医学のひよこ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
前作『医学のたまご』が刊行されたのは、2008年1月。自分が読んだ2014年からも7年が経過。今になって続編が刊行されるとは。『コロナ黙示録』では海堂尊さんの日本への絶望を感じたので、まだ創作意欲が残っていたことは喜びたい。 …のだが、帯に書かれたあらすじを読んで、目が点になる。前作は読みやすい中でも考えさせられるテーマを含んでいたが、本作はもはやあっちの方向である。海堂尊作品がここまでリアリティを捨て去ったのは初めてではないか? 前作で苦い経験をした薫君だが、縁あって東城大医学部には通い続けていた。ある日、洞窟探検をしていて大発見をした薫君たちは、信頼しているある人物に相談を持ちかける。一応、その人物の名は伏せておく。 一言で言えば、ずるい大人と子どもの対立ということなる。前作にもそういう側面があったが、本作は、大人に立ち向かう子どもという、いかにもエンタメ的な対立構図を前面に出している。あんな男やこんな男が加勢してくれたのだが…。 本作の続きは、6/25に刊行される『医学のつばさ』で描かれるそうです。本作はわずか220pしかなく、最初から一冊で出してくれよという気がする。設定自体が荒唐無稽であり、本作一冊だけでは評価を下しようがない。 本筋と並行して、薫君の出生にまつわる物語も描かれるのだが、それはそれで別の作品にした方がよかったような。サイドストーリーで済ませるには色々な意味で重い。自らのルーツが、彼の心に火をつけたという面はあるだろうけども。 KADOKAWAの策略に乗っかるのは癪だが、まあ6/25を待ちましょう。過大な期待はしないことにする。何だかんだでずるずると続く「桜宮サーガ」だが、続く限りは付き合いましょう。やっぱり海堂尊作品が好きだから。
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「医学のたまご」の単行本を買ったのは20年前。意外と横書きが読みやすく、初めてであったヨシタケシンスケさんの絵もよくハマッテいて、読後は裏表紙の3人のハイパーマンバッカスのポーズにグッと来た。子供たちにも中学生時分に読ませたら、気に入ったようで、つまり桜宮サーガの中でも印象の強い...
「医学のたまご」の単行本を買ったのは20年前。意外と横書きが読みやすく、初めてであったヨシタケシンスケさんの絵もよくハマッテいて、読後は裏表紙の3人のハイパーマンバッカスのポーズにグッと来た。子供たちにも中学生時分に読ませたら、気に入ったようで、つまり桜宮サーガの中でも印象の強い作品だった。 さて、「医学のたまご」の続篇というか、桜宮サーガの一番未来の作品。 海堂先生はSFと云っていますな。まあ、あり得ない設定はそうなんだろうけれど、まだ判らないな。かなりブレーキは強めに踏んでいると思うんだが、話が話だから、どうしたってスピードが上がって進んじゃうよな。 それから、長く待っていた忍の初登場と山咲理恵との対面とシーンもあった。 やっぱり理恵先生は変な人だよな。 牧村瑞人が顔を出し、師長のショウコちゃん、高階学長、田口教授に火喰い鳥、白鳥まで登場。終盤はかなりのテンポで疾走し、唐突に終わる。帯に完結編「医学のつばさ」6月刊行予定となかったら、え~!と叫んじゃう処。 この幕の引き方はなんだろうね。
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ジュブナイル小説.未確認生物の発見,という状況を構築し,中学生の立場と大人(というか医療関係者と官僚)の立場から状況を認識すると,かくもその後の展開が変わるのだ,という世知辛さを提示する.特段テーマがあるわけではないが,少なくとも日本とはこのような国なんだぜ,という現実を見せたか...
ジュブナイル小説.未確認生物の発見,という状況を構築し,中学生の立場と大人(というか医療関係者と官僚)の立場から状況を認識すると,かくもその後の展開が変わるのだ,という世知辛さを提示する.特段テーマがあるわけではないが,少なくとも日本とはこのような国なんだぜ,という現実を見せたかったのかしら.ジュブナイルで場を構築したから仕方がないけれど,薫と忍,そして理恵との初顔合わせは,そんな軽くてよいの…? ちなみに,物語は次巻で完結らしい.さて,どのように幕を閉じるのか楽しみ.
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