擬傷の鳥はつかまらない の商品レビュー
なんだか色々設定がごちゃごちゃとしていて楽しめない話だった。 読み終えたあとで「これ、結局どういう話なの?」と振り返ってもよく分からなかった。 擬傷という特定の生物の生態も結局何のために登場させたのかよくわからず、首を傾げるばかりだった。自分とは合わなかった。
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新潮ミステリ大賞受賞作。面白かった。未来に夢も希望も持つことも許されない過酷な人生。ただただ堕ちていくだけの人生。この世界に居場所を失った人間を異界へ逃がすことのできるサチ。ハードボイルド調から後半はファンタジー異世界へ。過ちをすべて忘れて一歩を踏み出せたらそれはとても楽だろうし...
新潮ミステリ大賞受賞作。面白かった。未来に夢も希望も持つことも許されない過酷な人生。ただただ堕ちていくだけの人生。この世界に居場所を失った人間を異界へ逃がすことのできるサチ。ハードボイルド調から後半はファンタジー異世界へ。過ちをすべて忘れて一歩を踏み出せたらそれはとても楽だろうし、やはり人間は弱い生き物。生きていればなんとなんとかなるって言うのは、ただの綺麗ごとなのかも。
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12月-06。3.0点。 歌舞伎町でニセの身元を提供する女性。裏では「逃がせ」稼業。風俗に勤める未成年の二人組が依頼に現れ。。 ファンタジー性もあるストーリー。登場人物が意外な展開をする際に、主人公が「実はそうだと思っていた」と後付けに描写されるのが気になった。まあまあだったか...
12月-06。3.0点。 歌舞伎町でニセの身元を提供する女性。裏では「逃がせ」稼業。風俗に勤める未成年の二人組が依頼に現れ。。 ファンタジー性もあるストーリー。登場人物が意外な展開をする際に、主人公が「実はそうだと思っていた」と後付けに描写されるのが気になった。まあまあだったかな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
つらいよな~現実。 簡潔に言えば本作は、主人公及び関わった人たちがあり得たかもしれない幸福な現実、いわば過去への後悔を振り切って、未来への希望を勝ち取るために戦う、抗う覚悟を決める話…なんだと思う。 まず、今作における”此処ではないどこか”のシステム。パッと見魔法のような素晴らしい奇跡に感じられるけど、実際はとてつもなく残酷なシステムだよなあと感じた。 今いる現実に絶望して全てを捨て去る覚悟を持っていないといけなくて、もし日数を待てないのなら誰かを殺さなくてはいけなくて。 そうして辿り着けた理想の世界は、過去の自分が行動していたら”在りえた”世界。目の当たりにして、こんな幸せな現実が、あのとき自分がそう動いてさえいたら在りえたんだってわからされることの残酷さったらないと思った。 だって「もうこんな世界捨ててしまいたい」と思う程人生においてずっと真っ暗闇の絶望を歩んできていた人は、きっと”幸せな現実になる可能性なんて一ミリも無かった”と思えていた方が楽だった。”そんな選択自分には与えられてこなかった”と、被害者でいる方が楽だったんだから。 最初はそんな摩訶不思議な設定から始まる一方で、前半は推理小説のように進んでいったように感じた。ひたすら真相を紐解いていく手懸りを、ちょっとずつ知っていく。それに徹していたせいか感情移入するには大変だったし、真相と共に人物たちの感情が爆発する後半は、むしろ食い入るように読んじゃってたな。 これまで積み重ねてきた人生を無かったことにしないために、意味を与えるためにこの先も地獄のような現実で戦い続ける。久保寺の想い。 沢山の人を不幸にした大量殺人をなかったことにしたかったんじゃない。大量殺人の加害者になってしまう弟、を救いたかった。難しいけど、確かに明確な違いがあるよなあ。 