分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議 の商品レビュー
【おすすめポイント】2020年初頭、大型クルーズ船での集団感染が報告され中国武漢市での都市封鎖が始まった頃、日本の各都市でも感染が広がり政府に専門家会議が置かれました。2020年2月から6月、初期の混乱期のドキュメントです。政府の対応や専門家たちの苦悩、日本の状況が見えてきます。...
【おすすめポイント】2020年初頭、大型クルーズ船での集団感染が報告され中国武漢市での都市封鎖が始まった頃、日本の各都市でも感染が広がり政府に専門家会議が置かれました。2020年2月から6月、初期の混乱期のドキュメントです。政府の対応や専門家たちの苦悩、日本の状況が見えてきます。 【請求記号】498.6:Ka 【配置場所】2階 【URL】https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28184592
Posted by
うーん、最後の尾身さんの座右の銘の、「天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。生まるるに時があり、死ぬるに時があり、植えるに時があり…」これは旧約聖書の言葉だそうだが、人間の個々の気持ちなど歯牙にもかけないリアリティの強さがあるという言葉、つまりは、個人個人の...
うーん、最後の尾身さんの座右の銘の、「天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。生まるるに時があり、死ぬるに時があり、植えるに時があり…」これは旧約聖書の言葉だそうだが、人間の個々の気持ちなど歯牙にもかけないリアリティの強さがあるという言葉、つまりは、個人個人の感傷などではない、大局を見ての諸々を決めていく度胸というか、根性というか。あの数ヶ月、いや実は今もかもしれないが、批判も轟々だったろうに、やりきった強さはそこにあったんだろうな。 に、してもこんなに長引くものだとは、思ってなかったな、この頃は。
Posted by
一気読み。尾身副座長を中心とした専門家と内閣官房・厚労省のコロナ対策の連携を描く。官僚が無謬性の原則から思っていた以上に硬直していた。それは本来あるべき姿ではない。政策選択によって被害を被る国民の一部からしてみれば甚だ迷惑な話だろうが、間違いもあることを認めて、反省して次に繋げる...
一気読み。尾身副座長を中心とした専門家と内閣官房・厚労省のコロナ対策の連携を描く。官僚が無謬性の原則から思っていた以上に硬直していた。それは本来あるべき姿ではない。政策選択によって被害を被る国民の一部からしてみれば甚だ迷惑な話だろうが、間違いもあることを認めて、反省して次に繋げるという謙虚さを持つことが肝要なのではないか(理想論に過ぎないと言われそうだが)。コロナの状況に関する西浦氏のインフォームドコンセントと厚労省のパターナル的対策は科学者と政策担当者の違いを示していて興味深かった。どちらも正しいしどちらも間違っているので答えが出ない。 押谷さんのブリコラージュの話(p138)は特に大事だと思ったのでここに書いておく。 尾身さんはかなり多方向の圧力を捌いているはずなのに常に飄々としていたようで筑駒生らしいなと感じた(笑) 2021/5/19
Posted by
間違いを認める所は認める専門家と、間違いをしない事を目的とする役所と政権。 この間の丁々発止のやり取りは、言葉では表し切れないと思うが、どちら側に重心をおくでもなく、フラットな立場で描かれてるので、それぞれの立場の違いや当事者の覚悟が伝わり、臨場感が感じられた。
Posted by
読むきっかけ:新聞広告で知り、専門家会議の運営に興味を持つ。 尾身氏をはじめとする専門家の矜持に低頭する。 以下、文中の尾身氏の心に響いた言葉。 「サイエンスというのは失敗が前提。新しい知見が出てくれば、前のものは間違っていたということになる。そういう積み重ねが科学であり、...
読むきっかけ:新聞広告で知り、専門家会議の運営に興味を持つ。 尾身氏をはじめとする専門家の矜持に低頭する。 以下、文中の尾身氏の心に響いた言葉。 「サイエンスというのは失敗が前提。新しい知見が出てくれば、前のものは間違っていたということになる。そういう積み重ねが科学であり、さらに公衆衛生はエビデンスが出揃う前に経験や直感、論理で動かざるをえない部分がある。一方で役所は間違わない、間違いたくないという気持ちが強かった。」 「リーダーは感情のプロである必要がある。リーダーとは何かといった本には、決断力やコミュニケーション、大きな方向性を示すことなどが書いてありますが、でももっとも重要で難しいのは、感情の、怒りのコントロールです。怒ったとしても、根拠のある怒りが必要だ。後で尾を引かないような怒り方をすることが重要です。」
Posted by
2020年の年明け以降、世界は新型コロナウイルス感染症に蹂躙された。 中国・武漢から始まり、世界へと滲みだした感染症は、多くの死亡者を出しながら、野火のように広がった。人と人とが触れ合うことで広がる感染症の性質から、多くの国で都市封鎖(ロックダウン)や活動・往来の抑制が行われ、経...
