敗北への凱旋 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「戦争というのは人の命を無視して行われるものです。国を広げるために、国の力を増すために、国を守るために、その国に住む人々の命を無視して起こされるものです」 2022/1/27読了 暗号ミステリではあるが、暗号の解き方も事件の動機も難解で、今ひとつピンと来なかった。軍の偉いさんが、若妻の不貞の相手を殺す為に戦場に送り込むって話は、チェスタトンにもクリスティにもあったような気もするし、ミステリというよりは、戦争(を起こした罪)をテーマにした文学作品という方がしっくり来る。何はともあれ、柚木先生は良いお婿さんを貰いましたね。
Posted by
連続殺人事件と残された楽譜の謎 楽譜の謎はさっぱりわかりませんでした 人間関係も入り組んでいて大変でしたが 楽しめました それにしても創元推理文庫は字が小さい・・・
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
美しいミステリ。美しい暗号。 戦後の混乱の中の一つの殺人事件。二十数年後にその被害者のことを知り、それを題材にしようとする小説家。雑誌掲載を止めさせようとする謎の女性。 全滅が予想される出撃の前夜、月明かりの中で指を重ねて運指を伝えるシーンがあまりにも美しくて、悲しくて、心に残った。
Posted by
著者、連城三紀彦さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。 連城 三紀彦(れんじょう みきひこ、1948年1月11日 - 2013年10月19日)は、日本の小説家。真宗大谷派の僧侶。本名:加藤 甚吾(かとう じんご)。 父の実家が浄土真宗の寺で...
著者、連城三紀彦さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。 連城 三紀彦(れんじょう みきひこ、1948年1月11日 - 2013年10月19日)は、日本の小説家。真宗大谷派の僧侶。本名:加藤 甚吾(かとう じんご)。 父の実家が浄土真宗の寺であったことから、1985年に東本願寺で得度している。法名は智順。 2009年に胃がんが見つかり闘病生活を送る。2013年10月19日、胃がんのため名古屋市内の病院で死去した。65歳没。 今回読んだ、『敗北への凱旋』。 著者が30代の時に書かれた作品になります。 書き出しは、 瓦礫を薄くまとった焼野に、夕闇はゆっくりと降りてきた。 昭和二十年八月十五日ー と、中々重厚で、思わず姿勢を正してしまいます。 で、こちらの作品の内容は、次のとおり。(コピペです) 終戦から間もない降誕祭前夜、まだ焼け跡の残る横浜・中華街の安宿で死体となって見付かった隻腕の男。才気あるピアニストとして将来を嘱望されながらも戦争によって音楽の道を絶たれた男は、如何にして右腕を失い、名前を捨て、悲惨な末路を辿るに到ったのか。そして、遺された楽譜に仕組まれたメッセージとは――ミステリ史上最高難度の、そして美しい暗号が浮かびあがらせる、もうひとつの戦争。名匠の初期を代表する長編が甦る。
Posted by
昭和の香り漂う暗号サスペンス。1983年に発表された作品である。第2次大戦前後から1960年台を舞台にし、戦争がもたらした悲劇をサスペンスにしたて、また暗号を用いた謎解きを加味している。暗号自体はとても複雑で一読しただけではわかりにくいが、昭和初期の時代背景と戦争の影響、それにサ...
昭和の香り漂う暗号サスペンス。1983年に発表された作品である。第2次大戦前後から1960年台を舞台にし、戦争がもたらした悲劇をサスペンスにしたて、また暗号を用いた謎解きを加味している。暗号自体はとても複雑で一読しただけではわかりにくいが、昭和初期の時代背景と戦争の影響、それにサスペンスと愛憎を複雑に絡ませながら描いている。現代にはない文章の美的表現力も味わえる。
Posted by
終戦直後に殺害された隻腕のピアニストが遺した楽譜。時を経て、そこに秘められた暗号が解き明かされる時、驚愕の真相が浮かび上がる―。著者の長編作品を読むのはこれが初めて。楽譜アレルギーの私は暗号の解読を早々に諦め、筋読みに集中。音楽家の悲運な生涯を辿ると思いきや、第四章から一気に色合...
終戦直後に殺害された隻腕のピアニストが遺した楽譜。時を経て、そこに秘められた暗号が解き明かされる時、驚愕の真相が浮かび上がる―。著者の長編作品を読むのはこれが初めて。楽譜アレルギーの私は暗号の解読を早々に諦め、筋読みに集中。音楽家の悲運な生涯を辿ると思いきや、第四章から一気に色合いが変わり、男女の三角関係を巡る真実が明かされていく。初期作とあってか、物語のスケール感と愛憎劇の狭小さがミスマッチな印象を受けるが、犯行動機への飛躍の仕方が実に独創的。戦争の悲惨さを訴える著者の痛烈なメッセージが込められた作品。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
連城三紀彦を読むには、覚悟と時間が要る。 その主題やテーマがどうあれ、あまりに美しい文体と表現に、幾度も手が止まり、一語一語を味わうように読んでしまうから、読了するまでに長く時が掛かる。ミステリの仕掛けさえも同様で、もはや詩文に近い。しかし、美しさは毒だ。甘美な毒は、一度躰に含めば止められない。 今作は暗号ミステリの体裁で描かれるが、作者も、恐らく読者も、暗号を解くことに主題をもとめていない。 あまりに難解な暗号の仕掛けは、驚くためのものではなく、この作品の終盤に爆発する、戦争という愚かな行為を糾弾する導火線なのだが、この線の歪みに絡め取られる登場人物たちの、絶望と怒り、そして哀しみによって徐々に引火されていく。 寺田の愛、鞘間の孤独で卑しい嫉妬、そして、全ての「責任」を背負い、ひとり業火に焼かれて生きていく道を選んだ文香。彼らが放った炎が、歴史でも、運命でも、宿命でもなく、日本を呑み込んだあの戦渦ならば。 連城と同じく、戦後間もなくに生まれた世代の秋生は叫ぶ。「戦争自体が一億人を犠牲にしようとした無差別殺人だったのではありませんか」 復刻に意義のある物語。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
解かれた暗号が暗示する、空前絶後の殺人事件。これはすごいや。筋の運びは偶然だよりが過ぎる気もするが、その分、メインプロットの展開には無駄がない。なんというか鮮やか。
Posted by
- 1