貝に続く場所にて の商品レビュー
とても大事な物語で好きだと思うのに、自分の理解が追いつかない悲しさ。この物語を誰かと語りたい!もしくは国語の時間をくれ! 一つ一つの表現が胸に刺さり苦しかったり、立ち止まってしまったり。私は震災を正面から描いた作品を避けてきたけど、出会えてよかった。向き合ってくれてありがとう
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消化しきれていない記憶や感情を持つ登場人物たち。そのわだかまりはいずれ身体にも何らかの形で現れるものなのだろうか。 全ての言葉を咀嚼できたわけではないが、それが良かった。簡単に理解できてはその記憶や感情が軽く感じられるから。何となく想像はつくが理解しきれない。その表現が物語の重厚...
消化しきれていない記憶や感情を持つ登場人物たち。そのわだかまりはいずれ身体にも何らかの形で現れるものなのだろうか。 全ての言葉を咀嚼できたわけではないが、それが良かった。簡単に理解できてはその記憶や感情が軽く感じられるから。何となく想像はつくが理解しきれない。その表現が物語の重厚さを引き立てていて読んで良かったと思う。
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今までにない難しい表現だらけ the 文学作品ってかんじ 知らない日本語の表現や比喩表現というかこんな表し方があるんやと思わされる文体 野宮が現実なのかどうか曖昧としていて不思議 ウルスラの沈黙を必要とする人が多い 「百年経って咲いた花を目にして、これが死者との再会と納得できる?...
今までにない難しい表現だらけ the 文学作品ってかんじ 知らない日本語の表現や比喩表現というかこんな表し方があるんやと思わされる文体 野宮が現実なのかどうか曖昧としていて不思議 ウルスラの沈黙を必要とする人が多い 「百年経って咲いた花を目にして、これが死者との再会と納得できる?」 記憶の視覚化 街に潜む過去の記憶、それが今の人間が知覚できる形で顕在化してくる 過去が姿を現してくる ゲッティンゲンでも、岩手でも 野宮も過去の幻影なのか? ウルスラは死者を持物とともに還す役割? ウルスラの部屋には死者?行方不明者と関連する記憶(持ち物象徴)がトリュフ犬によって掘り起こされ補完されている。 部屋を訪れる人はそれを回収しにくる。 回収できた人は所謂成仏ができる。 ドイツで言うとナチス、日本からは震災の被災者 物語の終盤、全員で冥王星まで歩くシーンでは、それぞれが記憶の巡礼をする
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ドイツ文学的な暗さ、死の香りが冒頭からする。チャプター分けが無くてノンストップで読んでしまうが、ページをめくる手が止まらない!というよりかはブレーキの無い自転車に乗ってる感じ。現代アートのような語彙・描写と海の絡み方で直島を思い出す。
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ドイツでの生活に慣れてきた頃、9年前に津波に呑まれたはずの友人が彼女のもとへ訪ねてくるという。 過去が色濃く今に重なるドイツ、人の勝手で書き換えられる惑星。友人として接するのか、幽霊という過去としてせっするのか、人としてどういった時間を同じく目にすればいいのか、迷い、話を誰にもで...
ドイツでの生活に慣れてきた頃、9年前に津波に呑まれたはずの友人が彼女のもとへ訪ねてくるという。 過去が色濃く今に重なるドイツ、人の勝手で書き換えられる惑星。友人として接するのか、幽霊という過去としてせっするのか、人としてどういった時間を同じく目にすればいいのか、迷い、話を誰にもできない主人公。 やがて彼女は人々の話を聞く時間を開け放してくれている老人を通して様々な時間との付き合い、距離に悩む人々、その他にも出会い、そして。 うつくしい文章で、波にたゆたうような感覚で読み終えました。他の作品も読んでみたいと思う心地でした。
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この作品のテキスト分析をすると、たぶん一番多く使われている単語は、「記憶」か「時間」のどちらか。 最後の方に置かれた「私が恐れていたのは、時間の隔たりと感傷が引き起こす記憶の歪みだった。その時に、忘却が始まってしまうことになる」の一文に込められた思いが、この作品を書く動機になっ...