2020年の年明け以降、世界は新型コロナウイルス感染症に蹂躙された。 中国・武漢から始まり、世界へと滲みだした感染症は、多くの死亡者を出しながら、野火のように広がった。人と人とが触れ合うことで広がる感染症の性質から、多くの国で都市封鎖(ロックダウン)や活動・往来の抑制が行われ、経済にも大きな影響が出た。 現在のところ、日本では第五波がほぼ収束し、落ち着きを見せているが、世界全体では感染の再上昇が見られる国もあり、なお予断を許さない。 本書では、日本で、2020年2月~7月に設置された新型コロナウイルス感染症専門家会議の成立から解散までを追う。 先が見えない中で、構成員である専門家も、何度か「ルビコン川を渡る」決断をし、「分水嶺を越える」経験をする。誰も本当の未来が確実には予測できない中、専門知識を武器に、より良い方向へと社会の舵取りをしようという、それは必死の毎日だったのだ。 本書では、専門家会議の構成員の証言から、専門家会議がどのような経緯で発足し、中では実際、どのような議論が行われていたのかを再構成する。 専門家会議の前身である厚労省アドバイザリーボードができたのはダイヤモンド・プリンセス号が横浜に入港した2020年2月3日。構成員は12名。それがそっくりそのまま、2週間後に内閣官房付の専門家会議となった。 そもそも感染症は完全に防ぐことは困難であるうえ、相手は未知のウイルスである。どのような対策を取るのがよいのか、手探りが続く。 専門家会議としては、市民にわかりやすく科学的に正しい知識を伝えることが急務だった。 しかしそこにはどうしても政治が絡む。出そうとする文言にチェックが入り、せめぎ合いが続く。ここは譲って、ここは譲らない。感染症を抑えるために、市民にどのように伝えるのが効果的かを予測しながらの判断となる。 対策を取るにはまずデータ収集が重要なわけだが、ここからして非常にアナログだった。各自治体で書式が異なるうえ、基本は紙ベース。学生ボランティアなどがそれに眼を通し、必要な情報をピックアップしていく。まずは書式を揃え、情報を入手しやすい形にまとめる試行錯誤が続く。 個人情報であるため、取り扱いも困難である。データ分析をするために専門家がやってきたのに、権限がなくてデータにアクセスできないなどということも起こる。 また、当初使用されていた部屋は通信環境が充実しておらず、各々が持ち寄ったルーターで通信していた。何しろこの手のデータは重い。1ギガ、2ギガというものを数回やり取りしただけで、全員がWi-Fiにつながらなくなることもあった。これではオンライン会議も無理。スマホを数台並べてスピーカーモードにし、電話会議を行うことすらあった。 そんな中で、日本独自の三密回避やクラスター対策といった方針が決められていく。 感染が広まるにつれ、苛立ちは専門家に向けられることも増えていった。専門家の立場としては提言を行っているわけだが、記者会見などで具体的に話をするのは専門家であることが多く、どうしても注目が集まってしまう。 脅迫を受ける者が出る。心身を壊す者も出る。訴訟を起こされた者すらいる。ギリギリの状況で激務が続いた。 市民の側は、具体的な数字を欲しがる。緊急事態宣言が出た後、〇万人中、△人の発症者であれば解除できるといった形のものである。しかし、いくら専門家でも確実なことは言えないわけである。そこをどう判断し、どう落としどころを見つけるか。専門家の間でも激論が交わされる。 実のところ、専門家会議という組織には、その存在に法的根拠がなかった。 その中で、危機感から「前のめり」の強めの対策を訴えてきたわけだが、いささか無理が生じてきた。1つは専門家自身が政策を決定しているように受け取られる恐れがあること。もう1つは経済への影響が多大になり、感染症の専門家だけの議論では収まらなくなったこと。 専門家会議は解散の方向へと向かう。 2020年7月3日、専門家会議は廃止、以後、新型コロナウイルス感染症対策分科会として活動していくことになる。 本書の内容はここまでだが、周知のとおり、その後、GoToトラベルやオリンピックを経て現在に至る。 新型コロナウイルスパンデミックを総括するにはまだ早いが、手探り状態で進んでいた緊迫のドキュメントとして、読み応えのある1冊である。
Posted by
日本における新型コロナウイルス対応の記録。科学者だけで物事を進めることは良くないし、政治家だけでも良くはない。稀に見る事態ゆえに、対応する人員のバランスをとることがとても難しいところであるが、今後の対応を考える上で資料価値のあるノンフィクションだ。
Posted by
【琉球大学附属図書館OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC06731073
Posted by
HONZノンフガイドから。もう何だか、ひと昔前という気すらしてしまうけど、コロナ渦にまさに突入せんとする最初期の混沌を収めた一冊。この時期は、さっさと任務をほっぽり出した前々首相の末期とも重なる訳だけど、良心たる本会議の存在すらもし無かったとしたら、果たしてどこまで愚かな暴走が突...
HONZノンフガイドから。もう何だか、ひと昔前という気すらしてしまうけど、コロナ渦にまさに突入せんとする最初期の混沌を収めた一冊。この時期は、さっさと任務をほっぽり出した前々首相の末期とも重なる訳だけど、良心たる本会議の存在すらもし無かったとしたら、果たしてどこまで愚かな暴走が突き進んでいたんだろう…と、改めてゾッとする。本書は表立って、まだまだ不気味な謎が多かったウイルスに対し、その時点での最適解を求めんとする会議メンバーの奮闘録なんだけど、その裏側に見え隠れする、ときに有害とすら思える政権の存在もしっかりと記録されている。今後当然、後方視的検証も重要になってくるけど、その中で、本書は重要なルポ足り得ると考える。
Posted by
とにかく私たちを投げ出さずに対策を考えてくださり、感謝しかないです。 文句を言う前に、読んで欲しい本だと思いました。 自分にはこれができるような能力はないので、専門家はやはり重要と思いました。 この本が一番わかりやすかったです。
Posted by