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ひきなみ の商品レビュー

3.7

113件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

    48

  3. 3つ

    36

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

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2024/11/09

よかった。 島に住む2人の少女の友情、別離、再会を描いた物語。 登場人物たちの感情がその質感がわかるほど伝わってきて苦しくも心揺さぶられた。 特に葉の真以に対するもやもやした感情や不安とか、大事に思っている気持ちとか、入り乱れるいくつもの感情がリアルで一言では言い表せない。 ...

よかった。 島に住む2人の少女の友情、別離、再会を描いた物語。 登場人物たちの感情がその質感がわかるほど伝わってきて苦しくも心揺さぶられた。 特に葉の真以に対するもやもやした感情や不安とか、大事に思っている気持ちとか、入り乱れるいくつもの感情がリアルで一言では言い表せない。 また、島に根付く男尊女卑の空気感、真以へ向けられる偏見の目、葉が上司から受けるハラスメント、どれも生々しくて痛くて、私自身にもあるであろう偏見について考えさせられた。 葉と真以、2人の持つ強さと弱さ、その関係性の尊さに胸を打たれた一作。 ☆4.0

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2024/10/24

見た目は全く異なる2人が織りなす島でのストーリー。慰安婦にまで話はおよび、女性性について否が応でも考えさせられる。 p.48 「でもね、本当に仲良くなりたかったら、聞きづらいなって思うことは、相手が話してくれるまで聞かないほうがいいと思う」 「聞いちゃだめなんですか?」 「...

見た目は全く異なる2人が織りなす島でのストーリー。慰安婦にまで話はおよび、女性性について否が応でも考えさせられる。 p.48 「でもね、本当に仲良くなりたかったら、聞きづらいなって思うことは、相手が話してくれるまで聞かないほうがいいと思う」 「聞いちゃだめなんですか?」 「だめかどうかはその人しかわからないけど、桑田さんだって聞かれたくないことない?」少し考えた。布団の中で丸まる父と面倒をみる母の姿が浮かぶ。教室からのはしゃぎ声が耳に届く。 「・・・・・・・・あります」 「でしょう。でも、その聞かれたくないことって、たまに聞いて欲しいことになるときがあるの。そういうときに聞いてあげればいいんだと思う」「それはいつですか? どんなとき?」木村先生は「焦らない焦らない」と笑った。 「そんなのわからないよ。そのときはこないかもしれないし、こないほうがその人にとっては幸せかもしれないんだから」 p.76 なるべく小さくて地味な袋を探そうとするが、どれも花柄だったりレース模様だったりキラキラした星や月がちりばめられたデザインで目立つ。おまけにナプキンの構造が大きく描かれ、「ヨレ」とか「モレ」とか「生理中の肌に優しい」とかでかでかと書かれている。真以が遠慮がちに「多めに買っておいたほうがいいよ」と言った。「次の月の分くらいまで」これから毎月こんなことがあるのか、と気が重くなった。同時に、真以は毎月ここに買いにきているのだと気づいた。ときどき先に帰ってしまう理由はこれだったのかもしれない。真以 の家族は男性の平蔵さんしかいないから。島の顔見知りの店では絶対に買いたくない気持ちが痛いくらいにわかった。こんなパッケージの商品を買うなんて「私は生理です」と書かれた看板を持つみたいだ。 p.160 企画会議がある日はいつも吐き気が止まらない。駅の階段で、ふと、転げ落ちたら会社に行かなくてもいいかもしれない、とあらぬことを考えてしまう。 部署の全員が揃う場で、必ずといっていいほど梶原部長は私を狙う。私がなにか言うと、揚げ足を取り、嫌味を返してくる。企画案に対する否定は、私の学歴や人格への非難へと繋がっていく。黙っていると「ちょっと、やめてくれよ。虐めているみたいだろ。ウィットが足りないんじゃない」と笑われる。 最後は必ず「これだから女性は......でも、そう言うとセクハラになるんだろーまったくやりにくいよ」とまるで自分が被害者のように困った顔をする。 自分から注意が逸れるのをじっと待つ。笑う人と笑われる人、見えない線が会議室の机に引かれているのを感じる。昔、あの島の寄合で、上座と下座で引かれていた線のような。人は大きな声をだして好きに振るまえる側と、人の顔色を窺って立ちまわる側に分かれている。そし的であったし、気分次第で振るまうことも不機嫌さをあからさまにすることも許されていた。 結局、父は母と私を捨てて、自分よりずっと若い女性のもとへ行ってしまった。父の実家が裕福だったため、学費はだしてもらえたが、その影響で私は恋愛という関係性においても、相手の男性の機嫌が悪くなると父を思いだしてしまうようになった。男性は生まれつき、女性に顔色を鏡ってもらうことに慣れているのだと思った。そして、その無自覚さに嫌悪感を覚えた。 口を歪ませて私を見る梶原部長と追従するような笑みを浮かべた社員たちの顔がゆっくりと遠ざかる。表情を殺したまま、ひたすら「はい」と「すみません」を繰り返す。青緑の海に囲まれた島の、寄合の夜がよみがえってくる。

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2024/09/25

この本は女子の方がささるかなぁ。 私は「昨日高校卒業したつもり」でずっと生きてきたんだけど笑、おっさんになってしまったのかな?