それに救えたというのが事実になった現実に居るとして、けれど自分自身が救えなかったという内在的な事実がなくなるわけでも、なくしたいわけでもないっていうのが、難しいけど”久保寺”という人物にとってめちゃくちゃリアルだと思った。 主人公の救いの一部となるよう”此処ではないどこか”を選ばず、地獄のような現実で生きることを選んだのが、いつか誰かを救う警察官になることを志して、夢半ばにそれを諦めたその彼の決意なのがいいよねぇ…。 あとこれって、ずっと主人公が言っていた”擬傷”ではあるんだよな。自分が傷つく可能性の高い方を選んでまで、他者を救う。でも久保寺は、それを自分の為に選んだ。そうしたい自分の為に、その選択をした。 だれかの為に生きていこうとして背負いきれずに投げ出してしまった、結局は自らの為に選択を下した主人公が久保寺のその姿を見て、自分以外の誰かを助けたい自分の為に生きる……地獄のような現実でも擬傷があるのだと信じたい自分の想いを叶えるために、戦い続けるって決意をする主人公が、またいいんだよなぁ。 佐伯は真相が明らかになって、普通にいい人になった……というよりは、めちゃくちゃ大人だったのが明らかになってたね。 自分のしたことは自分で背負っていくしかない。そのうえで生きるために誰かを理由にする。 え?久保寺じゃん……?引き取った老犬ジジを死なない理由にする久保寺と同じ境地じゃん……??貴方何歳…????年相応以上に成熟せざるおえなかった人生を思うと辛いね。 そう思うと佐伯も”門”をひらけた気がするなぁ……生きる理由にしていたアンナを失っていたら、だけど。結局、アンナにその先の人生ごと奪われちゃったんだけど。 アンナは佐伯の件に比例してどんどんあくどい女になってったね~~~?! 全部うそ!捏造!将来を語る望実のことだって憎んでた!でも理解できなくないのよね……。 「未来とは、その言葉を知っている賢い人間たちが内輪で作っている代物でしかない」 って言葉は痛いほど真理なんだよな……。初めに与えられなかった人間には”未来”を考えることすら思いつかない。 他人を、ではなく自分を信頼できないアンナは全て縋って疑って切り捨てかなければ、不安で不安でたまらない。その結果選んだ選択は幸福にはつながらないものだったけど、それを『お前のせいだ、お前が間違えたせいだ』と責めてもいい選択だったとは言えないよなあ。 総じてなんだか、綺麗な文章だった。終始さっぱりとした風味を感じる文体で、でも内容もきちんと作られていて、こういうんのもいいな~とにっこりで本を閉じたお話だったなと、個人的に。
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ループ・オブ・ザ・コードが面白かったので、続けて読んでみたが、こちらも面白かった。心に傷を負った主人公のキャラ設定や、過去や運命と対峙しながら未来に思いを馳せる展開、出生にまつわる考察、など共通点も多いと感じた。 細かい点で気になるところやぎこちなさを感じる箇所もあったが、若い作...
ループ・オブ・ザ・コードが面白かったので、続けて読んでみたが、こちらも面白かった。心に傷を負った主人公のキャラ設定や、過去や運命と対峙しながら未来に思いを馳せる展開、出生にまつわる考察、など共通点も多いと感じた。 細かい点で気になるところやぎこちなさを感じる箇所もあったが、若い作家さんだし、このように純粋なテーマ設定に真正面から取っ組めるのも、その若さによるものだと思うので、今後の作品にも期待したいです。 二人の少女が楽しそうなディズニーでの写真というアイテムに泪しました。
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どこにも行けないのかも知れない。誰ともわかりあえないのかも知れない。でも、自分から逃げなければ、自分のことは許せるのかも知れない。 私たちの人生は、後になって見返すことのできないものばかりを見逃している。 うーん、全体的に悪くはないんやけど、肝心の主人公パートがイマイチやなあ...
