翻訳教室 の商品レビュー
「誰かと言葉を交わすというのは、他者と解釈をやりとりすること。」 「みんな知らず知らずのうちに自分の想像力の箱のなかで、生きてしまっている」
Posted by
翻訳についての話は米原さんくらいしか読んではいないのか。米原さんに通じるものもあれば、新しい発見もあり。
Posted by
ちょうど英語書籍を翻訳しており、単純な「和訳」の作業とは全く別の作業だと感じていたために読んだ。 完全に中立な翻訳作業、すなわち「何も足さない、何も引かない」というのはあり得ないし幻想(p.196)であり、訳者は自分が原文から読み取ったものを大胆に引き受けて訳文を作っていくのだ...
ちょうど英語書籍を翻訳しており、単純な「和訳」の作業とは全く別の作業だと感じていたために読んだ。 完全に中立な翻訳作業、すなわち「何も足さない、何も引かない」というのはあり得ないし幻想(p.196)であり、訳者は自分が原文から読み取ったものを大胆に引き受けて訳文を作っていくのだ、という主張が心に残った。
Posted by
NHKの番組『課外授業 ようこそ先輩』をもとにした本。鴻巣友季子氏が母校の世田谷区立赤堤小学校の6年生に翻訳を教える。英文法も辞書の引き方もきちんと習っていない小学生が『Missing Piece』を訳す過程が面白く、しかも時にはなかなかの名訳に出くわしたりもする。 鴻巣氏によ...
NHKの番組『課外授業 ようこそ先輩』をもとにした本。鴻巣友季子氏が母校の世田谷区立赤堤小学校の6年生に翻訳を教える。英文法も辞書の引き方もきちんと習っていない小学生が『Missing Piece』を訳す過程が面白く、しかも時にはなかなかの名訳に出くわしたりもする。 鴻巣氏によれば、翻訳で大切なことは、「想像力の枠から出ようとすること。少なくとも、出ようとする意識をもつことです。言い換えれば、人間は自分の想像力の壁のなかで生きている。そのことを忘れないことだと思います」。 だから鴻巣氏は、他者になりきること、世田谷線の列車の視点で物を見て列車の立場で考えることから翻訳のレッスンを始める。 他者になりきることで「訳者が消える」、「透明な翻訳」が生まれる。それは受動的(機械的)な翻訳のことではない。翻訳は「英文和訳」ではない。翻訳とは「深い読書」。 "I love you"を文豪たちがどう訳したかという話が面白かった(『I Love Youの訳し方』という本もあった)。なるほど、「見る角度によって言葉の姿はずいぶん変わる」。翻訳に正解はない。正解がなければ誤答もない。想像力に正解も誤答もないのだから。
Posted by
小学生に「自分を探して」の絵本を翻訳させる学習を行なう授業実践から翻訳をかんがえさせるということである。その前に自分が世田谷線になった気持ちで作文を書く、という実践はおもしろい。 後半は翻訳ということを超えて言語について、さらに会話一辺倒の英語教育への批判が入っている。 小...
小学生に「自分を探して」の絵本を翻訳させる学習を行なう授業実践から翻訳をかんがえさせるということである。その前に自分が世田谷線になった気持ちで作文を書く、という実践はおもしろい。 後半は翻訳ということを超えて言語について、さらに会話一辺倒の英語教育への批判が入っている。 小学生の英語教育のいい実践として見本になるであろう。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
私英語の本を読んでない。なんでだろう。読んでない。読めなくなってるのかもしれない。なんでだろう。 翻訳の本質的な部分と、読むこと。文庫あとがきがよかった。
Posted by
こんな授業を小学生の時に受けられたら、自分を取り巻く世界の捉え方もずいぶん変わっただろうな、と感じました。 「翻訳」という言葉を、単なる技術でなく、職業ということでもなく、「書き手が言葉に託した想いや考えを能動的に掴みに行く営み」みたいな感じで、もっとずっと深い部分で普遍的なこ...
こんな授業を小学生の時に受けられたら、自分を取り巻く世界の捉え方もずいぶん変わっただろうな、と感じました。 「翻訳」という言葉を、単なる技術でなく、職業ということでもなく、「書き手が言葉に託した想いや考えを能動的に掴みに行く営み」みたいな感じで、もっとずっと深い部分で普遍的なことを伝えようとしている一冊だと思います。
Posted by
「そうそう、だから語学、翻訳はおもしろいんだ!」 と読みながらうなずけた本。 言語というのは、人間にとってはコミュニケーションの道具であると同時に、考える枠組みでもある。 だから、母語以外の言葉を学び、理解しようとすることは、鴻巣さんの言葉をお借りすれば「想像力の壁を広げること...
