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半分くらいわかったような、わからなかったような。過去と今と未来。時々、この感覚わかるような、という部分がある。それが面白い。わからない部分もどういうことだろうと考えながら読む。わからないともやもやする。また読み直したい。
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ともすれば、今どこにいるの? って感じで内容自体、わけわかんなくなってしまうような文章に終始戸惑いながら読みました。ただ、気づけば、そこに引き込まれたと言った方が正しいのか。 なかなかな家庭環境で生きる4人の若者達。自分自身を形作るのは環境か、血か この記憶という、まったく持って信頼の置けない、厄介な代物か。過去、今、未来。 うーむ、メダパニ。愛すべき句読点に 出会いました。
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2022.7 文体が難しく全ては理解できなかったけれども、それでもなんかほっこりさせてくれる文学作品でした。 ページ数は一見少なく見えるがちょうど良い文量でした。
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気付いたら頬がぬれていた。知らない間に涙が流れていた。悲しいとも思わないのになんだろうこの涙はどこから流れてきたんだろうと思いながら読み終わって、終わったのに終わっていない物語のことを思っている。 17歳の彼らのぐるぐると出口を探しながら13歳の2歳の5歳の自分を探して一緒にいた誰かを探して17歳の自分を探して吐き出している声を聞いている。 今ここにいる自分を未来の自分と過去の自分とずっと続いている自分というものをちゃんと受け入れるために彼らはどこかできっとこの夏を超えなければならなかった、その瞬間が重なることの深み。 あの日自分を傷つけた誰かをずっと憎むことで自分を形作る事。それが自分をかろうじて保っていられる枠だったのかもしれないけれど、この夏、その終わりを自分の手で終わりを引き寄せた4人。4人が4人でよかったと、それがこの涙の意味なのかと。過去の思い出を共有することはできないし、自分の気持ちをだれかに渡すこともできないけれど、「そうしよう」と思うこと、それが明日の未来の自分と友だちの希望につながるのかもしれない。 さあ、希望って、どこからくるんだろう。
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