ナインストーリーズ の商品レビュー
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外国での仕事・暮らしが絡んだ中年男女の恋愛、離婚、再婚など、9話が収録。著者、乙川優三郎さんは房総が一番のようですがw。「ナインストーリーズ」、2021.6発行。第2話「1/10ほどの真実」、第3話「闘いは始まっている」、第8話「あなたの香りのするわたし」がお気に入りです。
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ホテルの上階は音も絶えて、そろそろ若い人たちが睦み合う時間であったが、亜希子はもう来ることのない海を眺めるために部屋の明かりを消してみた。曇天なのか月も星もなく、海原は暗く澱んでいたが、薄明かりの眼下に白い波が寄せているのが見える。すぐ近くで同じ海を見ている男を感じながら、彼女は終わったことにいくらかの寒さを覚え始めた。このあてどない地点に立つまでの長い長い軌道の虚しさを、それぞれの窓から見つめることに意味があるとしたら、そうして始まるらしい二つの自我の蘇生だろうと思った。そのことに男もなにがしかの意味を見出してほしい、と願わずにいられなかった。
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また、読み終わりたくない時間があっという間に過ぎてしまう。なんでなのかな。話自体は九篇あるうち、もの珍しいのはそれほど多くないのだけれど。しかも、それぞれの登場人物から見れば悪いばかりではない終わり方なんだろうけど、話としてのハッピーエンドではない話も多いしな。でも逆に、これから...
また、読み終わりたくない時間があっという間に過ぎてしまう。なんでなのかな。話自体は九篇あるうち、もの珍しいのはそれほど多くないのだけれど。しかも、それぞれの登場人物から見れば悪いばかりではない終わり方なんだろうけど、話としてのハッピーエンドではない話も多いしな。でも逆に、これからのことを考える話ばかりだから、それぞれの読後感は悪くなくて、眠いはずの帰路の電車の40分余り、全く寝なかった。
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図書館で借りた本。 乙川さんは、ずっと名前だけは知ってたけど読んだことがなかった作家さんです。 子どもたちが二人とも自転車に乗れるようになったので、図書館によくでかけるようになってます。 その時にふと目についたものを借りるようにしているのですが、今回はこちらでした。 赤い表紙に、...
図書館で借りた本。 乙川さんは、ずっと名前だけは知ってたけど読んだことがなかった作家さんです。 子どもたちが二人とも自転車に乗れるようになったので、図書館によくでかけるようになってます。 その時にふと目についたものを借りるようにしているのですが、今回はこちらでした。 赤い表紙に、ナインストーリーズというタイトルだけ見て借りました。 とっても端正な文章で、岐路に立った男女の物語を色少なく、陰影深く描いた作品集でした。 読んでいるとお酒を飲んでいるような、ゆったりと揺られているような心地になって本当に気持ちよかったです。 夫が膝の皿の靭帯を切ってしまい、その病院で読んでいたのですが、時間を忘れて読んでいました。
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「毎日顔を合わせている夫婦が私より幸せとは限らないわ、お互いの欠点に触れて憎み合ったり、夫婦をつづけるために大事なものを犠牲にしたり、そんな十年ならひとりでいる方がましでしょう」p26
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歳を重ねれば、人に疲れも見えてくる。その戸惑い、戸惑いに流れてくる冷たい風。 そんな風があちこちに吹く九つの景色が書かれている。
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現代小説へと舞台をギアアップした氏の短編9編。 何れも人生黄昏期を迎えた男女の来し方行く末を偲びやかな辛口であったり、乾いた文体で・・あたかも俯瞰する視点で見つめている。 あれ、乙川さんって・・直木賞だったよねと思うほど、最後の作品は芥川賞っぽく、それを読む私も・・あれ?(芥川...
現代小説へと舞台をギアアップした氏の短編9編。 何れも人生黄昏期を迎えた男女の来し方行く末を偲びやかな辛口であったり、乾いた文体で・・あたかも俯瞰する視点で見つめている。 あれ、乙川さんって・・直木賞だったよねと思うほど、最後の作品は芥川賞っぽく、それを読む私も・・あれ?(芥川賞系は合わないので) 同じテイストばかりでだれないと言えば嘘になるが、職種、設定の多様さは筆のの冴えを見せる。 「安全地帯」「海の~」は昨今、一番よくありそうな話・・男は自分一人では帳尻を成功へは持って行けない。 「六杯目~」はなかなかでこのラスト、さ―て丁か゚半か 筆者の生活スタイルから「都会の人生」が前面に出ているのはやむを得ないが、登場する人物・・男女ともに「知り合い」であっても「友達になりたくないか」という臭いばかり・・翻る自分も同類かと鼻白んで。。
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満足? 後悔? 愉悦? 絶望? 人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。 長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、 定年間近の独身男の婚活、 還暦過ぎの女友達二人、 かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。 乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生...
満足? 後悔? 愉悦? 絶望? 人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。 長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、 定年間近の独身男の婚活、 還暦過ぎの女友達二人、 かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。 乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。 時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。
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「これはあなたの物語です。」 と帯だか表紙にある(図書館で借りたのでそれは付いてなかった)。 登場人物の年齢は、40以上、定年前後からそれより上。確かに、年代的には「あなた」と言われた範疇にドンピシャだ(苦笑)。 9つの中高年の男女の物語が綴られている。 どれが良かったというと、「あなたの香りのするわたし」、「くちづけを誘うメロディ」「闘いは始まっている」あたりか。 人生の折り返し(60前後は、まだ折り返しと思っている)を迎えた男女が、次のステップを模索する話が多い。 「あなたの~」は、夫に先立たれた女性が、娘を気遣って再婚を躊躇っているが、娘のほうがとうに親離れしてて逆に背中を押されるという微笑ましい話。 「闘いは~」は、50代の独身男性がバーテンダーのシングルマザーを口説き落とそうと、あれこれ親切を働くが、それをテコにして女性はさらに羽ばたいていく。どちらも50代半ばあたり、まさに同年代。 「くちづけを~」は、年齢的には少し上だが、いや、年齢は超越してる。そうきたか!と膝を打つので、読んでのお愉しみということで。 概して女性がしっかり者で、自分の人生をブレることなく歩いている、あるいは、再び歩き出すという物語が多いのは、時代の求めだろうか。 日本を捨てて向かったパリで、宝飾デザイナーとして才能を開花していく嫁をなんとか日本に連れ戻そうとする夫は、 「帰国を目標に生きることは、今すぐ帰るのと同じことです」 と、ケンモホロロだ(@「1/10ほどの真実」。 仕事で外国暮らしの長い商社マンの夫に三行半を突き付ける嫁は、「たとえこれから苦労して泣くことがあるとしても、つまらない一生を悔やんで終わるよりはましであった。」と覚悟を決めて動じない(@「海のホテル」)。 まぁとにかく男性としては、粗大ゴミとして放り出されないよう、この作品群の男性の行動を反面教師にして、身を引き締めていこうと思った。 「人は生きたように死ぬ」 後悔なきよう、しっかり生きていこう。
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