夜 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
もはや偏愛の域に達しているので星を減らす気はないのだが…今回はちょっと、シリーズ初めてモヤモヤ感が残った。 他の方の感想を読むと、シリーズで1番とか、単体でも読めるし新しい読者を取り込めたのではなどあったけど… うーん、個人的には真逆の感想だった。なんなのかなこの感じ…と思って、上手くはないんだけどこう、ダークな少年ジャンプを読んでる気分になったんだよね。 人気が出て連載が進むにつれ物語は大規模になってゆく。主人公の周りの世界が広がる。仲間も増えて敵がどんどん強くなる。主人公が成長してまた新たな困難に立ち向かう。 そうなのだ。 ただ主人公はジャンプのそれみたいな少年ではない。すでにかなり確立された地位とかを手にしてるので、成長の代わりにどんどん行動が変化する。敵が固定されるので最短距離を取るために、ルールから外れた行動が増えて行くんだよねえ。 いや、別に道徳的になる必要も理由もないのでフィクションのヒーローにルールを守って欲しいわけじゃない。だけど無茶で明らかに周りと距離ができたり本人がボロボロになると、なんともやるせないというか、最後に犯人が捕まったからいいよね?みたいな終わりよければ口調になるのがどうも… この違和感、ヨーナ・リンナでも感じたぞ。 リンカーン・ライムみたいに宿敵はいてもそれだけに固定しないでいいんじゃないかなーなんて思ってしまった。 ハルトマン(ヨーナの場合にはサンドマン)という固定要素を保って物語の起伏をつけるために、主人公にすべての皺寄せがいってないかなあ、なんて思わず考えてしまう。 …エスペランデューとかサミラとか、ヨーナよりも光サイドの主要人物がいてくれるから読めるけど、こっちも暗くなりすぎないでね?と、祈るような気持ち。 この、固定された悪と切れない関係で思い出したのがJカーリィのお兄ちゃんがシリアルキラーのシリーズ。あれは主人公とヴィラン的要素がありつつも決して一連托生になってなかった気がする。最新作を読んでいなかったので、再読してみようかな?
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もうすでに次が読みたくてしょうがない。 ヒーローっぽくない主人公が、人間らしさに溢れているて、自分はそこが好きで読み続けています。
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面白い。 が、前作ほどでは無かったか…。 しかし、連作を読んで改めて思うのだが、作者は一作目とは比べものにならない程の成熟を果たした様だ。 作品は相変わらず長編だが、一作目では顕著だった『これいる?』と言った余計が省かれ、長いなりにも削ぎ落とされ、まとまった感じに仕上がっている...
面白い。 が、前作ほどでは無かったか…。 しかし、連作を読んで改めて思うのだが、作者は一作目とは比べものにならない程の成熟を果たした様だ。 作品は相変わらず長編だが、一作目では顕著だった『これいる?』と言った余計が省かれ、長いなりにも削ぎ落とされ、まとまった感じに仕上がっている。 ただ、相変わらず主人公は冴えないし、率直に格好悪い、事件捜査って本来そういうものなのかも知れないが、主体性に欠けるというかピンボールの球みたいにあちこちで弾かれてしまう。なんとか正気を保っている胆力は大したものだが、頼りないのだ。 まぁ、それが魅力と言えなくもないが、私には好みでは無かった。 対して彼の敵については起こした事件のあらまし以外、パーソナリティ等、ほとんど謎だったものが少しずつ明らかされて来た。 まさしく『夜』の如き闇の住人、ノワールの雄と言えば、個人的には『レクター博士』だけど、博士の欲求は妹にまつわる慟哭が由来のカニバリズムの様に考察出来る。が、このハルトマンは苦痛を持って死に至らしめる…行為そのものに悦びを見出しており、まさに快楽殺人者と呼ぶに相応しいと思った。 その彼に対峙するには、現行主人公ではまだ役不足感は否めないが、子供を仲介した事で2人の関係がどう変わって行くのか、今後が楽しみ。 タイトルの『夜』もとても良いし、装画も凛として深みのある表現になっている。 本国フランスでも人気を博しているのも合点がいく。 但し、私の敬愛する巨人カミーユを生み出した同じく仏.ルメートル氏に比べるとまだ肩を並べるとまではいかないだろう。
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フランスのセルヴァズ警部第4作。ノルウェーの殺人事件で残されたシュステン刑事の名前。手がかりを追うと、北海の石油採掘場で連続殺人犯ハルトマンのDNAが見つかる。そこにはセルヴァズの写真があった。セルヴァズは殺人事件の容疑者を追跡していると狙撃され重体に。ハルトマンが縦横無尽に張っ...