「そうそう、だから語学、翻訳はおもしろいんだ!」 と読みながらうなずけた本。 言語というのは、人間にとってはコミュニケーションの道具であると同時に、考える枠組みでもある。 だから、母語以外の言葉を学び、理解しようとすることは、鴻巣さんの言葉をお借りすれば「想像力の壁を広げること」。 つまり、自分とは違う他者を理解しようとする、終わりのない取り組み。 途方に暮れそうにもなるけれど、わくわくする。 英語と日本語の翻訳を勉強しはじめて、2つの言語の視点の違いに直面している。 日本語では、視点が基本的に「人」にあると思う。 それに対し、英語では多くの場合「空中」にあると私は思っている。神視点とも呼ぶらしい。 空中からの視点で書かれた英語の文を、同じように空中からの視点で日本語にすると、妙によそよそしい文になってしまったりして、悩まされる。 この本の中でも、まだ英語の単語や文法をほとんど知らない小学生どうしが、英語学習歴20年くらいの私が最近悩み始めたような、翻訳の本質に迫るような議論をしていて、とても驚いた。 鴻巣さんも実際に驚かれたようだ。 翻訳を勉強中の今、この本に出会えてよかった。 学んでいると、どうしても「どうすれば正しくて自然な訳ができるか」といったような、手っ取り早いハウツーに飛びつきたい欲求にかられそうになる。 でも翻訳とは、そんな機械的な作業ではなく、的確に読み、一時的に他人になること、そして最終的には自分に戻って書くことなのだ、と諭された気持ち。 地道に、「想像力の壁」を広げていきたい。
Posted by
NHKの番組、ようこそ先輩を元に文庫化された本。うまい翻訳のコツ等ではなく、もっと本質的な部分を語る内容となってます。 読書や他言語を学ぶ醍醐味についての鴻巣さんの考えに、そうそう!と頷きながら読みました。 特に印象に残った部分をメモ。 「あのとき悲しい話だと思ってたけど、...
NHKの番組、ようこそ先輩を元に文庫化された本。うまい翻訳のコツ等ではなく、もっと本質的な部分を語る内容となってます。 読書や他言語を学ぶ醍醐味についての鴻巣さんの考えに、そうそう!と頷きながら読みました。 特に印象に残った部分をメモ。 「あのとき悲しい話だと思ってたけど、いろいろな経験を経て十年、二十年したら、やっぱりあれはハッピーエンドだったんじゃないかなと思う人もいるかもしれないし、その反対もあるかもしれない。あなたの人生が本に反映されるんですね。読み手のあなたが本に影響をあたえる。本をかえていく。 …記憶のなかで何回も何回も読むから、どんどんおもしろくなる。本を読むのって、じつは本の内容を読み換えていくこと。もっと言えば、心のなかで書き換えていくことなんです。これも一種の翻訳かもしれないですね。」 「違和感があるのは興味がある証拠。なにか違和感を残すものは、あなたにとって意外と大事なものかもしれません。小説で登場人物に感情移入する必要は必ずしもないのです。」 自分の価値観の壁を乗り越えるため、新たな視点を得るために、いろいろな本を読み、他言語を学ぶこと、続けたいと思いました。
Posted by
他言語を身につけるというのは、新しい視点をもつことでもあります。p176 同質性、親和性だけだと、枠が広がっていかないでしょう。ある程度、異質性や他者性を感じる本を手に取ってみるのは、いいかもしれません。なにかちょっと神経を逆なでするような本、というのは、きっと興味のある本なん...
他言語を身につけるというのは、新しい視点をもつことでもあります。p176 同質性、親和性だけだと、枠が広がっていかないでしょう。ある程度、異質性や他者性を感じる本を手に取ってみるのは、いいかもしれません。なにかちょっと神経を逆なでするような本、というのは、きっと興味のある本なんですよ。p186 必要なのは、「受動的→能動的」といった発想の転換。能動的に読む、書く、聴く、話すことではないでしょうか。p203 語学学習の核心にあるのは、やはり「読む」行為だと思います。よく読めるということは、よく聴くことを助け、よく読めてよく聴けることは、よく書く力を培う。その総合力として「話す」があるのではないでしょうか。p209
Posted by
- 1
- 2