西部邁 の商品レビュー
途中ではとても違和感があった。西部邁が、「移民国家(移民共同体)」として出身地である北海道とアメリカを等値させることに対し、縄文の昔まで遡り、北海道には倭人が住んでいた、アイヌ人は11世紀にオホーツクから渡来したのだから北海道はアイヌ人のものだという西部は間違っていると、といわれ...
途中ではとても違和感があった。西部邁が、「移民国家(移民共同体)」として出身地である北海道とアメリカを等値させることに対し、縄文の昔まで遡り、北海道には倭人が住んでいた、アイヌ人は11世紀にオホーツクから渡来したのだから北海道はアイヌ人のものだという西部は間違っていると、といわれてしまうと、なんだかなあ、こんなことで西部に反論した気になっているのか、と残念に思ってしまった。縄文時代に北海道に住んでいた倭人と、明治時代に北海道に移民として入植した日本人の間には何ら連続性がない。明治の入植者がどう感じるかが大事で、縄文時代を持ち出しても何の意味もないだろう、と思うのである。 またm自死やニヒリズムに関する考察も、たいした根拠のない推論を積み重ねて、結論らしきものを導こうとするのは、違和感しかなかった。 にもかかわらず、最終的な結論部分は強く共感してしまう閉め方だった。他にも共感ポイントは多々ある。 結局、西部邁という人の複雑さ、多様な顔をもつ思想が、彼に対するさまざまな味方を生むのだろう。だから、本書の著者の見方も否定はできない。
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