フランスのセルヴァズ警部第4作。ノルウェーの殺人事件で残されたシュステン刑事の名前。手がかりを追うと、北海の石油採掘場で連続殺人犯ハルトマンのDNAが見つかる。そこにはセルヴァズの写真があった。セルヴァズは殺人事件の容疑者を追跡していると狙撃され重体に。ハルトマンが縦横無尽に張った罠に、セルヴァズとシュステンの身は・・・ 長いのに飽きさせない。ストーリー展開がスピーディーで好み。以前の作品のことは覚えてないが特に問題はなかった。
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待ち遠しかった作品。セルヴァズに対するハルトマンの復活となれば読むしかない。けど、シリーズの同じ様な展開にちょっと飽きたかな、とも思う。セルヴァズは何度も同じ失敗を繰り返すが、ハルトマンの底抜けた冷徹さ残酷さ知性を持ってすればひとたまりも無いのに、と読後は虚脱感すら味わう。
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マルタン・セルヴァス・シリーズも4巻目となった。 満を持して、あの人物が登場する。 グスタフ・マーラー、その人である。 トゥールーズの警部、マルタン・セルヴァスは、マーラーが大好きだった。 熱愛している。 崇拝している。 信仰していると言っていい。 『いつの日か、宇宙から異星...
マルタン・セルヴァス・シリーズも4巻目となった。 満を持して、あの人物が登場する。 グスタフ・マーラー、その人である。 トゥールーズの警部、マルタン・セルヴァスは、マーラーが大好きだった。 熱愛している。 崇拝している。 信仰していると言っていい。 『いつの日か、宇宙から異星人がやってきて、「人類は素晴しい文化を持っているか? もしなにも持っていないようなら、この地球を支配する」と言ってきたら、マーラーの音楽を聴かせてやろう――』 『あまりの衝撃に、不思議なビームで地球を攻撃する前に大あわてで宇宙船に乗って帰っていくのではないだろうか。「こんなに素晴しい音楽を創りだしたのなら、科学技術もさぞ高度なものを持っているに違いないぞ」と考えて。』(『魔女の組曲』上 341頁) こんな崇拝ぶりだから、マーラー特集の1冊が出てもおかしくない。 この『夜』はまさにそれだ。 ついにセルヴァスはマーラーに会い、語る言葉を聞いたのである。 折に触れて、隙あらば、セルヴァスはマーラーを語ってきた。 彼の音楽が、いかなる感情を呼び起すか、なにを告げ、それに平伏せざるを得ないか―― マーラーについて熱く語るのは、しかし、セルヴァスのみだった。 それが、今回、マーラーへの愛を語る人物がまた一人現れたのだ。 彼は指揮者である。それも大物の。 今や古い様式となった"指揮台の神々"の一人――いや一柱だ。 彼の音楽に対する熱情は当然ながら生中なものではなく、特にマーラーの『亡き子をしのぶ歌』についての思いは深い。 それにはもちろん理由がある。 マーラーの崇拝者が二人も登場するのだから、話はマーラーづくしになる。 マーラーがそんなにも現れるなら、当然、あの人物が登場する。 希代の殺人者、ハルトマンである。 セルヴァスとハルトマンが出会った時も、そこにマーラーの音楽があった。 マーラーファンは読むべき1冊だ。 たとえミステリーなんて読んだことがない、触れたことがない人であっても、マーラーファンとして、これは読むべきだろう。 そうして、セルヴァスたちとマーラーについて語り合うべきだ。 ハルトマンファンは――セルヴァスファンより多いかもしれない――きっと満足できる。 彼の存在感は大きく、ファンの期待どおりに、不気味だ。 セルヴァスのファンは、安心していい。 彼の無茶っぷりは健在だ。レベルアップしている。 運動なんてしたことがない、まったく関心がないくせに体を張り、頭が悪いわけでもないのに、考えなしに突っ込んでいく。 そして、命がけの事態に、何度も見舞われるのだ。 初めて読む方は、これを読んで、セルヴァスについて、彼の娘について、彼のファム・ファタールについて、 そして、ハルトマンについて、もっと知りたくなることだろう。 なにせ、シリーズをすべて読んでいた私が、たまらなくなって、一通り読み返したくらいだ。 シリーズ順を末尾に載せたので、参考にしていただきたい。 ただすこし注意が必要だ。 作者ベルナール・ミニエは、よほど犬が嫌いなのだろうか。 それとも、犬好きな人間が嫌いなのだろうか。 この『夜』にもちらりとあるのだが、犬好きがどきりとするようなことが大なり小なり書かれている。 犬好きはその点ご注意を。 『夜』は、ノルウェーを舞台に始まるので、北欧ミステリーかと思うかもしれない。 いや、フランスミステリーである。 そして、はじまりが怪談めいているので、寝る前に読むと夢に出る。 これもまたどうぞご注意を。 セルヴァス・シリーズの順番は以下のとおり 『氷結』上下 (※馬好き注意) 『死者の雨』上下 (※犬好きはほんの少し注意) 『魔女の組曲』上下 (※犬好き要注意) 『夜』 (※犬好きはほんの少し注意)
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「警部セルヴァズシリーズ」。ひとつの事件からどんどん広がりをみせていく展開とセルヴァズの不安や孤独。ギュスターブという子供の存在とシリーズの重要な人物であるハルトマンの不気味さ。たくさんの要素が入っているのにごちゃごちゃすることなく構成されてるのもうまい。誰が仕掛けるのか裏をかく...
