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ウィトゲンシュタイン家の人びと の商品レビュー

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2023/10/15

文庫本とはいえ493㌻はボリューム半端なく、3分の2までは些か退屈。 何といっても100年余にわたる壮麗な一族の年代記~登場人物が多いのは当たり前ながら、姻戚・愛人と非摘出子、中心に描かれるカールと次世代の8人の子。 しかも第一次、第二次の2つの世界大戦を生きた世代であり、ウィー...

文庫本とはいえ493㌻はボリューム半端なく、3分の2までは些か退屈。 何といっても100年余にわたる壮麗な一族の年代記~登場人物が多いのは当たり前ながら、姻戚・愛人と非摘出子、中心に描かれるカールと次世代の8人の子。 しかも第一次、第二次の2つの世界大戦を生きた世代であり、ウィーンのみならず英国、アメリカ、ドイツと舞台変遷が挿入される。 主軸は装丁にもなっている「片腕のピアニスト バウル」 一族でもっとも有名なルートヴィッヒの二人。 後半3分の一がとてつもなく面白く、うまくまとまっているので理解しやすく読めた。 筆者はイーヴリン・ウォーの孫。流石の才能を感じさせる。 学生時代 伊の精神医学者 ロンブローゾの「一族に占める遺伝子作用、結果」の研究を学び、それを思い出した。 もっとも、作品の一族はとてつもない資産家、優秀、権力の地位にもついた突出した遺伝子を持っている。 が、しかし、低い社交性、自省の強い芸術嗜好、強い自殺願望と慢性的鬱・・ バウルの人生の軌跡を探るとこの一族特有の「頑固さ・強い自尊心・名誉欲」を感じる。 弟のルートヴィッヒは些か異にした性格を持っており、20世紀後半にかけて熱狂的な崇拝者もいる人気の哲学者になった。 20世紀、ウィーン、しかも「完全なるユダヤ人」とラベリングされた時間がいかなるものか、眼前に光景が浮かぶような描写だ。 純金・外国通貨を大量に保持し、しかも複雑な共有名義にしたこの一族をヒトラーが見逃すはずもなく・・名画の、ライヒスマルクへの交換等など似非弁護士やダイリン人が間に入り、苦しめられたことが語られている。 通常でも精神をズタズタにされるはず・・1944、すべてが終結を迎えたウィーンはかつての面影はなく「哀れをもよおす燃えカス)と化していたのもよくわかる。 一族の生き残った人々は癌などで朽ち果てて行った。 ノベルではなく、とてつもない社会時評ドキュメンタリーと言える。

Posted byブクログ

2021/05/13

破格の富、恐るべき才能、凶事の予感――天才哲学者と片腕のピアニストを生んだ名家の百年を、二度の大戦を背景に描いた傑作評伝。〈解説〉金原瑞人

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