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2024/09/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

海と島の描写が美しい。美しい風景が思い浮かぶ。 でも内容は重い。父を異様に気遣うが故に母は主人公、葉を島の祖父母に預ける。島は閉鎖的で、男尊女卑。社会人になってもセクハラ、パワハラに苦しめらる葉。生きづらいのは女性だから? 島で仲良くなった真以は、祖母の過去や母の職業から女としてまわりから異様な目で見られる。祖母の過去は祖母のせいではないし、母は自信を持ってその仕事をしている。どのみち、真以のせいではないのに。 葉と真以はお互いに支えあいながら、強く生きていく。そんな物語でした。

Posted byブクログ

2024/09/04

波の音や磯の香りがしてくる描写に引き込まれた。 私は、島々が点在する景色を眺めると何故だかいつも物悲しい気持ちになる。島は海に囲まれて孤立しているように感じるからだろうか。 そんな島を眺めるときに感じる、もの悲しさや淋しさに寄り添うような物語となっていて感情移入しやすかった。 真...

波の音や磯の香りがしてくる描写に引き込まれた。 私は、島々が点在する景色を眺めると何故だかいつも物悲しい気持ちになる。島は海に囲まれて孤立しているように感じるからだろうか。 そんな島を眺めるときに感じる、もの悲しさや淋しさに寄り添うような物語となっていて感情移入しやすかった。 真以と葉との関係、言葉は足りなくともお互いを思いやる心や言葉にはできない何か通じるものを感じる関係・・・ 羨ましく思った。

Posted byブクログ

2024/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「引き波って知っていますか、」 さり気ない表現にしたかったのか 「、」で区切る感じがとても好き。 平蔵さんの雰囲気も重なり本題が平仮名である事の意味を考えさせられる一行だった。

Posted byブクログ

2024/08/09

ハラスメントに対して 「闘えなんて、誰かに言うのも暴力だよ。聞かなくていい。女性の代表になんてならなくていい。どうにかしようと思わなくていい。自分を変えようとしなくていいよ。間違っているのは相手なんだから」 そう葉に伝える真以。 その真以を守るために、ハラスメントに立ち向かう力...

ハラスメントに対して 「闘えなんて、誰かに言うのも暴力だよ。聞かなくていい。女性の代表になんてならなくていい。どうにかしようと思わなくていい。自分を変えようとしなくていいよ。間違っているのは相手なんだから」 そう葉に伝える真以。 その真以を守るために、ハラスメントに立ち向かう力がわいてきた葉。 大事な人がいるから自分を守れるようになる、 そんな気持ちがひしひしと伝わってきました。

Posted byブクログ

2024/08/06

2024.8.6 段々と男女平等が謳われる世の中にはなってきているけど、地方の田舎や島では偏見があるし、都会の中でもまだ男社会の企業やパワハラが絶えない。

Posted byブクログ

2024/08/04

さまざまな環境や偏見、差別と戦う二人の少女とその将来の話。現代ではかなり少なくなっているが、特に若い女性は知識として知っていたほうがいいと思う。 思春期の女性や、過去にとらわれる女性の心情がうまく描写されている。

Posted byブクログ

2024/07/21

男女間にある無意識の権威性の話。ハッピーエンドにはしてくれないけれど、主人公1人1人にいろんな経験をさせ徹底的に考えさせるところ、千早さんらしくて大好き。海に囲まれた島と都内オフィスと対比させて描写していて、5感が敏感に反応した。当たり前に見ている最寄駅の改札さえ、特別なワンシー...

男女間にある無意識の権威性の話。ハッピーエンドにはしてくれないけれど、主人公1人1人にいろんな経験をさせ徹底的に考えさせるところ、千早さんらしくて大好き。海に囲まれた島と都内オフィスと対比させて描写していて、5感が敏感に反応した。当たり前に見ている最寄駅の改札さえ、特別なワンシーンのように思わせてくれる彼女の啓発力はやっぱり癖になる。

Posted byブクログ