「警部セルヴァズシリーズ」。ひとつの事件からどんどん広がりをみせていく展開とセルヴァズの不安や孤独。ギュスターブという子供の存在とシリーズの重要な人物であるハルトマンの不気味さ。たくさんの要素が入っているのにごちゃごちゃすることなく構成されてるのもうまい。誰が仕掛けるのか裏をかくのかそういう心理戦のようなものがあって緊張感がある。シリーズの今後に影響しそうな出来事がいくつかあって次作が待ち遠しい。
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マルタン・セルヴァス警部シリーズ第四弾。今回は初めて上下分冊ではなく初の一冊もの。700ページに近い大作であるにも関わらず、だ。読者としては、分冊よりもコスパは有難い。 前作『魔女の組曲』では、セルヴァスが休職療養中で、連続殺人鬼ジュリアン・ハルトマンから離れた独立系の犯罪...
マルタン・セルヴァス警部シリーズ第四弾。今回は初めて上下分冊ではなく初の一冊もの。700ページに近い大作であるにも関わらず、だ。読者としては、分冊よりもコスパは有難い。 前作『魔女の組曲』では、セルヴァスが休職療養中で、連続殺人鬼ジュリアン・ハルトマンから離れた独立系の犯罪と、そのとんでもない経緯と真相に向かうストーリーテリングのジェットコースター感に、まったくもって脱帽させられた。シリーズとしてよりも、単独作品として十分に成り立つため、新たな読者を獲得したのではないかと喜んでいる。 翻訳出版としては『氷結』(2016年)『死者の雨』(2017年)。その後、忘れ去られたかのように邦訳が途絶えていたシリーズが、前作を機に息を吹き返した感があり、今後のシリーズ続編に繋がる本作も、またもやリーダビリティ満点のスリラーとして満喫させてもらった。何と言ってもシリーズ本筋のセルヴァスvsハルトマンという全面対決構造が素晴らしい。さらには二人の間に奇妙な親密感さえ生まれ始めた点が、本書の新たな転回点であろう。ある少年の存在によって、セルヴァズはかつてない試練を味わうことになる。 ストーリー構成も抜群である。本作は、オスロ警察の女性刑事シュステンの乗る夜行列車でスタートする。教会での惨殺死体。現場に残されたシュステンの名のメモ。被害者の勤務する北海の海洋プラットホームでの危険極まりない時間。夜と嵐。そこから姿を消した容疑者の正体は? 例により、のっけから強烈インパクトの舞台装置。いよいよセルヴァズのこれまた派手なシーンの急転直下シーンに舞台は移る。序章だけではなく、セルヴァズは満身創痍を越えるくらいの命の危険に本書では何度も合わされる。セルヴァズ。シュステン。ハルトマン。舞台は、一作目『氷結』の土地に戻ってくる。スペイン国境のピレネー山麓、雪と山。銃撃。 そう、セルヴァズは銃の扱いが疑いもなく下手である。運動音痴。運転が苦手だ。銃は車のダッシュボードに放り込んで素手で出かけるというタイプである。その銃を使った殺人事件への容疑と、新手の敵=内部監察官ロラン・ランボーの登場。内と外にいる敵ばかり。 休みなしのストーリーの上に連続し堆く重ねられてゆく危機感と疑惑。ハルトマンとの距離が近くなるにつれ、対決模様が期待される重厚なスリラー感満載の一冊であり、ラストのどんでん返しも効いている。 全仏で今や最強のベストセラー1位、Netflixでもドラマ化されているシリーズ作品であるという。ノワールの本家フランスで、ピエール・ルメートルと双璧を成すベスト・ミステリー作家として、ぐんぐん勢いのついてゆくシリーズと言ってよいだろう。次作もまた同レベルかそれ以上に加速感のあるストーリーを期待したい。それも猛烈に。
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