どこにも行けないのかも知れない。誰ともわかりあえないのかも知れない。でも、自分から逃げなければ、自分のことは許せるのかも知れない。 私たちの人生は、後になって見返すことのできないものばかりを見逃している。 うーん、全体的に悪くはないんやけど、肝心の主人公パートがイマイチやなあ。 あまりにも被害者面しとるけど、お前が一番最悪なんちゃうんか?っていう。ミソラも大概やし、その点だけで主人公がどうしようと何を考えようと、好感がもてへんし、なんか最後に清々しい風になっても、いやいやいやいやってなるなー。微妙や
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歌舞伎町でアリバイ会社を営むサチが主人公。彼女のもう一つの稼業は、人生に絶望した人間たちを「門」の向こう側に逃がす門番。 実際に起きた、世間を震撼させた2つの事件(どっちも闇が深かった…)を彷彿させる。上手い。 ハードボイルドと「特殊設定」の融合。嘘の世界でも救いはある。
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面白い。 異界の門を開く事が出来る逃がし屋。その異界に行くには条件がある。そしてそこは「最も幸福になったであろう選択がなされた世界」。 世界観はハードボイルド。歌舞伎町の揉め事に巻き込まれながら身分の偽装を行う傍らで世界に絶望した人を逃す。物語は2人の少女が訪れるところから始まる...
面白い。 異界の門を開く事が出来る逃がし屋。その異界に行くには条件がある。そしてそこは「最も幸福になったであろう選択がなされた世界」。 世界観はハードボイルド。歌舞伎町の揉め事に巻き込まれながら身分の偽装を行う傍らで世界に絶望した人を逃す。物語は2人の少女が訪れるところから始まる。1人が死に1人は逃亡。この辺りはミステリっぽい。だが謎は中盤で早々に解決する。そこからはファンタジーのような世界観へ。 主人公の過去と向き合う形で異世界が壊れていく。 色々な要素が入り混じっていて面白かった。
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どこにも行き場がないほど追い詰められた人たちが、一縷の望みを託してすがる「嘘の仕立て屋」。その闇の仕事の主要業務は2つ。 1つ目は事情を抱える顧客に偽物の身分を用意する「アリバイ屋」の仕事。2つ目は現世に居場所を失くした顧客を異世界に送る「逃がし屋」の仕事だ。 今日も「...
どこにも行き場がないほど追い詰められた人たちが、一縷の望みを託してすがる「嘘の仕立て屋」。その闇の仕事の主要業務は2つ。 1つ目は事情を抱える顧客に偽物の身分を用意する「アリバイ屋」の仕事。2つ目は現世に居場所を失くした顧客を異世界に送る「逃がし屋」の仕事だ。 今日も「嘘の仕立て屋」を営む沢渡幸のところに窮鳥たちが駆け込んでくる。 本編4章とプロローグおよび終章からなる。 また4つの章題がすべて「ギショウ」という音で統一されている。 ◇ 数日前に沢渡幸を訪ねてきた2人の少女たち。生意気な言動ながら、追い詰められているのは明らかだった。そして間もなく少女の1人がビルの屋上から転落死する事態に接した幸は急遽、残る1人のため「逃がし屋」の仕事を受けることにした。 だが、すぐに追っ手がかかり、幸までが物騒な連中に付け狙われることになったのだが……。 * * * * * タイトルに惹かれて手に取った作品でした。 前半のサスペンス部分はよかった。主人公のサチが魅力的だし、ひょんなことでサチの相棒を務めることになった久保寺もいい雰囲気でした。 また、擬傷行動をとる鳥とは対局にある毒親や具犯少年たちを扱っているのもおもしろい。ぐんぐん読ませる構成になっています。 けれど「門」や「向こうの世界」なる異世界ファンタジー編に突入してから、作品としての座りが悪くなったように感じました。 アンナがその世界に同調できなかったのはまだいいでしょう。でも久保寺のケースは違和感が先立ちました。 第一久保寺の人格が違っています。元の世界の久保寺と同じ人間とは思えないほどです。サチの優柔不断な態度も同様で、同一人物とは思えません。 だから終章が浮わついた感じで落ち着きを見せないままエンドになった気がしました。 読み終えて残念な気持ちが残りましたが、緻密に構築していくタイプの作家は好きなので、次作に期待したいと思います。
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