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悪魔には悪魔を の商品レビュー

3.5

30件のお客様レビュー

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2021/07/08

 かつて作家志望だったぼくは学生時代にある長編作品を書いた。ひょんなことから主人公は、自分そっくりのある人間に成りすますことになり、別の人生に引っ越しを遂げる。しかし自分じゃない人間として生きることの難しさを感じて次第に追いつめられてゆき思いがけない結末を遂げるのである。ミステリ...

 かつて作家志望だったぼくは学生時代にある長編作品を書いた。ひょんなことから主人公は、自分そっくりのある人間に成りすますことになり、別の人生に引っ越しを遂げる。しかし自分じゃない人間として生きることの難しさを感じて次第に追いつめられてゆき思いがけない結末を遂げるのである。ミステリ&恋愛小説仕立てのアクロバティックな物語だった。もう原稿すら存在しないのだけれども。  本書は、行方不明になった麻薬取締捜査官である双子の兄に成りすまして、本人失踪の真相を追ってほしいという依頼を受けた主人公の物語である。二十年前から兄に会っていない弟は、アメリカで兵隊になり米国籍を取って両親の墓参りのために一時帰国したところで、この運命に遭遇するのである。二十年も会っていない弟は、兄の現在を全く知らない。  兄の知人や事件関係者に多く出くわしつつ、兄のふりをして、なおかつ失踪事件の真相に迫ってゆくというアクロバティックなこの小説の設定に、かつて自分が書いた小説の困難さを完全に思い出してつい同化しまった。  ぼくの物語と異なるのは、本書は小説作家として経験も実績もあるベテラン作家によるものであり、リーダビリティがまるで違うこと。犯罪社会を彩るブラックかつ個性豊かなキャラクターたちが遊泳する振幅の多い世界であること。怪光に満ちた騙されやすい水槽の中に揺らめく謎の楽しさ。正体を隠すことで味わう緊張感。小説を面白くする並大抵ではない設定が、スリリングとは言え、かなり楽しく多彩なのである。  登場人物の多さと、警察の中ですら、大阪・東京、マトリ・組対・所轄などと、それぞれの細分化された組織細胞の分子が出没しては対抗し合ったりする上、犯罪組織も大阪・東京、そしてベトナム社会までが絡んで、これらの間をアメリカから一時帰国したばかりの主人公が、兄のふりをして掻きまわす、というおよそ不可能性に挑んではばからない力技小説なのである。  不自然との酷評も厭わず、この仮想世界にしっかり踏み込み、エンタメ作品として完成させてくれた力技は、さすが大沢在昌とうならざるを得ない。昔から、シリーズ作品には、主人公に寄り添った丁寧な設定と緻密な書きぶりを施すが、単独作品では、どちらかと言えば遊びの多いエンタメ性をたっぷりと盛り込んだ、リーダビリティ重視の物語を用意してくれる二段構えが目立つ作家なのである。  本書は遊園地や、お化け屋敷や、スピードアトラクションに乗り込み、果敢に楽しもうとする客(=読者)にとっては申し分のないエンターテインメントであるけれど、鮫島や佐久間公や佐江に求めるような堅実かつ長期的視野は、ちと畑違いとなるかもしれない。純粋に、このけれんみたっぷりの娯楽作品を楽しんで頂ければ幸いなのである。

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2021/07/02

久しぶりの大沢在昌作品でした。 ハラハラしながら、誰を信じればいいの? 大丈夫なの?と思いながら読みました。

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2021/06/21

二十年間会っていなかった双子の兄が麻薬取締官になり、潜入捜査中に失踪していた。捜査協力を求められ、兄の行方を知るために麻薬密売組織へ潜入する将。麻薬密売を取り仕切る影の黒幕は誰なのか、そして兄の行方は。息もつかせぬサスペンス。 麻薬の密売組織、麻薬取締官、警察官、他国のエージェン...

二十年間会っていなかった双子の兄が麻薬取締官になり、潜入捜査中に失踪していた。捜査協力を求められ、兄の行方を知るために麻薬密売組織へ潜入する将。麻薬密売を取り仕切る影の黒幕は誰なのか、そして兄の行方は。息もつかせぬサスペンス。 麻薬の密売組織、麻薬取締官、警察官、他国のエージェント、とさまざまな立場の人間が登場し、しかもそれらの人間が信用に値する人間なのかどうか、まったく判断が付きません。しかもみんな癖が強い(笑)。その中で信用できる人間とそうでない人間を見分けて味方につけつつ、徐々に真相に迫っていく将の姿にははらはらさせられますが、カッコいいです。特に兄の恋人であった女性に惹かれながらも彼女との関係をきっちりとするあたり、男前だなあ。

