灰の劇場 の商品レビュー
んー… すべては曖昧模糊としていている。 自ら人生を終わらせた二人の女性の心のうちも、作中の作者の心のうちも。 日常と平行してそこにある絶望。恩田さんの中にある世界を少しだけ垣間見た気がした。 恩田さんのホラーが大好きな私にとっては、物語としての「灰の劇場」よりも、恩田さんの中に...
んー… すべては曖昧模糊としていている。 自ら人生を終わらせた二人の女性の心のうちも、作中の作者の心のうちも。 日常と平行してそこにある絶望。恩田さんの中にある世界を少しだけ垣間見た気がした。 恩田さんのホラーが大好きな私にとっては、物語としての「灰の劇場」よりも、恩田さんの中にあるものを表現する過程をみたようで、面白いなと思った。 0 、1、 (1)がどう言うことなのかはっきりと理解した上で、初めからもう一度読んでみると また違う感じ方になるかな。
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自殺した二人を丹念に追って、または想像して小説にしたのかと思いきや、最後まで何一つはっきりとしないぼんやりした内容だった。章立ての数字が()含め意味があることだったようだが、それに気付いたのがずいぶん読み進めてからだった。ショック。しかし、こんなに漠然とした話なのに読ませる筆力と...
自殺した二人を丹念に追って、または想像して小説にしたのかと思いきや、最後まで何一つはっきりとしないぼんやりした内容だった。章立ての数字が()含め意味があることだったようだが、それに気付いたのがずいぶん読み進めてからだった。ショック。しかし、こんなに漠然とした話なのに読ませる筆力とか、普段考えていることから出てくる表現とかは秀逸。
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どうしようかな?急いで読まなくてもいいかな?なんて思った自分、間違いだったよ。ちょっと不思議でとても現実的で。ひしひしと心に言葉と想いが降り積もって、読了。劇的じゃなく日常。【降り積もる。時は降り積もる。誰もが、骨になり、灰になり、時間の底に沈黙する。】【二人で暮らし、二人で過ごし、二人で人生から退場していった。】
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霧の中の出来事のようで、最後までその霧が晴れることはなかった。 そうそう!と共感する部分と、んん?という違和感と。作中の作家が、この2人の死に対して共感していないのかいないのか立場ははっきりせず、死の理由も曖昧模糊で、理由など瑣末で曖昧模糊としていることもあるということなのだろうとは思うものの、読者は霧の中に置き去りにされたまま。 入れる必然がよくわからないシーン(例えば母親の死など)もあるかと思うと、羽根が降る砂が降るなど、ビジュアルが美しいと感じられるシーンもあり、嫌いじゃないけどなんだろうこれ。
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作家の独白パートと小説のパートが交互に語られる形式で、読み進むうちに目まいがしてくる。日常の果ての絶望、何気ない消失の欲望。この気持ちは知っている。取りこまれそうになる。
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形式は奇抜かもしれないが、導入部がついていけず、消化不良のまま本編突入。なるほど6年越しの連載まとめか…フーンとしか…「具体化、ビジュアル化の異和感」顔だけでなく声も。「時は降り積もる。こうしてすべてが忘れられる。時間の底に沈黙する」
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東京エピタフと中庭の出来事を足して、私小説テイストを加えた感じ。こういうとりとめのない感じの系統の恩田陸のも好きだし、2人の女の真相に迫ってくプロセスも好みだったんだけど、ラストのカタルシス的な盛り上がりがなかったのが個人的には残念。ひっそり終わった感があってちょっと物足りない気...
東京エピタフと中庭の出来事を足して、私小説テイストを加えた感じ。こういうとりとめのない感じの系統の恩田陸のも好きだし、2人の女の真相に迫ってくプロセスも好みだったんだけど、ラストのカタルシス的な盛り上がりがなかったのが個人的には残念。ひっそり終わった感があってちょっと物足りない気分。
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実際の事件をモデルに小説化、舞台化におけるメタ小説。 著者の新たなる試みだと思います。 三つのパートがあり、実際の事件をモデルに小説化する0パート、小説である1パート、小説を舞台化する(1)パートがランダムに物語られていきます。 0パートの小説家のモデルは著者自身と思われ、(1)パートと同じと思われるが、(1)パートは虚実が入り混じる話となっています。 モデルとなった事件自体は中年女性の心中という社会的に大きなものではないが、「絶望」という切り口から小説に昇華されているが、心中に向かうラストシーンは絶望感が無いのが救いかもしれません。 タイトルの「灰の劇場」とは小説の中で象徴的、幻想的に使われている舞い散る羽毛が白ではなく灰色だったというところからきていると思います。 不思議な読後感の小説でした。
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0と1と(1)という3つの章が細切れに現れる構成。固有名詞は使われず、彼女、私、あたし、T、Mなどと表される登場人物。匿名性が描き出す普遍性。2人の、決して若くない女性2人の心中に見る緩やかな絶望。その死の記事に囚われてきた小説家の思考。まるで場面が次々に切り替わるお芝居を見せら...
0と1と(1)という3つの章が細切れに現れる構成。固有名詞は使われず、彼女、私、あたし、T、Mなどと表される登場人物。匿名性が描き出す普遍性。2人の、決して若くない女性2人の心中に見る緩やかな絶望。その死の記事に囚われてきた小説家の思考。まるで場面が次々に切り替わるお芝居を見せられているかのような印象。 これを読むと自殺って自分で自分の終わりを決めること。それをとやかく人に言われる筋合いはないな〜と思う。 「遺書や手記を残すのは、まだ世界を信じているから」という文言には深く納得。そういう意味では本当の絶望ではないのかな。 あくまで作家の創造ではあるけれど、2人の女性の普通の生活の延長線上にあった死に悲壮感は全くなく 、自分で区切りをつけられたことにある意味羨望を覚えるのは私だけだろうか‥‥
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