調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝 の商品レビュー
音楽にも疎いし、世代的なこともあって、近田春夫に関するリアルタイムの知識といえば「考えるヒット」くらいしかない。それ以外の知識はすべて現在から過去を掘り起こしてのものである。 近田春夫は余裕があるように見える。そう振る舞っている部分もあるかもしれないが、とりあえずそう見える。そ...
音楽にも疎いし、世代的なこともあって、近田春夫に関するリアルタイムの知識といえば「考えるヒット」くらいしかない。それ以外の知識はすべて現在から過去を掘り起こしてのものである。 近田春夫は余裕があるように見える。そう振る舞っている部分もあるかもしれないが、とりあえずそう見える。そのルーツはなにかといえば、単純にボンボンだったからなのかもしれない。音楽的な素養に関しても生まれは大きいのだろうと思う。 本書はそのような出生から現在までの近田春夫語り下ろしによる自伝である。編者によるあとがきで「デビューまでが長い」と書かれてはいる。たしかにそのとおりなのだが、それまでにも音楽に携わる仕事は大量にこなしているわけで、あまりその線引きは意味がないだろう。 出てくる固有名詞は音楽関係ばかりで、おそらく近田春夫と同世代のひとが読んでも、すべて知っているというひとはいないと思う。でも、だいたいなんとなくわかる。近田本人も言っているが、近田の興味範囲はコロコロと移り変わる。なので「まぁなんかそのジャンルの有名なひとなんだろう」くらいで読める。
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ミュージシャン、プロデューサー、作詞・作曲家、そして文筆家と、マルチな才能を発揮する音楽界の重鎮、近田春夫の自伝。生誕70年、音楽生活50年を記念しての出版。 1970年代にロックバンド、ハルヲフォンで歌謡曲のカバーをしたり、日本でおそらく最初期にヒップホップやヴィブラストーン...
ミュージシャン、プロデューサー、作詞・作曲家、そして文筆家と、マルチな才能を発揮する音楽界の重鎮、近田春夫の自伝。生誕70年、音楽生活50年を記念しての出版。 1970年代にロックバンド、ハルヲフォンで歌謡曲のカバーをしたり、日本でおそらく最初期にヒップホップやヴィブラストーンとしてラップを始めたり、日本の音楽シーンにとっては、早すぎた男がどうやって出来上がったのかが、当時の周辺人脈の思い出と共に語られていて、その方面が好きな人には必読の一冊となっている。 そして本書巻末には、桐島かれん、横山剣、清水ミチコ、リリー・フランキー、根本敬、秋元康、石野卓球他豪華メンバーによる、著者の似顔絵が掲載されているのも、著者がいかに多くのジャンルの人から愛されていることがわかって素晴らしい。 著者の音楽をまだ聴いたことのない人は、ぜひ、ハルヲフォン、ヴィブラストーン、ソロアルバム「天然の美」等をぜひ聴いてみて下さい。
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提供曲一覧は無理にしても、巻末にディスコグラフィがあっても良かった気がする。まぁ、本文で語られているけれども。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
近田春夫という人が僕の視界に入ってきた時期というのは、ほんの一時だったのだなあと思える、一代記。 面白すぎてあっという間に読んでしまった。 伝記的な本というのは、まだ何者でもない幼少期、少年期というのは読み飛ばしてしまうものだが、この人の場合は周りに出てくる人物も興味深く、後の有名人もいたりして、退屈しなかった。 自分の興味のあることだけを追い続け、名声とか富をまったく気にしていないように見えるのがすごい。一時テレビによく出ていたのが僕の目に触れた頃だったのたが、その不健全さに気づき撤退し、消耗されずに過ごせたのだろう。 「日本の歌というのは、結局どこまでいってもまず言葉ありきなのよ。和歌や短歌のことを歌と呼ぶことからも分かるじゃない。そこに節がついて、肉声の魅力が加わる。あくまでも言葉と声を味わうためのものなんだよ」 しかし音楽とは、もっと数学的で、抽象的な魅力を持った、理屈っぽいものという。理屈というのは、数式とか法則とかのことだろう。 「100%、理屈で解析することができるんだ。」 「週刊文春」にコラムを依頼された時の気持ちが書かれていて、それも書き記しておきたい。 こんなこと引き受けて大丈夫かと自分に問いつつもこう考える。 「そこで断ったら、その後の自分は、絶対に今の自分より小さくなってしまう。ただてさえ、放っておけば人間というのは小さくなる。だからこそ、打って出るという行為には重要性がある」 今の自分にはとても参考になった。 ヒップホップ、ラップを取り入れたのも86年頃と早い。 僕の弟が「日本で始めてラップをやったのは山田邦子」と言ってたが、近田春夫も「俺以前には色物だけど、山田邦子と吉幾三(『俺ら東京さ行くだ』)」、「二の線の作品では84年佐野元春『VISITORS』が最初」と書いていて、やっぱそうなんだ、と思った。 癌に罹ってからの心境が本のタイトルになっているわけだが、この心持ちも大変良い。
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たぶん一番最初に近田春夫の名前を知ったのは深夜のテレビ番組でワイルドワンズの植田芳暁とコンビで漫才みたいなことをやっているのを見た時…それがテレ朝の「23時ショー」で、コンビ名が「ダーティ・ペア」って名前だったことを今回、知りました。「オールナイトニッポン」の第二部で山本リンダの...
