アニメと戦争 の商品レビュー
優れた作品ほど時代を反映しているんだと思った。制作者が魂を込めて作ったからこそ、その人や世代の価値観、戦争感がでるんだなあ
Posted by
歴史学者の成田龍一さんが提唱する時代の4区分※をベースに、戦中戦後のアニメの中に内在する日本人にとっての戦争意識を浮き彫りにした作品です。 ※ 1:戦争が実際に行われていた「状況」の時代。2:語り手も聞き手も戦争体験がある「体験」の時代。3:戦争を知らない人が聞き手となる「証言...
歴史学者の成田龍一さんが提唱する時代の4区分※をベースに、戦中戦後のアニメの中に内在する日本人にとっての戦争意識を浮き彫りにした作品です。 ※ 1:戦争が実際に行われていた「状況」の時代。2:語り手も聞き手も戦争体験がある「体験」の時代。3:戦争を知らない人が聞き手となる「証言」の時代。4:戦争体験のない人が多数を占める「記憶」の時代。 紹介されたアニメの殆どがYouTubeで視聴できたため、都度確認しながら読書しました。 読了までに時間がかかりましたが、アニメの確認は理解に役立ちました。 記載のアニメの中で一番腑に落ちた作品は、『ゲゲゲの鬼太郎』の「妖花」でした。 時代が変わる都度、主体と客体の時間間隔がどんどん開いていきます。 どのように表現すれば、戦争を自分に繋がる問題として理解できるのか。それを明確に表した作品だと思いました。 そもそもどうして戦争がなくならないのか。民族宗教気候の違いといった想像できる原因はともかく、もっとシンプルな源はどういうものなのだろう。 それは、あの人が嫌い、あの人ずるいななどの、自分にとって理不尽に感じるものなのかなと思いました。 となると、このような感情は大なり小なり皆がこの種を持っています。ゆえに、戦争の「種」を根絶することは難しいのかもしれません。 アニメは、双方の立ち位置を踏まえて、リアルを突き詰めて描くこともできますし、デフォルメして描くこともできます。シビアな部分を薄めることも濃くすることもできます。 アニメは戦争の証言をナレッジし、戦争の「種」の芽吹きを抑止するチャネルでもあるのだと感じました。 現代ではインターネットが普及し、アニメの鑑賞を即座にシェアできる環境にあるため、アニメが単一的なプロパガンダになることはあまりないかと思いますが、以前として戦争の「種」のスイッチを持っています。 その不穏さが丁寧に記述されていた本でした。
Posted by
歴史をたどりながら、アニメは戦争をどう描いてきたかをひもとく。「状況」の時代、「証言」の時代、「記憶」の時代という指標を掲げ、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」、「超時空要塞マクロス」、「紅の豚」、「風立ちぬ」、「この世界の片隅で」など具体的な作品をあげて、制作者の思想と社...
歴史をたどりながら、アニメは戦争をどう描いてきたかをひもとく。「状況」の時代、「証言」の時代、「記憶」の時代という指標を掲げ、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」、「超時空要塞マクロス」、「紅の豚」、「風立ちぬ」、「この世界の片隅で」など具体的な作品をあげて、制作者の思想と社会状況の変化を追う。アニメ評論を通して時代をとらえようとした意欲作である。
Posted by
アニメにおける戦争の扱いがどのように変わってきたか、そしてその扱いの変化はなぜ起こったかを歴史に沿うようにして解説した本である。 自分が知っている戦争アニメは「この世界の片隅に」と「はだしのゲン」と「風立ちぬ」程度だったので、野球アニメとして名高い「巨人の星」が実は戦争に影響され...
アニメにおける戦争の扱いがどのように変わってきたか、そしてその扱いの変化はなぜ起こったかを歴史に沿うようにして解説した本である。 自分が知っている戦争アニメは「この世界の片隅に」と「はだしのゲン」と「風立ちぬ」程度だったので、野球アニメとして名高い「巨人の星」が実は戦争に影響された作品であることや、湾岸戦争という日本人が直接的には関係していない戦争をテーマに入れた「パトレイバー2」のような作品があることを初めて知った。
Posted by
アニメやゲームなどのフィクションがなぜ戦争を用いてきたか。なぜ用いなければならなかったのか。ということに、いちオタクとして長らく疑問に思っていました。 本書ではあくまで日本のアニメ作品における分析でしたが、日本の作品群を考えるのに十分な思考を与えてくれました。 20世紀初頭か...