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2021/06/16

読み応えとスリルと謎解きのバランスが良くて楽しく読めた。黒幕との対決が短過ぎるのと、肝心のスパイがストーリーに無関係人物なのが拍子抜け。続編がありそうな雰囲気で期待が持てる。

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2021/06/12

今回の敵組織はベトナム人。 前は中国やロシアが多かったなと思いつつ。 アメリカ兵として生きてきた双子の弟が帰国し、兄の振りをし組織に潜り込む。 周りは敵なのか味方なのか。 ラストボスは誰なのか。 ドキドキハラハラは少なかったけど、スピーディーな展開に一気に結末へ。 最後はちょっと...

今回の敵組織はベトナム人。 前は中国やロシアが多かったなと思いつつ。 アメリカ兵として生きてきた双子の弟が帰国し、兄の振りをし組織に潜り込む。 周りは敵なのか味方なのか。 ラストボスは誰なのか。 ドキドキハラハラは少なかったけど、スピーディーな展開に一気に結末へ。 最後はちょっとアッサリし過ぎかなぁ。

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2021/06/01

アメリカ帰りの加納将は、潜入捜査中に連絡を絶った麻薬取締官である双子の兄良を探すために、兄に成りすましまして行方を追う。誰が味方ででだれが敵か? 兄は生きているのか?設定が複雑で興味をそそるし、たくさんの魅力的なキャラが出てきているのに、緊迫した場面が少なく意外にあっさり読了。

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2021/05/24

いなくなった双子の兄を探す為に、兄のフリをして、次々と色んな人に会い、情報を集めていく。 1日に、そんなにいっぱい出来事が起こるか?とも思いながらも、その出来事に引き込まれました。 麻薬取締官、警察、潜入捜査、ヤクザの世界など、知らない世界へ吸い込まれるように、夢中になれました...

いなくなった双子の兄を探す為に、兄のフリをして、次々と色んな人に会い、情報を集めていく。 1日に、そんなにいっぱい出来事が起こるか?とも思いながらも、その出来事に引き込まれました。 麻薬取締官、警察、潜入捜査、ヤクザの世界など、知らない世界へ吸い込まれるように、夢中になれました。

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2021/05/22

20年あってない双子がそこまで似ているのか??仕草や言葉…ラストがあっけなさすぎ。 カウンタにいたはずがテーブル席とか、スマホはまだしもスマートホンはやめてくれと。

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2021/05/19

「冬の狩人」に続いて、本作も自分の好きな昔の大沢在昌の書きぶりに戻った感じがした。双子の弟が、突然姿を消した潜入捜査中の麻取の兄の消息を求めて、兄になりすまして組織の中に飛び込んでいく。話の展開としては割と単純なのだが、疑心暗鬼の中、癖のある登場人物たちとの駆け引きや淡い恋があり...

「冬の狩人」に続いて、本作も自分の好きな昔の大沢在昌の書きぶりに戻った感じがした。双子の弟が、突然姿を消した潜入捜査中の麻取の兄の消息を求めて、兄になりすまして組織の中に飛び込んでいく。話の展開としては割と単純なのだが、疑心暗鬼の中、癖のある登場人物たちとの駆け引きや淡い恋があり、それなりに面白く読了した。ただ、最後にこの人はどうなったのと思う人物がいたり、えーやっぱりそうなるのといったエンディングが物足りないかな。

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2021/04/26

舞台は瀬戸内海の小さな島から東京に移る。 主人公は双子の弟でアメリカの陸軍帰り。 ワルかった高校時代を過ごしアメリカに逃げ軍隊に入りアフガニスタンへの駐留経験を持つ。 双子の兄は真面目に大学を卒業し麻薬取締官になっており、潜入捜査の途中で失踪したと告げられる。 肉親のいない双子の...

舞台は瀬戸内海の小さな島から東京に移る。 主人公は双子の弟でアメリカの陸軍帰り。 ワルかった高校時代を過ごしアメリカに逃げ軍隊に入りアフガニスタンへの駐留経験を持つ。 双子の兄は真面目に大学を卒業し麻薬取締官になっており、潜入捜査の途中で失踪したと告げられる。 肉親のいない双子の片割れとして、主人公は兄を探す捜査に協力する。 ベトナム料理屋の美人マネージャーや、ヤクザ、売人と魅力的な人物が登場する。 ストーリーは予想通りに進み読みやすい。 大どんでん返しか、大アクションシーンを期待したので少々残念。 大沢ワールド好きには面白い。

Posted byブクログ