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鍵穴 の商品レビュー

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22件のお客様レビュー

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2021/03/24

ヴィリアム・ヴィスティング警部! 『カタリーナ・コード』からおよそ一年、また、あなたに会えて心底嬉しい。 事件を丁寧に探っていく、その手腕が見られて光栄だ。 今度の事件もまた派手なところがなくて、最高だ! 「派手さがない」  これが、ヴィスティング・シリーズの、なによりの魅力...

ヴィリアム・ヴィスティング警部! 『カタリーナ・コード』からおよそ一年、また、あなたに会えて心底嬉しい。 事件を丁寧に探っていく、その手腕が見られて光栄だ。 今度の事件もまた派手なところがなくて、最高だ! 「派手さがない」  これが、ヴィスティング・シリーズの、なによりの魅力である。 原型をとどめない血みどろの死体も、儀式的に装飾された現場もない。 個性的な風体で、突飛なことを言う探偵も助手もいない。 ヴィリアム・ヴィスティングは一警部である。 実直で、一つ一つの手順をおろそかにしない、感情に流されず、要らぬことを言わず、人の話を聞き、その人を見て、人となりを推し量り、部下の性質と能力を信頼する、警部である。 破綻した家庭でもなく、あぶなかしい健康状態でもない、ごく普通の人物だ。 だから、読者はよけいな心配をすることなく、安心して、「なにがあったのか」を考えることができる。 ヴィスティング警部とともに。 「なにがあったのか」 今回の話はまさにこれだ。 大金があったのだ。 なくなったのではない、消えたのでもない。 あったのだ。 その大金が、なぜ、どうして、どこから来たのかを捜査するのである。 極秘裏に調べよと、ヴィスティングは命じられる。 信頼できる鑑識官を呼んで、ヴィスティングがまずとりかかったのは、お金を数えることだ。 地味だ。 金額は驚くべきものだったが、作業は地味だ。 その地味な作業から見つかった小さなことから、次の一歩を決めるのだ。 極秘チームの人員に仕事を割り振り、結果を聞き、さらに見つかった小さなことから、次の一歩を決め、割り振り、くりかえし、くりかえし・・・・・・。 『ヴィスティングは手帳に時系列の順にまとめておいた要点に目を通した。捜査はかならずこの作業からはじまる。日時やキーワード、疑問点、ちょっとした思いつきを書きつけていく。無意識のうちにいたずら書きをしていることもある。』(47頁) 『寝床に入ったものの、眠れずに寝返りを繰り返した。経験上、こんなときは何時間も寝つけないと知っている。無駄に悶々とするばかりで、疲労だけが残ることになる。』(199頁) 作者ヨルン・リーエル・ホルストは、ノルウェー警察の上級調査官だった。 ヴィスティングの捜査中に見せる顔、語る言葉などは、作者の実体験によるものだろう。 そうした一文は妙に現実味をおびて、他にない重みを感じさせる。 娘リーネは、父のそんな一面を初めて目の当たりにした。 もとは大手全国紙《VG》社の、今はフリーのジャーナリストであるリーネは、これまでもジャーナリストとして出来うる限り父の仕事を手伝っていた。 そして、今回は、父のチームの一員、"捜査官"として、事件にあたることになる。 リーネは、いつもと同じ姿勢で仕事に取り組んでいたのだが、厳しい父の姿に、戸惑いを覚えてしまう。 仲の良い、信頼しあっている、理想的な親子関係であるはずの、父ヴィスティングと、娘ヴィスティング、二人の、いつもとちがうやりとりも、この『鍵穴』の読みどころである。 そして、ヴィリアム・ヴィスティングの、つい孫に甘くなる面もだ。 この警部ヴィスティング・シリーズのさらによいところは、一見さんにとても親切なことである。 その理由は、以前ブログにて述べた。 だから、この『鍵穴』から読んでもまったくかまわない。 しかしもちろん、シリーズ順に読みたい方もいるだろう。 順番を知りたい方も、同じくこちらへどうぞ。 https://ameblo.jp/konstanze0317/entry-12622038396.html?frm=theme

Posted byブクログ

2021/03/17

ヴィスティングシリーズ。警察小説として決して派手なものではなく地道に捜査していく展開が個人的には好み。なかなか繋がっていかない捜査と未解決事件を追う難しさが感じられるのもいい。未解決事件四部作ということで残りの二作も早く読めることを期待。

Posted byブクログ