たぶん一番最初に近田春夫の名前を知ったのは深夜のテレビ番組でワイルドワンズの植田芳暁とコンビで漫才みたいなことをやっているのを見た時…それがテレ朝の「23時ショー」で、コンビ名が「ダーティ・ペア」って名前だったことを今回、知りました。「オールナイトニッポン」の第二部で山本リンダの「きりきり舞い」の近田春夫&ハルヲフォンのカバーを聞いて、漫才の人じゃないんだ、と思ったり、TBS「ムー一族」に出てるの見たり、常に「何者?」って感じていた人です。まあ、「ジューシー・フルーツ」の「ジェニーはご機嫌ななめ」の作曲者として音楽の人と認識した後でも、アディダス着てラップしているのをインクスティックで見たり、週刊文春の「考えるヒット」が長期連載になったり、プレイヤーなのか?裏方なのか?評論家なのか?なんだか掴みきれなくて、やっぱり「何者?」な感じの人でした。でも、この本を読んで、カテゴライズできない、東京のロックの進化の体現みたいな人であることがわかりました。内田裕也一家として業界に入ってきたこともびっくりだけど。曰く『非アカデミックなものがアカデミックなものに勝つというその瞬間こそ、「ロックンロール」の醍醐味である。俺は昔からそう定義してきた。パンクやヒップホップに形を変えながら、その精神は受け継がれていったと思うんだ。』だからジャンルじゃなくハウスやテクノや歌謡曲もロックとして向き合っていく、その近田春夫音楽史は東京のシーンの歴史そのものでした。それも舞台ど真ん中じゃなくて“袖で見る”醍醐味、これ本書の読みどころとして本人があとがきで語っています。この冷静な分析力って、非アカデミックを愛するアカデミズムを感じさせ「考えるヒット」のトンマナになっているのだと思います。そのスタンスは著者の生まれと育ちによるものであり、それが東京でしか生まれないものに感じました。ということで、70年代、80年代の東京の匂いを嗅げる本でもありました。
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登場する話題について、本当にあちこち懐かしさのスイッチを押されるような。 けっして主流派や権威になろうとはしないから、流れ続けているから、面白い読み物になっている。 こういう流動性って、かつてよりも今の方が薄れているってことを、真面目に考えるべき。アンフェアであっては困る...
登場する話題について、本当にあちこち懐かしさのスイッチを押されるような。 けっして主流派や権威になろうとはしないから、流れ続けているから、面白い読み物になっている。 こういう流動性って、かつてよりも今の方が薄れているってことを、真面目に考えるべき。アンフェアであっては困るけど、かつての方がもっと可能性が感じられた。
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とても面白かった!!細野さんの「細野晴臣とその時代」と同時に読みました。同時読みオススメ。あとがきに書かれてるが、「はっぴいえんどから始まる日本語ロックが・・・」的な日本ロック正史とは違う(そして現実!)視点・実話・流れが盛りだくさんで、ホントに楽しかったし、勉強なった。(近田さ...
とても面白かった!!細野さんの「細野晴臣とその時代」と同時に読みました。同時読みオススメ。あとがきに書かれてるが、「はっぴいえんどから始まる日本語ロックが・・・」的な日本ロック正史とは違う(そして現実!)視点・実話・流れが盛りだくさんで、ホントに楽しかったし、勉強なった。(近田さんも言ってる「舞台袖」から覗いたストーリー。 細野さんとの出会い、「はっぴいえんどのですます調もちょっと違うじゃん」的な感じとか、2冊同時に読み進めると、60年代-80年代を複眼的に体験できて幸せす。 紹介されてる楽曲と元ネタをYouTubeで検索しながら読みました。語り調の文体も読みやすいです。 とてもオススメ!
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一気に読み進んでしまった。あとがきにもあるように、舞台袖から近田春夫という人生を、そしておらが国のショービス史を眺めるかのよう。思えば明星の付録歌本で人生曲がったのだよなぁ。ええ、もちろん好い方角にね。
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