この作品のテキスト分析をすると、たぶん一番多く使われている単語は、「記憶」か「時間」のどちらか。 最後の方に置かれた「私が恐れていたのは、時間の隔たりと感傷が引き起こす記憶の歪みだった。その時に、忘却が始まってしまうことになる」の一文に込められた思いが、この作品を書く動機になったのではないか? 決して読みやすい小説ではないし、それほど多くの読者がつかないかもしれないが、震災からの10年ののち書かれるべくして書かれた小説だったと思う。 次作も楽しみ。
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ハードカバーで持っていたからたぶん書店で見かけて買ったんだろう。読了まで3年近くの隔たりへの罪悪感は特にないけれど。 教養を求められる芸術作品でした。それに気づいてからは言葉の流れを楽しむ要領で読みました。未だ触れたことのない領域の知性と感性を楽しむことが肝要でした。絵画を見るこ...
ハードカバーで持っていたからたぶん書店で見かけて買ったんだろう。読了まで3年近くの隔たりへの罪悪感は特にないけれど。 教養を求められる芸術作品でした。それに気づいてからは言葉の流れを楽しむ要領で読みました。未だ触れたことのない領域の知性と感性を楽しむことが肝要でした。絵画を見ることに似た読書体験でした。 「芸術に対する感想に正解はないのだから、見たまま感じたままの感想が正解だ」と父に教わったことがあります。父はおそらく絵を描いていた祖父にそう教わったのだとおもいます。そんな時の隔たりにも思いを馳せました。わからないでも、美しいでも、知的だな、でも、感じたままの感想を大事にしたいと思いました。 西洋美術と聖書と文学などに明るい方はきっと違った楽しみで読めるのだと思います。
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東日本大震災から10年の節目となる2021年に刊行された本作。 コロナ禍真っ只中の2020年とその9年前に起きた震災が対比されることにより物語は進む。大学時代の知り合いであった野宮は津波に飲み込まれ行方不明となっていたが、9年の時を経てドイツのゲッティンゲンに姿を現した。著者が西...
東日本大震災から10年の節目となる2021年に刊行された本作。 コロナ禍真っ只中の2020年とその9年前に起きた震災が対比されることにより物語は進む。大学時代の知り合いであった野宮は津波に飲み込まれ行方不明となっていたが、9年の時を経てドイツのゲッティンゲンに姿を現した。著者が西洋美術に造詣のある人とのことで、その分野の話が多く、理解するのに苦戦する部分もあった。だが、物理学者で随筆家の寺田寅彦と思われる「寺田氏」や12歳の少女のアグネスといった不思議な雰囲気を醸す登場人物もいて、飽きることのない作品であった。 生者と死者との距離感のことは、実際に身近な人を亡くさないと理解が難しいのではなきかと感じた。生者は死者のことを思い出し、痛みを感じるために記憶を封印してしまうのか。その痛みも受け入れ、死者の記憶を己に刻むことが大切だと感じた。 難しい題材ではあるが、デビュー作にして芥川賞受賞作である本作にかけた著者の熱量を感じざるを得ない。 最後に本書のなかで気に入った文章を引用する。 私はトリュフ犬と一緒に、ただ居心地悪く立っていた。小学校のクラス劇において水増しされた、数字かアルファベットで識別されるように。(p.17) 映像だけが記憶となるのではない。身体のひとつひとつの部位が記憶を蓄え、それを静かに抱え込む。その身体が抱える残像を、おそらく消せることはないだろう。皮膚は周期ごとに細胞が新たなものになるが、地震から後の時間や感覚は、静かに透明な皮膚の層として残されたままなのだ。(p.60)
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詩的な描写が独特で難解な点もあるが、世界観は素敵だと思いました。絵画や芸術や宗教の知識がもう少しあればもっと楽しめたと思います。 作者の真意に近づきたければ勉強が必要だと感じた一冊でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
東日本大震災で行方不明になってしまった人間が、数年後日本から遠く離れたドイツ・ゲッティンゲンを訪ねてくる、というお話(?)。 おおきな出来事が起こるでもなく(幽霊?の来訪自体が大ごとではある?)、なんとも幻想的な不思議なお話でしたなぁ。 記憶と時間、記憶と場所、それぞれの過去があり、ゆったりとした時間の中でその関係性なども紐解かれていくような紐解かれていないような。 表現の仕方というか文章の硬さというかなんというか、多少の読みにくさがあり、読み進めるのに時間がかかってしまったように思う。 · 「背中に歯」というのが出てきて、は?と思ったけれど、そもそもそういう不可思議なお話だったなぁ、ははは!と笑い飛ばしてみたりしなかったり。
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