アニメやゲームなどのフィクションがなぜ戦争を用いてきたか。なぜ用いなければならなかったのか。ということに、いちオタクとして長らく疑問に思っていました。 本書ではあくまで日本のアニメ作品における分析でしたが、日本の作品群を考えるのに十分な思考を与えてくれました。 20世紀初頭から日本は世界戦争に参加し、その中で生きた人々の思いが込められていること、そして、終戦後の世代における戦争の未経験がエンターテイメント的戦争として現れてきたことが分かりました。 本書に挙げられたアニメ作品のいくつかは見たことがありましたが、それが戦争に対してどのような姿勢で描かれたかを考えたことはありませんでした。そもそも、アニメは娯楽で享楽的であり、言ってしまえば、製作者の性癖やエゴが詰め込まれた楽しけりゃそれでいいの世界だと考えていたからです。ですが、本書のおかげで自分が確かに引き込まれた世界観の中にはっきりとした意図が込められていることに気づくことができました。 今後、フィクションを見たときにそれが本書で書かれたどの象限に位置するか考えてみようと思いました。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人は幼児期や青年期に社会情勢に影響を受ける。 と同時にその頃の創作物を受け取る。 成年以降数十年かけて、かつての影響を保ちつつ、現在に通用するものを作る。 それを見た視聴者もまた同じ流れで、先行者に憧れを持ったり批判したり仮想的にしたりしながら、作り手になる。 というサイクル。 このサイクルを意識しているからこそ、単なる世代論に陥らない「アニメと戦争」論ができている。 折に触れて読み返したい。 なんで庵野秀明「エヴァ」を取り扱ってないねんと最初は思っていたが、著者がニコ生で言うことには、 ロジェ・カイヨワによる戦争の定義「破壊のための組織的企て」→軍事的なもの同士の争いがあるかどうか、が基準。 エヴァは自己確立(成長)の話だから、ということらしい。 @ はじめに 1 『ゲゲゲの鬼太郎』という“定点” 2 『桃太郎 海の神兵』の同時代性と断絶 3 少国民世代、「戦争」を描く 4 『宇宙戦艦ヤマト』の抱えた分裂 5 誰も傷つかない「戦争ごっこ」の始まり 6 「ポスト戦後」時代の戦争アニメ 7 ポスト戦後の中の「過去の戦争」と「未来の戦争」 8 『紅の豚』の苦悩、『パトレイバー2』の現実 9 冷戦後の「アニメと戦争」を構成する三要素 10 二一世紀にアジア・太平洋戦争を語ること おわりに 成田龍一。状況の時代1931-1945、体験の時代1945-1965、証言の時代1965-1990、記憶の時代1990-。 悔恨共同体……戦前世代1910-、戦中世代1920-、少国民世代1930-生まれ。 藤津亮太 水木しげる 大塚英志 梶原一騎 石ノ森章太郎 永井豪 辻真先 西川義展 石黒昇 松本零士 富野由悠季 高橋良輔 河森正治 美樹本晴彦 高畑勲 宮崎駿 押井守 神山健治 島田フミカネ 水島努 荒巻義雄 田中芳樹 司馬遼太郎 こうの史代 片淵須直 会田誠
Posted by
戦前、戦中、戦後と年代ごとにアニメの中で「戦争」がどう扱われてきたかを、真正面から“評論”している。意識的かどうかに関わらず、時代によって見事に移り変わっていく「戦争」の扱われ方が、スパスパと論拠されていて、読んでいて心地よい。実際自分がリアルタイムで観ていたガンダムとマクロスの...
戦前、戦中、戦後と年代ごとにアニメの中で「戦争」がどう扱われてきたかを、真正面から“評論”している。意識的かどうかに関わらず、時代によって見事に移り変わっていく「戦争」の扱われ方が、スパスパと論拠されていて、読んでいて心地よい。実際自分がリアルタイムで観ていたガンダムとマクロスの間の数年でも、その戦争の取り扱い方が違うのにも、時代背景的理由があったのねと納得できた。とりあえずパトレイバー2の録画残ってたはずだから、ちゃんと観てみよう。
Posted by
- 1
- 2